永い永い時を戦い抜いて歴戦しちゃった時点でもう違うと思うんだけど怖くて誰も言えない。
65日目 夕方 御土産屋 王都前支店
お引越しが決定した。王都前に来たばかりなのにもうお引越し、何で毎日建築しちゃうんだろう? 何故アンジェリカさんはバスガイドさんの格好? まさかの偽京都巡りの旅(バス無し)なのかな?
そして遥君が語っている。勿論みんな聞いていない。
「敵陣の中に食い込み中から食い破る、弱い内側から破壊し自陣故に下手に攻撃すら出来ずに食い尽くされる。そうそれこそがお引越しだ! 王都支店へご栄転だー?」
それはお引越しじゃ無いからね? お引越ししてきた人は中に食い込んじゃってから中から食い破って内側から破壊したり食い尽くしたりしなからね? いったい遥君はお引越しを何だと思っているんだろう、一度ちゃんとお話して聞いてみ ……たくないかな?
だから行き成り閉店セールが開催された。
「って言う訳で王都支店が開いたんで王都前店は店仕舞いセールでーす! 今日だけのお買い得ーかどうかは明日のお楽しみ? だけど閉店で店仕舞いセールだー、しかもあと1時間で閉店のタイムセ-ルで超特価かも知れない? みたいな感じで全品1割引きでーす、実はこっそり値上げしてからの1割引きだけど1割引きったら1割引きだからぼったくりだけどお買い得な気はするんだよー! 気だけなんだけど?」
「「「「きゃあああああああっ!」」」」
遂に異世界で乙女戦争が開催されてしまった! 遂に異世界の未だ中世の女性までもが乙女戦争の餌食になった、お得と安売りの甘言に今だけで限定な殺し文句に抗えないんだろう。
老若男女が入り乱れ商品を争って奪い合う、だが未だただの争乱だ。
まだ乙女戦争までは達していない、まだ臨界点までは余裕がある。
だけど必ず噂が流れる、既に口込みネットワークで情報を掴んでいる筈。 来る、きっと来る!
そして現れた。
ついに覇者が現れた。乙女戦争の脅威にして終焉、永い永い時を戦い抜いた歴戦の乙女。人は皆恐れと共にこう呼ぶ「奥様」!
敢然と奥様達が戦場に躍り込む。惨劇へと変貌した乙女戦争の戦場を縦横無尽に駆け抜け轢殺し唯我独尊に奪い尽くし一騎当千に蹴散らして天下無双の商品強奪、奥様達が戦場を疾走し商品を駆逐する。
あれこそが地獄だ、あれが蹂躙だ、だって元迷宮皇が脅えてる! 涙目で怖がっている、初めて見たんだろう恐怖の光景に元迷宮皇が脅え竦んで涙目だった。うん、あれは乙女じゃ勝てないの。
売りきれました。
「お疲れ~。売り切ったからお引越し? って言うかどうしよう王都前支店? あ~メリお父さんにあげればいいや、ちょうど来たし?」
一騎の騎士が駆けて来る、また一騎できてる。
「やー遅くなったね、近衛の再編成で後続が遅れるから面倒だし先に来ちゃったよ。で、何で王都の真ん前に城塞作ってるのかな~? 王宮は無事? 滅ぼしたり崩壊させて無いよね? 」
またオムイ様が単騎駆でやって来た、きっとあの必死に追っているのが側近さんだろう。余りにもいつも可哀想で思わず遥君が側近さん専用装備を作ってあげたらしいが「加速」付与でも追い付けなかったみたいだ、でもよく考えたらオムイ様の装備も遥君作だから追い付けない原因は遥君だった! 大体いつもよく考えてみると遥君が犯人だ。
「何か滅茶ちょうどいいよ、この城塞空き家になったから引き取り手を探してたんだけど駐屯地にどう? だってせっかく建てたのに潰すのって損した気分でぼったくり感が台無しなんだよ、でも第2師団のおっさんに営業許可証貰ったから中にお引越し? って言うか無料でお店と格安住み込み従業員付きお得物件が大泣きしてるから真のお大尽様の力を見せつけて教育しないといけなくなったんだよ、だからあげるよ? いらないし?」
駐屯地になるみたいだ、勿論オムイ様は理解できていないが大分慣れたようで城塞がもらえる事は分かったみたいだ。大丈夫だろうか? 遥君の言葉が分かるようになるたびに自分の言葉が壊れて行くのが分かる、実際みんな結構ヤバいの? あれは伝染っていく、オムイ様もそろそろ……みたいな?
辺境軍と近衛師団が次々に集まり、それに合わせて建物が拡張されて行く。旧お土産屋さんの屋上に図書委員ちゃんが立っている、だから王都からは辺境軍と近衛師団が見えていない、気付かれていない。
万に近い大軍がこの近さで見つからない、これが「不存在の指輪 強制隠蔽 識別遮断 認識疎外」遥君や王弟様を襲った千の兵を隠していた教会の魔道具の力、そしてそれが「波及の首飾り」の効果波及浸透で強化増大されていてレジスト出来ないアンチレジストの効果付きだ。遥君が戦争の切り札になるとまで言っていた図書委員ちゃんの専用装備、究極の戦略兵器だ。
さあ、こっちは終わったしお引越ししよう。孤児院の子供たちも待っている、何故だか相変わらず遥君は子供たちに大人気だった? 子供たちへの悪影響が心配だ、真似してはいけない究極の悪いお手本デラックス版完全コンプ済みなのに何故だか子供たちに大人気だ。
戻ったら真似したら駄目って教えないと! 遥君みたいな子供が沢山いる街ってとっても危険過ぎるだろう、誰が考えたって戦場や迷宮の方が平和そうだ!
でもきっとどんなにお気に入りで大好きでもきっとあれは真似できない、きっとあれは誰にも真似なんかできない、だから大丈夫だと信じよう。駄目だったら隔離しよう!
バスガイドさんの案内で孤児院に向かう、歩きです。
偽歴史的建造物に皆が唖然としながら孤児院を目指す、もう突っ込んだら負けだって言う空気に緊張しながら観光巡りなプチ修学旅行だ。そして、
「「「「何で平等院鳳凰堂!」」」」
良かった、みんなが突っ込んでくれた。
だってお昼のメンバーはもうみんな突っ込み疲れて突っ込み力が残って無いの、もう突っ込み過ぎて突っ込み疲れで過労なの。だって東大寺造るだけのスペースが無いとか平地に清水寺は似合わないとか言ってる人の暴走をくい止めるために突っ込んで突っ込んで突っ込み続けて力尽きちゃったの。もう無理だった、五稜郭作って貴族街を焼き払うんだ~とかの騒ぎを止めるので精一杯だったの。 だから孤児院が平等院鳳凰堂但し池無しなのはしょうがなかった、だって一刻も早くあの子達にお家とご飯を用意してあげたかったから、もう安心で温かくて綺麗なら平等院鳳凰堂だろうと江戸城だろうと出雲大社でも法隆寺でも良かったの。
まあ改めて見ると全然良くないんだけどあの時は良かった気がしちゃったの? うん、極楽浄土の姿を映したって言われる平等院鳳凰堂の屋根に掲げられた『御土産屋 孤児院支店 みたいな? 感じ?』はきっと良くなかっただろう、だって……ネオンだし? 何か如何わしい?
「「「おかえりなさ~い」」」
お出迎えだ、居残り組と子供たち。
そこには見違えるほど綺麗になって天使みたいにみんな笑ってる、まだ痩せてて病み疲れが残っているけれど……でもね、みんな笑ってるの。嬉しそうに楽しそうに幸せそうに笑って手を振って呼んでくれているの。
あの時の疲れ切って諦めきって絶望したような無表情な虚ろな顔はもうなくなってる、零れるくらいに笑ってる。
天使みたいに子供たちが笑っている。
「「「ただいま。」」」
みんな笑顔で合流できた、たった一人を除いて。
ただ一人だけが笑えなかった。
孤児院に着くなり王女様、シャーリー様が子供たちに向かい跪き頭を下げた。まるで床にたたきつける様に、泣きながら頭を下げた。
ここに着く前に話したから、ここがどんな状態で子供たちがどんな状況だったか、きちんとお話した。遥君は何も言わなかった、王女様は何も言って貰えなかった。
言葉が無い事こそが辛かっただろう、見捨てられたような気分だろう、自らと王国と貴族と王族の全てに絶望しながらここまで歩いて来た。誰も助けなかった子供たち、誰からも助けて貰えなかった子供たち、その見捨てた王国の主として贖罪に来た。
詫びても意味は無いし謝っても許されない、だから何も言ってもらえなかった王女様は自分自身に刻み込む様に額を地に打ち付けて泣いていた。
守ろうとした王国の真実の姿を知ってしまった、民を守ると誓った王家は民が見捨てられている事すら知らなかったのだから、その民である子供たちに頭を下げる事しか出来ない哀れな王族だった。
だけどこれだけは庇ってあげられない、これだけは許してあげられない。だってそれこそが民を守ると命まで掛けて来た王女様自身を侮辱する事になる、代々引き継がれてきた民を守ると言う王家の誓いを馬鹿にすることになる。
だからありのままに告げた、孤児は死にかかっていたと、病気が蔓延し体力も無く痩せ細って死にかけていたと、遥君の薬用茸ポーションが無ければ危ない所だった、王都の民の最も弱い孤児たちは王国から見捨てられて死にかかっていたと告げた。
何故なら知らないと言う事こそが王族の罪、何故ならば民を守ると誓って建った王家なのだから。
一杯泣いて一杯悔やんで一杯思い知って這い蹲りながらでも自分で立ち上がるしかない、もう過ぎた罪は許される事は無いから、なら今から成し遂げるしかないの。先を目指して立ち上がらないと未来までも許されなくなるよ?
まあ王女様達は昨日の遥君の顔を見なくて済んで運が良かった、あの貴族街を見つめながら優しく微笑む顔を見なくて済んだのだから。優しい微笑だった、まるで死に逝く者たちの命乞いを微笑みながら地獄へ見送る様な何処までも優しい微笑だったから。
14,000,000ものPVを頂いてました、皆様にお読み頂きまして本当にありがとうございます。これからも日々励みにさせて頂きます。
お礼投稿と言いうのも烏滸がましいお礼投稿ですが、もし万が一何かの間違いで御気に入って頂けてお付き合い頂ければ本当に幸いです。
乱文に誤字脱字だらけの、生まれて初めて小説らしきものを書き始めて未だ2月半のど素人の書いてるお話に本当に沢山の方々にお読み頂きお目汚ししまして只々本当にありがとうございます。




