異世界人は俺の振りは無視するのに俺には振って来るらしい?
68日目 夜 御土産屋 偽迷宮 隣町側
教会派の貴族軍が三々五々と集まって来るが恐ろしい事に3万人を超えるおっさんだ、見渡す限りのおっさんの海原だ。絶対に此処にだけは飛び込みたくはないものだ、これは酷い。生まれてからこんなにも恐ろしく見苦しくむさ苦しい光景は見た事が無い、だっておっさん率100%の街みたいなものだ、嫌な街だ!
「……これは本当に効果があるんだろうな~?」
「試したらいいじゃん、駄目だったら返品でも交換でも返金でもするんだよ? ただ時間切れまでは知らないからね、石から光が消えて行って真っ暗になったら効果切れだから時間切れって言うか魔力切れなんだよ。迷宮の中のストーン・ゴーレムがちょっとでも動いたら返金するけど叩いたりして攻撃したら動き出すんだからそれは知らないよ? でも大人数な団体おっさんだから割引価格で今なら100個買う毎に辺境茸ペナントも1枚付けちゃうんだよ! 結構売れ残ってるんだけど何が行けなかったんだろう? 他はみんな完売だったのに? みたいな?」
やっとお土産屋偽迷宮本店の営業が間に合ったのだ、危ない所だった。いや、結構ギリギリだったんだよ、「空歩」で飛ばなかったら間に合わなかっただろう。
そして何時になったら着地スキルが取れるんだろう? 墜落スキルが先に取れそうだ!
店も何もない廃墟の街、その名も隣り街? つまり近くにお店が全く無いから今なら独占ぼったくり販売でお大尽様確実なのだ、商国からは大儲けしたんだから教国からもしないと差別主義者と烙印を押されて罵られてしまうからちゃんとぼったくら無いと苦情が炎上で猩々少女もお怒りになられる事だろう。
「食料もいる量を言ってくれたら仕入れて来るから前以って言ってよね? 前金半額で仕入れて来るから残りの6割は引き渡しの時で良い良心価格で手付は別に1割なんだよ? 足すと色々と数学的な難解で難問な定理が何て言うか展開して来るから足しちゃ駄目だけど仕入れて来るんだよ?」
「……本当なら助かるな、実はここに着く前に糧食を運ぶ部隊の荷が襲われて食料が心許無かったから頼めるか?」
「まいど? でも前金と手付金が無いと仕入れに行けないからお金かき集めて置いてね。まあ、仕入れ担当が行くから俺はお土産販売だから今なら茸ペナントがお買い得だよ?」
もう貴族軍に食料の余裕は無いだろう、王都からの帰りがけに貴族軍の後続の荷車の上に落ちていた食料は全部拾ったから無いはずだ。
「この店が無かったら補給が途絶えて危なかったな、しかもこの饅頭って言うのは美味いぞ」
「この通行手形でストーン・ゴーレムの動きが止められるなら被害も最小に抑えられるしな」
「高い買い物だがその価値はある、それにな(ニヤッ)」
きっと最後まで協力者として扱い友好的な振りをして物資の補給をさせ続けて、偽迷宮を落とせば用済みで俺を消せばお金は取り返せると思ってるから湯水の如く言い値で払っていく。儲かるがお饅頭は売り切れそうだ、きっと全部食べたのがバレたらこのおっさんたちは委員長様のお仕置き鞭攻撃で惨殺と言う名のお説教を喰らうんだろう。
しかし委員長さんふと見ると両手でお饅頭を持ってちょびちょびと齧ってリスみたいに食べていたんだけどカロリー計算は大丈夫なんだろうか?
そして有料で用意してあげたテーブルの上に図面が広げられて作戦会議が始まる、勿論の事だが心配りがばら撒かれて絨毯爆撃だと言われるくらいに気を配る気づかいのできる俺はちゃんと別料金で椅子も出してあげている。さらに追加料金でお茶とお饅頭を配って心配りが飽和配達なお大尽様だ。
まあ作戦と言ってもただの人海戦術だ。土魔法部隊と土木作業部隊が罠を埋め立てて行く、先行するのはマッド・ゴーレムが進み罠に掛かれば土に戻り埋め立てながら偽迷宮を無力化していく作戦の様だ。
マッド・ゴーレムではストーン・ゴーレムには対抗できないがストーン・ゴーレムは通行手形の大量購入で一時停止させる心算らしい。まあ本当はストーン・ゴーレムを止めてもラフレシアが待っているんだがラフレシアさん達ははおっさんだから隠れてる。だっておっさん触手攻め地獄とかマジ地獄だよ! 見たくないよ、それこそが男子高校生の心の発禁だよ!
そして作戦に合わせて大量の兵たちが進み、魔術師たちが総出でマッド・ゴーレムを作って罠を埋め立てながら進んで行く。だがそれでも次々と罠が作動し尽きる事が無い、だって今も追加中だし? いや、目の前で作戦聞かされたらそりゃ用意するんだよ? だってどこに橋を架けるかも、何処を埋め立てるかも、どの道を進むのかもみんな聞かせてくれてるのに用意しないとか空気読まなさ過ぎなんだよ?
だって貴族のおっさん達がみんなで俺の前で「ここ通るからね」「ここだよ、ここ」「ここだ」って振って来るんだよ? そこまで振られたら空気読んじゃうよ、うん、ちゃんと罠置いといたよ?
そして延々と目の前で作戦会議してるから聞きながら罠を設置していく、セットで1万エレのぼったくりなお茶とお饅頭もどんどん売れる。
きっとじわじわと進めていると思っているんだろう、きっとじわじわと偽迷宮が伸びてるとは思っていないんだろう。
そして作戦会議に参加しながら終始無言でメモを取り続けている一団、あれが教会の部隊だ。
貴族達は自分達が偽迷宮を潰す為の捨て石だと気付いてもいない、教会の誠実さを信じているのか教国の信義を信じているのか爺の正義を信じているのか知らないがあれが信じられるならオタ達が健全に更生する未来や莫迦達が知的に学問を語る将来も信じられるんだろう、なかなかの皆無な可能性に挑む挑戦者さん達だ。
「よし、左通路の沼を埋めて橋を架けろ」「魔力が続かないなら魔石の使用も許可する」「土木兵。右側盛りが薄い、何やっている!」「土産屋の小僧。お茶の追加だ」
魔導士たちが魔力を使い果たすと今度は湯水の如く魔石を消費しながらマッドゴーレムを増量して偽迷宮を埋め立てて行く、ストーンゴーレムを足止めする為に通行手形も飛ぶように売れていく。動けない振りしてるストーンゴーレム達も大変だ。だるまさんが転んだで練習させた甲斐は有った様だ、あっ! ぴくってした!
それにしても大盤振る舞いで金貨がザクザクと積まれて行く、あの魔石や金貨を援助し続ける後方の1団が教会騎士団だ、偽迷宮を埋め立てさせてムリムリ城まで攻め込ませて罠や武器を消耗させるためにこの貴族軍を支援して囮にして煽り立てている。お得意様だ。
しかしこれほどまでに莫大な予算を使い人と物資と魔石を注ぎ込んで偽迷宮を埋め立てるんなら、その予算俺にくれたらすぐ埋めちゃうんだけど誰も俺にはくれない様だ?
簡単には進ませないがぼったくりながら奥に引き込んでいく、貴族軍を完全に止めたりましてや潰したりすれば教会が奥の手を使う可能性がある。今は早すぎる、だから遅滞戦術Withぼったくりfeat.お大尽様で行進中だ。せめて貴族軍に綺麗なお姉さんな部隊でもいればラフレシアさん達も出番が有ったのにきっと残念がっているだろう。俺も残念だ。
「埋め立てが完了したそうですが次も3つ股の通路です」
「罠が大きい方が本命だろう、どれが大きかった?」
いや、左の何も無さそうに見えてツルツル油通路が正解なんだよ? 上り坂で滑るけど。
「真ん中の通路が巨大な穴です」
「よし、真ん中の通路に進めろ」
真ん中らしい、じゃあ右の出口に繋いでループにしてみよう。やはり目の前で作戦図を書いて貰えると大変分かり易い、中々気の利いたおっさんたちだ。
教会の一団は黙々と作戦図を写し取っては部下に手渡している、ならば教会の本隊は迷宮外の後方にいるんだろう。
そしてその後方から延々と金貨を積んだ荷馬車がやって来ては通行手形と食料を買い漁って行く、これだけのお金があるなら普通に魔石買えば何の問題も無いのにこんな所で浪費して全くお陰でこっちは富んだお大尽様だよ? あざっす?
「小僧。武器を売ってくれ、2部隊ほど武器が溶かされた。まったく忌々しい迷宮だ」
食料も武器装備も通行手形も飛ぶように売れていくのに茸型ペナントだけが売れ行きが悪い? もう少し目立つところでアピって見た方が良いのだろうか、何でだか委員長達が目立たないところに仕舞いこんじゃったんだよ?
仕入係の振りをして荷運びしてる振りをした尾行っ娘一族のおっさんがやって来た、まあ男ばっかりの所にお姉さんよこすと良くないのかも知れないんだけどこれ以上密閉された迷宮内でおっさん濃度を上げてしまうと臨界点に達しておっさん融合が始まって巨大おっさんが生まれ出しそうなんだよ? あれ? 魔物のジャイアントさん達っておっさん融合で生まれてたんだろうか、まあ殺すけど。だってノーマルでもジャイアントでもおっさんだ。
尾行っ娘一族のおっさんは小声で「動きなし」とだけ告げて荷を下ろす振りだけして戻って行った、何とかギリギリおっさん融合が免れたようだ。危ない所だった。
動いて無いし間に合ってもいないからまだまだ引き延ばしぼったくり作戦が延長だ。
今もせっせと埋めている大穴を底でせっせと深くして行っている、既に4割近くは進まれているが進ませない訳にもいかないからしょうがないがなんか悔しいし?
だが貴族軍を引き込まないと後ろの教会の部隊を引き込めない、あれこそを引き込んで封殺しなければやばい。あれが王国側に開放されれば止める術は無い、だから王国と辺境の狭間の偽迷宮とムリムリ城で戦う必要がある。そしておそらく最後の手段まで使ってくるだろう、止めれば暴走するからやらせて出口で叩き叩けなければ偽迷宮とムリムリ城が最後の要だ。だからここは呼び込み付きの背水の陣でお持て成しなぼったくりお土産屋さん付きだ。
「土産屋、食料を5千人分追加してくれ、飲み水も忘れるなよ」
まだ敵軍が増えている、もう傭兵崩れに野盗も盗賊も集められおっさん大集合に拍車がかかり、おっさん凝縮率が止まる事を知らずに飽和限界を超えて行く。もう今なら加齢臭だけで迷宮王すら倒せるほどだろう、ワンちゃん系迷宮王なら泣いて逃げるよ、だって俺も逃げ出したい!
ようやく正規ルートに辿り着き上り坂なツルツル油通路を上り始めたようだ、滑る上に「溶解」効果付きの油だから靴が売れるはずだからこっそり量産しておこう。滑って転べば靴以外の装備も破壊されて行くし売り上げはますます順調だ。
あ~何処も彼処もおっさんだらけだよ、夜なのに男子高校生的なお楽しみ要素が皆無な地獄のような光景だ。まったくみんな口を揃えてあの王弟のおっさんは役立たずだと罵っていたがあの王弟のおっさんはちゃんと美人女騎士さんを連れて来てエスコートまでさせた異世界初の良いおっさんだった、なのにこの貴族達と教会のおっさんたちは使えない。せめて美人女探検者さん連れて来て先行してくれればちゃんとラフレシアさんのお部屋までサクサクとご案内したというのに、なぜおっさんばかりで踏破できると思ったんだろう? 踏破できたのは王女っ娘だけなんだよ? つまりそう言う事なんだよ? おっさん率が高いほど難易度が上がり安全性も下がって行くのに?




