回復茸で壊れた茸中毒はもうだめだと思う。
37日目 夕方 オムイの街
現金は獲得した。女子達から収奪した。有り金を強奪した。もう全員無一文だろう。
どうせ持ってても装備できないんだよ、高価過ぎて売りにも出せない、良い物は全部隠し持っている、残り物の処分市だ、格安の在庫処分価格でも元値は只だ、ぼろ儲けだ。
大儲けだ。
お大尽様だ。
お大尽様復活だ。
庶民どもよひれ伏すが良い。
バーゲンセール方式で経済観念もお財布の紐も理性も破壊し、徹底的に浪費させ、有り金を巻き上げた。
どうせ武器も魔石も換金しきれない、ならば現金は同級生から収奪すればいい。
しかし、委員長があんなにお金持ってたとは驚いた。倹約して貯金してたんだろう、巻き上げたけど。あんな山の様な武器や装備をどうするんだろう?
取り敢えずは武器装備防具のバーゲンセールでお説教は回避した、切り抜けた、ギリギリの隙間を、刹那の間隙を。虚実のスキル効果だろうか?
だが、まだ安全圏にまで達したとは言い切れない。まだ忘却したとは言い切れない。俺は悪くないのに怒られないとは言い切れない。何故ならば何故か逃げ切れた事が無いからだ。
ならば求めよ、常に真実を照らすものを、何時も正義を守護するものを、必ずに潔白を証明するものを、よし、ドライフルーツを買いに行こう。
甲冑委員長もお供についてきた。やっぱり、女の子はショッピングが好きなのだろう、バーゲンセールには引いていたけど。迷宮皇と云えどもあの女子達の悪鬼羅刹の魑魅魍魎の阿鼻叫喚の争いは恐ろしかったのだろう。異世界人だからバーゲンセールが初体験だったかもしれない。
あの武器や装備が大好物のオタ達でも女子達の壁に突破すら叶わず、商品すら見る事も無く、その手に触れる事も無いまま、足蹴にされ、踏み付けられ、弾き飛ばされ、襤褸雑巾の様に床で朽ち果てていた。あれならスフィンクスを倒せたんじゃないだろうか?
何故か雑貨屋さんが大きくなってる、店が広い、商品も盛りだくさん。品揃えに期待できるかも。
「ま~!久しぶりだねー?迷宮で行方不明って聞いてたから心配してたんだよ?大丈夫、、、、、そうだね?」
お、今日は普通だ、茸中毒は脱したのだろうか?ちゃんと雑貨屋の店員さんしている。
「おひさー?今日が何日か分からないけど?誰も教えてくれないし?って、買い出しに来たんだけど新商品入った?現金でも茸払いでも良いよー?あと、ドライフルーツ有るだけ全部!」
甲冑委員長と店内を見て回る。日常品も必要だろうし?着替えの服も、生活用品も無いんだから?、、スケルトンの日常品って何がいるんだろう?まあ、あれこれと楽しそうに見てるし、お小遣いもたっぷり渡してある、無駄遣いでも楽しめれば良いんだ、きっと久しぶりのお買い物だ。
「フフッ、フッフフッフッフフッフッフフ、ッフッフフ、ッフフッ、フフッ。」
雑貨屋のお姉さんは壊れたみたいだ。故障中だ。茸中毒は脱しても後遺症に侵されている様だ。多分もう修理不能だろう、回復茸で壊れたのだから。
(ジャーーーッ)
「!!!!!。」
時が止まった。
「「グフフッフフフッフフッフフフッフッフフフフォッフォフォッ。」」
無言でお互いの手を固く握り合った。
取引は成立した。
有り金は全て巻き上げた。
物資の大量補給も済み、あちこちのお店を覗いては良さげな物を買い占める。お大臣様だ。
油も買えたし、香辛料も増えた、網もあったし、ドライフルーツも砂糖も買い占めた。お大臣様だ。
甲冑委員長も両手に雑貨を抱えて買い物を楽しんでいた。迷宮の最下層ではショッピングは出来なかった様だ、久しぶりで楽しくて仕方ないのだろう、永遠とも思える時を捕らわれ無為に過ごしたのだろう。永遠とも思える時を17才で過ごしきったのだろう。
最後に棍棒専門店にも武器を売りさばきにいく、こっちも店が大きくなってる?品揃えには期待できない、棍棒だらけだ。
棍棒と一緒に、金属武器も見せてみる。凄い勢いでお店の有り金を全部持ってきた。余り物の、売れ残りの、不用品なんだけど?
「迷宮武器!それも下層の品!レア素材に極上のスキル付き!?特殊効果だと!!な、な、なに?これ何なの!?」
おっちゃんは、棍棒マニアかと思ったら、金属武器でも大騒ぎするみたいだ?売れそうな最安品を持ってきたのに、買取が難航している?取り敢えず店の有り金を全て貰い、おっさんが武器を見ては唸っている、いつものパターンだ。毎度の事だ。
残念ながら、お買い物大好きな甲冑委員長も棍棒には興味ない様だ。まあ、この人よりすごい装備なんて何処にも無いだろう、最上級品を貢ぎ捲くったのだから。史上最強最高額のアイテムチートだ、本人はもっとチートなんだけど。使役者は黒いマントに木の棒のままなんだけど?見劣り感が物凄いんだよ?まじで。
冒険者ギルドに寄り魔石の分割払いの分を受け取る。ついでに、完全に貰い手の無い最低級の武器たちは冒険者ギルドに寄贈した、もう、冒険者ギルドも魔石の買取の追加で現金が無いので只で渡した。救助をしてくれていたみたいだし、冒険者も集めてくれたんだろう。売れ残りの邪魔な武器でも分配すればちょとは役立つだろう。
さて、宿に戻ろう。
37日目 夜 宿屋 白い変人 食堂
すでに布陣は完了していた。
戦場の気配がひしひしと伝わってくる。
一片の漏れも無い、完璧なまでの包囲陣、囲まれれば終わりだ。
無策で踏み込めば、左右の遊撃部隊に退路を断たれ、囲まれ、逃げ場を失う。
唯々、攻撃の為の布陣。待ち構え、捕え、包囲する為の布陣だ。
間違い無いだろう。
あれは、お説教の為の配置だ。
だが、無策では無い。
対策はした。其れ処か決定的な秘策を得た。
最早、陣構え等無意味。
「おにぎりだよ~っ、たーんとお食べ?みたいな?」
「ご飯!?」
「お米!?」」
「「「「おにぎりだー!!」」」
おにぎりの誘惑の前に敵は無い。絶対だ!
俺もおにぎりを握りながら食べ捲くったが滅茶美味しかった。ちょっとぽそぽそしてるがお米さんなのだ。
お説教の包囲陣は一瞬で崩壊する、完璧な陣が決壊する、一度崩れれば最早立て直しは効かない。
みんな、涙目でおにぎりを頬張っている。
お米さんの勝利だ、遂に手に入れたのだ、雑貨屋のお姉さんの勝利だ。
だが此処で、完膚無き迄に追撃し、敵戦力を壊滅する。
「焼きおにぎりも有るよ~っ、奪い合うが良い?的な?」
「「「焼きおにぎり!!」」」
おそらくは長米種、日本米よりも粘り気や甘みが無くぽそぽそ感がある。だがお米なのだ!明日は炒飯だ!!
辺り一面無言のもぐもぐだ、喋る余裕もあるまい。お説教を無力化したのだ。
もう、みんな満腹で動けまい、説教陣は崩れ去った。もう、みんな笑顔で倒れている。
もう、怒る気力もない、只の満腹娘の出来上がりだ。とても幸せそうに倒れてる。




