跳ねたり踏んだりと貴族のしきたりとは難しい物だ。
37日目 昼 オムイの街 門前
遥君は領主様に呼ばれ、説明に行った。
遥君に説明を聞くとか勇気のある人達だ。
大体結果は解っているのに、それ以外の結末を見た事が無いのに。挑戦者だ。
そして、やっぱり大混乱してる、頭を掻き毟って困惑している、人選を間違えたんだよ。その人にだけは聞いちゃいけないんだよ、その人が全ての混乱の真犯人だから。
領主様のお嬢様がぴょんぴょん跳ねたかと思ったら、地団駄を踏んでいる?
遥君まで一緒に地団駄を踏みだした。あれ?なんだか、遥君の地団駄が上達している?
やっと解放されたみたいで、遥君が疲れた顔をしてこっちに戻って来る。
領主様とお嬢さんはもっと疲れた顔になっている。疲弊しっきっている。気持ちがとても良く解る。
どう考えても疲れた顔をして良いのは遥君じゃない、だっていつでも犯人だ、事件が起こる前から犯人だ。
そうして、やっと門をくぐる。
この街に帰って来た。遥君と一緒に。みんな一緒に。
みんな揃って門をくぐる。
約一名、迷宮皇さんが増えているのは内緒だ。
きっと、みんな知らない方が幸せだ。
ある意味、迷宮皇さんが守ってくれる街なんて世界一安全だ。
魔物の問題だけではなく、最も危険なあの非常識窮まり無い残虐非道な使役者の暴走をを止めてくれるのだから。
街中はいつもと変わらずに賑わっている。
迷宮皇さんはきょろきょろと街を見回してる、お上りさんだ。
迷宮の地下100階層から地上に上がって来た、お上りさんだ。
きっと珍しいのだろうか?
それとも懐かしいのだろうか?
街に来れて喜んでいる様だから、きっと良い事なんだ。
だから、遥君は迷宮の地下100階から地上まで迷宮皇さんを連れて来たんだ。
きっと良い事なんだよ、皆が幸せそうだから。
小田君達は武器屋さんに行くと分かれて行った。
相変わらずに全然空気を読まない。
武器屋さんで耐火か火炎無効化のヘルメットを探すそうだ。
自身の危険はちゃんと読めたみたいだ。
無効化されて終わりだと思うけど、黙っててあげよう。
いつもの様に。
いつもの日常の様に。
当たり前の日常に帰って来れたから。
みんなが笑ってる遥君がいる日常だ。
37日目 昼 宿屋 白い変人 食堂
宿の戻ると看板娘ちゃんも大喜びで遥君に頭突きしていた?
喜びの表現なのだろうか?牛みたいだ。
耐火装備を買えなかった四人も戻って来て、それを聞いてみんなで大笑いして、慰めてた。
食堂でみんな揃って、お食事した。
大はしゃぎで、大騒ぎで、大賑わいだ。
まだ、疲労も消耗も残ってて、装備もぼろぼろで見た目はあれだけどみんな笑顔だった。
順番にお風呂に入り、さっぱりして貸し切りの食堂に戻ると、其処には広間一面に広がり尽くす見た事も無い様な立派な武器と防具の山。
「みんな揃った?じゃー、配給?みたいな?感じで、お一人様、武器2個と防具2式、あと、好きなの2個で6個。早い物順で、奪い合ってください。みたいな?」
そこからは、修羅の犇めきあう戦場だった。
其処は欲望と欲求と欲得の乱れ飛ぶ闘技場だった。
ぶっちゃけ、バーゲン会場のおばちゃんの様な有様だ。
女子たちの合戦場、男子たちは踏み付けられ、弾きだされていた。
全ての武器が限定品だ。
あらゆる武器がお買い得品だ。
今この場だけのタイムセールだ。
狂乱のアウトレットセールだ。
魑魅魍魎の掴み取りの戦争だ。
其処には修羅だけが集うと言う、伝説のバーゲンセールの再来だった。
「それ以外にも欲しいのが在ったら、値段は応相談だよ~?安いよ?安いよ?的な?」
とどめの一言だ、殺し文句だ、女子への禁句だ、かろうじて僅かに残っていたみんなの理性が音を立てて一斉に切れた。
もー、みんな我を忘れて、奪い合い、取り合い、引っ張り合い、お知合いなんて関係ない騒乱絵巻。
きゃーきゃーと騒ぎながら、身体を張って戦利品を守り、修羅の群れを突破し、遥君と言う名のレジを目指す。
異世界に来て磨き抜かれた、戦闘技術と言う名の女子力で戦い、競い、奪い合った。
なんか、凄く楽しかった。
男子は脅えてた。
みんなに、ちゃんと不平等に武具が配布され、落ち着きを取り戻すと、今度は戦利品の自慢大会だ、もう、武器に頬擦りしてる娘まで居る。
みんな大喜びで、大満足で、大漁で、大収穫だった。
だってすべてがスキル付きの凄い武器ばかり。
伝説の素材、超希少なスキル、最高級の効果、みんなうっとりと装備を眺め、頬を緩める。
これが遥君式のお礼らしい。
これが遥君式の謝礼みたいだ。
これが遥君らしい損失補てんだ。
これが遥君からの感謝の気持ちだ。
みんな迷宮で戦っていたんだから遥君が気にしなくても、装備が壊れても黒字収支なのに。だから遠慮出来ない様に、気兼ねなんかしない様に、皆が満足する様に、大バーゲンセールだったんだ、皆少なくても10個以上は獲得してる、20個以上抱えている娘もざらだ。
だって全部がお買い得で、超特価で、お値打ち品で、プレミア品だ、お金が有っても手に入らない、売りに出されればとても手が届かない、そんな凄い武具ばかりだ。
これが遥君の戦利品。
こんなとんでもない武器を持った、こんなありえない装備をした、最悪の魔物達の群れを殲滅して強奪して来たのだ。
だからおすそ分けなんだ。
これでみんながまた少し強くなって、これでみんながまたちょっと安全になった。
もうさっそく装備してる娘や、ずっと鑑定しながら眺めてる娘、早く効果を試したくてうずうずしてる娘、もうみんな元気いっぱいだ。
私も買い過ぎて現金がちょっとピンチだ。
遥君から没収して預かってるお金をちょっとだけ借りたのは内緒だ。
こんな素敵で楽しいお礼を貰ったのなんて、みんなきっと初めてだろう。辺り一面笑顔でいっぱいだ。




