宅配便の情報は何も無かったなら俺、全然関係ないんじゃないだろうか。
22日目 昼過ぎ 路上
通行許可書だ、身分証明だ、遥とネーム入りだ、保証人にメリメーリさんのフルネームも書いてある。
これで出入り自由だ、通行無料だ、思わず5回くらい出たり入ったりしたら門番さんに怒られた。
そんな訳で、街に入り辛いので恒例のオタ狩りだ、今日はもう一本の道、川から離れて行く方の道だ、お魚さんとも離れてしまう、夜には戻るけど。
こっちには街があるようだ、メリ?、、、メリ?さんも、お父さんがこっちの街に行ったとか言ってた、お父さんが行ったのだから、オタさんも行ってるかもしれない。
今日はこっちだ。
駆ける。
うーん、速くなってるんだろうか?皮のブーツ?に入れた「加速のブーツ 加速30%アップ スキル 瞬身」の効果も有るだろうから余計にわからない。
結構な距離を進んだような気がするが、街を出たばかりだったりする。
官僚達、悪く言ってごめんよ、標識は必要だよ、あと何キロとか、自分の時速が解らないんだよ。だが、垂幕は許さん。交通安全の標語も要らん、注意一瞬怪我一生?注意してもぶつかるんだよ、何故ならゴブはそこに居るからだよ、怪我所かゴブ達は一生が終わって、次生に行ったよ、そんな評語書く暇あったら、ゴブ達の安全誘導でもしろよ、毎回毎回ぶつかって痛いんだぞ、ほんとにもう!棍棒振りかざして飛び出して来るんだぞ、注意所か警戒も気配察知もしてるよ、もう交通安全所か激突戦争だよ。
そんなこんなで、駆ける。
ゴブ達を撥ね飛ばして、駆ける。
ついでにコボ達も、撥ねる。
もう、目的が解らなくなって来たよ?オタ達を撥ねれば良いんだったっけ?
また、今日も昨日と同じく馬車が襲われている、流行ってるのかな?流行に乗った方が良い?馬車襲っちゃう?
近づいて見ると、馬車の車体にでっかくオムイと書いてある、社名?宅配便?飛脚の仲間なら本の配送を頼まねば。
駆けつける。
相手は武装した兵士、守るのも武装した兵士、異世界の宅配便事情は危険に満ち満ちているらしい。遅配とかしそうだ。
取り合えず邪魔な宅配しない方の兵士を吹き飛ばす、吹き飛ばすって言うか止まれないから突っ込むと、大体はゴブでもコボでも兵士でも吹き飛ぶ、道路交通事情が悪いよ異世界。
「、、、、君は、遥君かい?」
あれっ?異世界の宅配屋さんに知り合いは居ない、しかも、またおっさん。異世界おっさん率高すぎない?普通さー、もっと美少女がキャッキャ取り囲んでくるだろう?異世界って。何で、おっさんに取り囲まれてるの?武装おっさん達に包囲されてるの?何で敵にも味方にもおっさんなの?異世界はおっさんの加齢臭で俺を倒そうとしてる!?
「えーと?そうだけど?誰?って言うか、宅配屋さんじゃないの?」
あれ?じゃあ、誰が俺に本配送してくれるの?誰が密林さんまで行って、本を届けてくれるの?偽飛脚なの?
「名前はでっかく車体に書いてあると思うんだけど?超高速で駆けながら衝突する黒髪黒目の少年と聞いていたが?今日娘に招かれなかったかい?」
「娘?あーメリメリさんのお父さん、名も無き街の領主のオトウさん?」
何か、うざいおっさん達が押し寄せてくるので、足と地面を「温度」で下げ「氷魔法」で凍らせる。
動けなくなったら、手と髪を燃やす、禿げるが良い、加齢臭で俺を殺そうとした罰だ。
っていうか、一応さー、黒歴史とは言え中2病を嗜んだ者としてはさー、やっぱインフェルノ(氷炎地獄)くらい一回は遣らないといけないかなーとか思ってたんだよ。
それが、、、実際は、頭と手を大火傷して、足が凍って動けない、無残な禿げのおっさん達群れ、、、、インフェルノって、もっとこう、絵面的にカッコイイんじゃないの?なにこれ?見苦しくて、むさ苦しいだけの火傷禿げのおっさん達って、氷炎地獄って言うより禿火傷地獄?嫌だよそんな技、違うんだよ、これは間違いなんだよ、こんなのインフェルノとは、、、インフェルノはもっと、、、
「、、、、おーい、聞いてるかーい?話し聞かないとは聞いてたけど、せめて、戦うか、聞くかしておくれー、何でこの状況で独り言?向こうの燃やされた兵士かわいそうだよ、ちゃんと相手してから倒してあげて、あと無名の街って言わないで、名も無きってでっかく車体に書いてあるから、それとお父さんだけどオトウさんじゃないから、まだ、名乗ってもいないから、っていうか、名乗りたいから話を聞いてくれー、ついでにメリメリさんとか言ったら娘まじ泣くから止めてー。」
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禿のおっさん達は全員捕縛されたようだ、可哀想だから茸ポーションを掛けて遣ったが、怪我は治っても、禿げは治らないらしい、怖いなインフェルノ(毛根虐殺)、危険すぎる業だ、封印(無かった事に)しよう。
しかし、どうしてオタ達を探すと大量のゴブとおっさんに遭遇するのだろう?まさか気配察知がオタとゴブとおっさんの見分けが付かない?だとすると森に置いて来た莫迦も見分けられないかもしれない。
「貴方が遥君?親子で助けて頂いて本当にありがとう、私はメリエールの母でムリムールと言います。今日も隣街との条約とかどうでも良い事より、遥君にお礼を言いたかったの、会えて良かったとは言い難い状況ですけど、娘を助けてくれて感謝します。そして私達まで助けて頂いて何と感謝すれば言いか、本当にありがとう。」
おー、おっさん率が下がった、馬車の中から綺麗系のドレスのおばさん、それと、若くないメイドさん、、、確かにおっさん率は下がったが、俺のテンションも下がったままだ、平均年齢高すぎだよ、登場人物の平均年齢が30オーバーだよ、誰得だよ?
「いや、隣街との条約はめっちゃ大事だから、どうでも良くないから。それと遥君、改めてオムイの領主、メロトーサム・シム・オムイだ、家族の恩人に感謝を、ありがとう。」
それから、貴族やら他の街やらこの国の名前やら王様の名前やら出てくるややこしい話があったが聞き流した、もう一度言おう、聞き流した。けっして、名前が全部覚えられなくて話の意味が解らなくなった訳じゃない、聞き流したのだ。
結局、貴族の揉め事で昨日の盗賊も敵貴族の選りすぐりの精鋭に最強の装備をさせ、盗賊の格好に見せかけメリメリさんを攫い脅迫しようとしたらしい。ところが、取って置きの兵士も装備も帰ってこないので、数を集めて今度はメリ父さん?を襲撃したらしい。
結果、オタ達の情報も、宅配便の情報も何も無かったよ、俺、全然関係ないじゃん、そりゃあ、聞き流すよ。
また、馬車に乗って街に帰る。
馬車の中でも延々と感謝の言葉を聞かされた。街の名前も延々と聞かされた。
今日は門番さんに怒られない。
委員長に怒られました。
そー言えば、今日は街から出ないとか言ってた気がする、あれ?お醤油かいに出ただけなのに?何で?




