寧ろひきこもりなのに居場所のお家がほったらかしで帰れない。
66日目 獣人国 森
獣共の汚ねえ村に火をかけて焼き払う。そして炎から逃げ惑う獣たちを捕まえる、これが簡単獣狩りの基本だ。
そんで餓鬼か牝の一匹でも攫えば狂暴な雄は勝手に罠に掛かって行き死に絶える。人族の真似をしたところで所詮は獣だ、馬鹿みたいに罠に突っ込んで来て勝手に死ぬ。
どうせ大人の雄なんて大した金にはなりゃしない、勝手に死んどけ。
「武器を捨てろ、逃げれば餓鬼を一匹ずつ殺すぞ。 自分でそこの首輪を着けろ、着けた奴だけは殺さねえが後は皆殺しだかんな。さっさとしろ!」
ったく狸族と次は猪族かよ、安物ばっかりだ。まったくこんな獣臭い森まで獣人狩りに来て目玉商品の一つも無いなんて割に合わねえ。
「お前ら他の村知ってるんだろう? 言えよ、兎か狼か狐の村の場所を言ったら一つに付き一匹逃がしてやるぞ?」
だんまりか、これだから獣人なんて名乗っても知能も無い獣には損得の計算も出来ねえんだ。
「他の獣の村でも3つ言えば一匹離してやる、さっさと言った者が逃げれるんだぞ?」
使えねーな、まあ売るまで生かしておくだけだ。
痕が残らない様に痛めつければいつかは吐くのに馬鹿な獣だ、まあ逃がしてやるなんて嘘だからどのみち売るだけだ。
「なあ? 人が少なくなって無いか、まさか獣にやられてねえだろうな?」
「あ~ん? あ~雌連れて行って遊んでんだよ、あいつら好きだからな~」
「何だ、抜け駆けかよ。くそおっ、こっちは餓鬼ばっかだって言うのによ」
まあやばい狼や熊には獣人狩りの部隊が行ってるんだろうが外ればっかだと金にならねえ、兎か狐が見つかれば一攫千金で暫くの間は豪遊できるが狸はともかく猪って殺しても惜しくない程度だ。まったくついてない。
「何で偵察も帰って来ねえんだ? まさかあいつ等も雌見付けて遊んでんのかよ、こんなじゃ金になりゃしねーぞ」
「これじゃ数集めるしかねえだろう、増えたら安いの間引けばいいさ。まあ猪じゃあな~」
借金払ったら金残らねえんじゃねえかよ、ったく。
「獣集めて閉じ込めとけ、帰りに回収するんだから見張りも遊びすぎんなよー」
まあばらけて探して見つけるしか無いんだが何か気持ち悪いんだよ、森が静かな気がする?
まあその分獣が騒ぐわ泣き喚くわで喧しい、火魔法で火をかけてやったらやっと大人しくなりやがった。ったく火傷でもさせると安くなるんだから騒ぐなよ馬鹿動物たちが。
「散りすぎんなよ、それに「伝心の鈴」持ってるやつからはぐれんなよ」
もうちょとマシな魔道具がありゃ良いんだろうが教会の奴等が独占してやがるから俺ら商人は苦労するんだよ。
なんか静かすぎねえか?
餓鬼だ、いや大人か。若いが雄みたいだから金にはなら無さそうだが何族だ? フードが邪魔で耳が見えねえ。
「動くなよ、逃げたら殺すぞ」
「逃げないよ、ここまで来て逃げないよ。その為に異世界を目指してたんだから、やっとここに来たんだから。だからもう逃げない。」
キチガイか、人間の言葉が分かってねえのかよ。こりゃ売れねえな~、殺そう。
「おい、お前の仲間や村はどこにいる、言えば助けて逃がしてやるぞ」
「仲間は森に散らばっているし村には行かせられないし行けないよ? もうどこにも行く所なんて残って無いよ?」
キチガイだな言葉が通じてねえわ、ついてねえな~さっさと殺して次に行くか。
剣を構えて近づくが動きもしねえ、ビビッて固まっちまったか。
剣を喉に突き刺す、突き刺す? えっ?
「あの獣人たちは戦っていたよ、罠だと分かっていてそれでも助けて守りたかったんだ」
えっ。
(ブチッ)
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化け物だ。
獣狩りでちょっと遊んでたら突然に仲間が殺された、突如として見えない何かに身体がバラバラにされた。
身体の中に何かをつっ込まれたかのように内側から千切り取られてバラバラにされて行く。
くそっ、あの雌が暴れて騒ぐからこんな事になったんだよ、さっさと殺っとけば、
「ぐうわああああっ、があああっ、あ、脚が、ぐがあがああっ」
獣人狩りの部隊は全員スキル装備を身に付けているのに片っ端から殺られていく。
元A級冒険者あがりの護衛までもがばらばらに千切られた、あれは戦闘技術とか関係が無い化け物だ。
「何なんだよ一体、俺が何したって言うんだよ、何で俺らが殺されなきゃいけねえんだよこの人殺しがああっ」
くそっ、獣奴隷の在庫が足りないから買うよりは安いし役得も有るからとこんな所まで来たばっかりに。
「ふざけんなよ。お前人間だろう、何獣の味方してんだよ。俺は人間だぞ、何で俺が殺されなきゃいけないんだよ、ふざけんな!」
「僕は人間だけど僕が嫌いなのもみんな人間だったけど? 獣人に恨みは無いけど人間にはたくさんあるよ、じゃあ死んでね」
がああっ、何で、何で俺が、身体が……なにか侵入ってくる……
「苦しめて傷つけて殺すのが楽しかったんでしょ? 楽しんでよ、苦しめて、傷つけて、殺してあげるから」
なんで、
(グチヤッ)
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こいつは人間だ、王国は分裂して内乱状態だ、まさかもう教国の妨害部隊が出て来やがったのか?
「俺達は商業連合の者だぞ、後続部隊もいるし本隊も来てる。俺らに手を出せば敵対行為だからな、国に喧嘩を売る気か? あああっ」
「は~っ。もうとっくに後続もいないし本隊もいないんじゃないかなー、喧嘩なんてした事が無かったんだ。だから売ってみようかなって思ってね?」
どっから来やがった、気配も無いし周りには商国の獣人狩り部隊が展開しているのに何でこんな所に現れやがった。
姿が消えた。
「待て待て待て、分かった獣人の半分そっちに渡す。手打ちだ、その代わり狩り終わるまで邪魔は無しだ」
消えて現れる。その度に仲間が殺されている、逃げるにしても味方はどっちだ?
腰から効果付きの剣を抜きだす、必ず刺せる必中の武器。
「固まれ、ばらけんな」
返事が無い?
「だからもう誰もいないよ。さようなら」
後ろから声がした瞬間に斬りかかる、奥の手の「必中」の効果付きだ。……いない? あっ、
(グサッ)
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集合して情報共有、僕らは無敵じゃない、僕らは強者にはなれない。情報を押さえ状況を確認して行く。
「A-2~C-5までは殺した、逃がしたのはいないよ村2つは何も無し」
「こっちでD-3まで潰したから向こうの4つの村は大丈夫だったけどA-6は間に合わなかった、殺されて焼かれてた」
「さっきE-7で狸族は保護して解放したよ、でも猪族の村も駄目だった。あとのEの3つは無事」
「こっちはGまで全開放だけどあっちから奥に傭兵部隊がいるよ、あれが獣人国の守備隊狙いの部隊だろうね」
目標は全て解放した。間に合った村は全て助けた、殺せる敵は全部殺した。みんなで人を殺した、まあ思ったよりは全然平気だ。だって僕らが憎いのは人間だから、きっと獣人を殺す方がよっぽど心が痛むんだと思う。
でも遥君は違う、遥君だけは違う。その遥君は僕たちやみんなの為に殺し続けて来た、そして全然平気なんかじゃ無かった。
だから殺してみたけど何も感じなかった、ただ殺された獣人たちの死体を蹴るのを見て怒りにまかせて殺し尽くしただけだった。
遥君は柿崎君達はこっちだと言っていたがどうやら僕らもこっちみたいだ。でも女子達はあっちなのにこっちに来てしまっただけだ。そして遥君もだ、殺す事しか出来ない遥君はこっちでは無かったのに殺し続けた。誰よりも人殺しが大っ嫌いな殺戮者だった。
「柿崎組に合流しようか? まあ応援なんていらないと思うから逃げるのを狩る方が良いのかな」
商国の傭兵部隊はもう全滅しているだろう。商国有数の歴戦の経験を積んだ傭兵の戦士たちの集団はもう暴虐に巻き込まれて千切れてしまってる。
学校どころか全国レベルで有名人のアスリートたちの本当の姿は遥君の言う通りの戦闘集団だった。
海賊戦でも接舷した瞬間に何もかも終わっていた、戦闘も命も一瞬で蹴散らした。商国の船団は商業船と言いつつ自衛のためと言って武装している、実際は自分達が非武装の船を襲っている、要は商人兼海賊だった。その武装船に乗った海上戦の専門家の傭兵達が瞬く間に破壊されて行った、人体を瞬間的に的確に壊して手際よく効率的に殲滅していた。
あの5人は敵が人間ならば5人だけの方が強いのかも知れない、集団戦ならともかく森の中での遭遇戦なら僕たちだけでなく委員長ですらついて行けないだろう。行っても邪魔になる。
そしてもう傭兵達のいた方向からの気配が殆ど残っていない、狩り尽くされ殲滅されている。
戦闘集団、命がけで全力を尽くして戦う事こそが喜び、闘うために意味も意義も理由すらも要らない。戦う事が生きがい、戦いの無い世界で燻っていた戦闘集団が異世界の森に放たれて行き傭兵達はそれに出会ってしまった。だから気配が消え去った。
残りが本隊だ。商国の正規兵、軍隊だ。
「一番問題の獣人の戦士や獣人軍を殺す為の本隊、戦い殺す為の魔法とスキルと魔具を集めた殺戮部隊。あれだけは本気で危ないけどスライムさんに任せてしまっていいのかなー?」
「「「あれこそ心配ないと思うよ!」」」
確かにその通りだ。
ぽよぽよと可愛いスライムさんは遥君とアンジェリカさんと言う化け物と一緒にいても何の謙遜の無い程の化け物なんだ、可愛いけど。
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森が静かすぎた。
最初は最弱の魔物のスライム一匹だった。
態々狩る意味も価値も無いし無視して進んだ。
「またかよ、なんか多いな」
大量発生したのか至るところにスライムがいる、だが集まった所でスライム程度なら危険はないし先を急いだ。
だがどこまでもスライムたちが見渡す限りに広がっていた、異常過ぎる。
「大襲撃が起ってるのか、魔法で焼き払うぞ」
「集めて一気に処分しよう、周りから囲もう」
無視できない程の大群だった、一斉に来ればスライムと言えども流石に危険だ。
大襲撃だったとしてもスライムだけならと行動を始めた瞬間に現れた、
森一面のスライム。森の木が見えなくなるくらいのスライムの海。
この本隊は戦闘中隊が6隊に小グループが参加した大部隊だ、分散した3千を超える大部隊が包囲され囲まれている。
「守れ! 防御陣、魔法部隊で掃討して先ずは数を減らせ」
「毒を撒け、風下だけで良い。とにかく減らせ」
「う、動きだしました。魔法壁が喰われてる?」
「魔物殺しの武器も駄目だ、炎も喰われてる!」
魔法部隊の攻撃が効いていないし矢も槍も効いていない。そしてもう囲まれて逃げ場がない。
「どの魔道具でも効果なし、毒も駄目だ効いていない」
「くそっ特殊個体の群れかよ、とにかく突破して逃げよう。あの数だと食われるぞ」
商業連合の軍人や冒険者の精鋭が集められている部隊の兵士が次々にスライムに喰われて行く、これはもう見捨てて逃げるしかない。
助けてやれないが俺なら逃げ切れる、今迄地獄を生き抜き化け物を倒して来た。
今は軍で指揮官なんてやってても元はS級の冒険者だ、そして俺は他とは装備から違う。
しかし数が多いうえに逃げると……誘導されている? 後ろはもう気配がない、あっと言う間に全滅かよ。
そしてその先に一匹のスライム。
一匹だけだ。
だが違う、これでも元はS級まで行った冒険者だった、身を崩し軍に拾われて殺人技術も身に付けた。あくどく稼いだ金で特殊スキル装備まで手に入れた。明けても暮れても戦ってきた経験が告げている、強い。
魔物が怖いと思ったのはこれで2度目、あの迷宮王以来だ。あれで仲間をみんな失って冒険者は終わったが、まさかあれよりもやばい魔物がいるなんてな。
まあ、これも自業自得で後戻りはもうできないか、酒に溺れて身を持ち崩し借金だらけで軍に入り今迄随分と殺し犯し焼いて来たんだしな。
「殺すしか路が無いみたいだな」
(プルプル)
これは死ぬな。
なら最後の手段だ、襟の裏に仕込んであるポケットから薬を取り出して飲み込む。
寿命を縮め一生副作用が付き纏うと言う曰く付きの薬だがステータスは爆発的に伸びる、短い時間なら数十倍だとも言われているが一気に行って殺すか逃げる。
剣に生きて来た、仲間を失い狂った一生だったがそれでも目指して来たのは剣、なのに最期はスライム相手か。
天罰だな。
迷宮王を倒し英雄と祭り上げられた、ずっと一緒だった仲間は守れずに皆死んでしまったのに英雄扱いだ、あれから狂い見失い生きて来たが終わりが来た、やっと終わりだ。
もう俺の魂は仲間の元へはいけないほど汚れてしまった、俺には最初から最期まで剣しかなかった。後のものは全部あの時に無くしちまった。
ゆっくりと剣を構える。
丸くポンポンと跳ねていたスライムが揺れ出した、大きく縦に伸びて行く。
あれは四肢なのか、擬人化している? 人。 あれは人なのか? 人の形になっていくが人と言うには美し過ぎる。
(……。)
剣。
剣が振られた、俺の最期は剣だった。
ゴミみたいな生涯の最期に見たものは絶世の美女が振るう剣の極みに在る神技の一刀だった。
何もかもを見失う前までずっと目指して憧れて夢見ていた一刀だった。
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全員集合して範囲索敵するが敵の気配は無いし獣人たちも警戒して出て来ない、ケモミミ……。
獣人の死者の躯を集めて穴を掘り後は埋葬するだけにしてある、墓石も石だけ置いて来た。
きっと人間に埋められるのも墓を刻まれるのも嫌だと思う、きっと人間には憎しみしかない。
ただ手を合わせて頭を下げる、尊敬の念を込めてただ冥福を祈る。
これで商国の戦力は削れたと思う、あの本隊の強さは主力部隊だったんじゃないだろうか。それに傭兵部隊も統率が取れていた、僕たちが掃討した村狩りの部隊ですら装備がスキル付きで高Lvの護衛も付いていた。それが壊滅すれば戦力は充分に削れたんじゃないだろうか? 併せれば1万は超えていたはずだから大打撃は与えられた、獣人の戦士たちが命を捨てて守り続けたから村も残り奴隷も連れ去られずに済んだ。そして敵だけはとれた。
そしてこれでもう獣人国には安易に攻めて来ないだろう。
(ポヨポヨ。)
ここに人間がいちゃいけない、今も恐れて警戒しているが遠巻きに見張っている。
村を焼かれて仲間を殺されて、今更人間が友好的に近づいても信用できるはずが無い。
異世界までやって来たけれどケモミミは無理みたいだ、帰ろう。
「柿崎君達も撤収で良い?」
「「「おおう」」」
もう一度手を合わせてから王国を目指して歩き始める。
村を焼かれ逆らった戦士は殺されても捕まった女子供を助けようとして男達は罠に飛び込んで殺されて行った。
ずっと脅えて逃げて隠れて諦めていた僕たちとは違う、死ぬ気で守ろうとし戦った獣人の戦士たち。
あれが勇気だ、僕らには無い物だ。無謀だ無意味だ逆効果だと言い訳して僕らが出来なかった事だ。
それを殺して笑っていた、命がけの勇気すら馬鹿にして嘲笑っていた。
だからキレた、だから怒り恐怖心とか罪悪感とかどうでも良くなった、ただ許せなくて憎かった。
そして殺した。殺し尽くした。
やっと分かった、怖いから守るスキルを得たと思ってた。
弱いからチートスキルで守られたと思ってた。
怒っていたんだ、憎かったんだ、悔しくて虚しくて悲しくて惨めだったからだった。
これは守るスキルじゃ無かったんだ、これは怒りをぶつける為のスキル。
帰ろう、だって此処に来た意味が在るんならこのスキルが必要なんだ、そこでみんなが待っている。
(プルプル。)
異世界に転移して来たらずっと何処にも居場所が無かった僕たちに帰る場所が出来ていた。
みなさまから本当に沢山のブックマークや御評価を頂き32,000pt以上もの総合評価を頂いておりました、本当に分不相応な評価を頂き本当にありがとうございます。これからも日々励みにさせて頂きます。
お礼投稿と言いうのも烏滸がましい何時もの乱文のお礼投稿ですが、もし万が一何かの間違いで御気に入って頂けてお付き合い頂ければ本当に幸いです。
乱文に誤字脱字だらけの、小説らしきものを書き始めて2月半のど素人の書いてるお話に本当に過分な評価を頂き只々本当に感謝の気持ちでいっぱいです、ありがとうございます。




