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21人のジトに囲まれ怒られ9名のオタ莫迦付きで毎日食事は自炊で浪費するお金も無いんだよ?


58日目 王都 王城



 内戦になる。国力が維持すら出来ない凋落の中での内輪揉めだ、あれが内輪と呼べるのならばだが。大貴族共だ、既に外国の傀儡で売国奴の腐敗貴族共。それが最後の砦である辺境の魔石に群がり始めた、もう王国にはそれしか残っていない。其れすら私掠する気だ。

 

 「王弟閣下。こちらが現在の情報を精査した物になります。確実な情報とは言えませんが現在手に入った情報全てを取捨選択して解析した結果です、これ以上はもう時間が許さぬでしょう。」

 

 王である兄さえ意識を取り戻せば打開できるのだがもう時間が無い。まさか私がメロトーサム卿と敵として会いまみえ様とは、いやそれこそ兄にはさせられん。私自身が兄とメロトーサム伯が戦うところなど考える事すら耐えられぬ。いっそ私が討たれて済むものなら、それで国が治まるのなら討ち死にに行くのも悪くないのだがそれでは何の解決もしない程に根が深く事情が拗れ過ぎている。何時かは起こる問題ではあったのだが解決策が何も見つからぬ有様なのだ。


 そしてメロトーサム卿に何も言い訳など出来ぬよ、ただ王の為に今迄耐えてくれた、王家の為に苦汁を飲み続け、屈辱に甘んじて来た。そして王が病に倒れると同時に大貴族共のやりたい放題が始まり遂にはメロトーサム卿もその家族も命を狙われた。そしてそれすら下っ端貴族の首で有耶無耶にされたのだ。


 「つまりLv20にも満たない冒険者志望の小僧が最古の迷宮で事故にあい最下層に落ちた、奇跡的に一命を取り留めた小僧は崩落で死んだ迷宮王の宝を持って帰りその金で辺境を買い占め独占しているのだな?」


 「分かっている情報で確実性の有る物を繋げただけの推論ですが恐らくはそれが一番真実に近いのではないかと?あとの話は御伽噺の様に荒唐無稽の法螺話や面白おかしく脚色された英雄譚で信憑性が皆無の物だけでした、現在の最新情報では20人の美姫を囲い込み10名の屈強なA級の冒険者を護衛に付け宿を一軒借りきって毎日豪勢な食事をして莫大な金を街で浪費しているとの情報が入ってきています。」


 せめてもの落し所にと迷宮王の財宝を手に入れたと言う冒険者とその宝を王都まで差し出す様にと使者を出したが受け入れられなかった、只の冒険者の引き渡しの条件にあのメロトーサム卿が激怒し怒り狂ったとも聞く。


 「ならばなぜそんな風来の小僧をあの辺境伯メロトーサム・シム・オムイが庇い立てする?王国と戦端を開く事になろうかと言うのに未だ引き渡しを拒む理由が無いのではないか?」


 「その小僧を庇っているのではありません、王国の意に逆らっているのです。過去の盟約を守らない事を盾に小僧を理由に魔石の販売を止め王国を脅迫しているのでしょう。その証拠に辺境の入り口には強大な城塞が築かれているとの情報もありかなり以前からこのことを準備していたのでしょう、城の規模からみても5年やそこらの話では無いはずです。謀反か辺境の独立か狙いは分かりませんがこちらの譲歩を値踏みする計画でしょう。」


 もう辺境はとっくに限界の筈だ、最も危険な地で大陸を守護するオムイ領は大貴族共のせいで貧困に喘ぎ満足な武装すら出来ぬままに魔の森の魔物達と戦い続けている。この状況で滅びていない事こそが奇跡だろう、そしてオムイが滅びれば王国も滅びると言うのに辺境の魔石を奪い贅を凝らす事しか考えられぬ大貴族の愚かさには辟易どころか反吐が出そうだ!


 だがその状況で城砦を作ったのか?しかも何年も前から、それが信じられないがもし城塞まで用意されているのならば話し合いしか出来ない筈だろう。


 「だがあのメロトーサム・シム・オムイが率いる辺境軍相手に勝てるのか?しかも城塞まで用意し戦争に備えているのだぞ。」


 「だが引けませぬ。ここで引けば王国は割れ、国として立ち行かなくなるでしょう。話し合いで済むなら良いですが決別してから戦では国が持ちません、時間が無いのです。最早国庫は空、他国への借金返済すら危機的状況です。」 


 「シャリセレスが率いた近衛師団ですら壊滅したのだぞ!誰が成せる? 最精鋭が辺境まで辿り着く事すら出来なかったのだ、戦争に勝つ前に辿り着けるのか?」


 せめてシャリセレスが交渉まで持って行ければと一縷の望みを託したが……いや、あれは死ぬ気だった。そして王国の為に辺境まで辿り着いたとしても決してメロトーサム卿に剣を向ける事など決してしなかっただろう。あれは死して大貴族共を止める気であった、自らの命でくさびを打ち込もうとしたのだ。


 それすら無駄に終わった。だがシャリセレスはメロトーサム卿の下に保護されている、これで良かったのかも知れんな。


 「……国境の警備を見てくれだけの貴族の子弟と入れ替え全軍で当たるしかないでしょう、あのような大貴族の私兵の寄せ集めの軍では話にもならないでしょう。ですがグヴァデーイ第1皇子は完全に大貴族に付きました、見捨てれば禍根を残す恐れもあります。」


 「見捨てろ。禍根など放って置け、あの強欲の恥知らず共のせいで辺境と事を構えねばならなくなったのだぞ!それにまだ乗っかっる愚か者にどうせ国など任せられん。」


 愚か過ぎる。だが第2皇子もこの情勢で全く動きを見せない、他は継承権から言っても泡沫だし小物ばかりだ。だが誰かが王家を継がねばならん、兄が回復せねば遠い話ではなくなるだろう。だがシャリセレスは血で血を洗う凄惨な継承権争いなどに加わる事は無いだろう、ならば寧ろメロトーサム伯の下に保護されているのは僥倖なのかも知れない。此処に留まれば暗殺される可能性が高すぎる、あれは軍にも民にも人気が高い、そして第1皇子には悪評なら掃いて捨てる程あろうが人気など欠片も無いのだから王城の中こそが危険だったのだ。


 「王軍は動かさぬ。少数の近隣の部隊を1つ呼び寄せてくれ、もう交渉など無意味だとしても最後にメロトーサム卿の下に行かねばならぬだろう。まして兄が行けぬのだ、せめて私が行かねば……もう何もかもが遅かったとしても行かねばならんのだ。」


 もう滅亡しかないのだろうか、皮肉な事だがならばいっそメロトーサム伯が謀反を起こし王国を乗っ取ってくれるのが一番だと言うのが笑える話だが。他に未来が無いのだ、だがメロトーサム卿は決して謀反など起こさない事も分かっている。


 王国が、王の座が欲しければオムイの代々の歴々の当主すべてが何時でも出来ただろう、だが常に王国と王家に最も忠誠を誓い最期まで尽くしてくれたのは歴代のオムイ家の頭首だった。


 歴代の王は皆オムイ家に感謝を捧げ魔の森で散って逝く歴々のオムイ伯に涙したと言う、何の権威も求めずただ民の為に戦う英雄の一族 オムイ。


 それこそが王に相応しいだろうに、我等ディオレールの王族などオムイの歴々に助けられ恩を受けそして仇でしか返せぬ愚かで無能なお飾りにしか過ぎないのだ。


 だが王国はもう命運尽きた、腐敗に塗れ内部は腐り果て隣国の言い成りの拝金貴族が国を売り飛ばす始末だ。


 外交の唯一の取り引き材料である魔石すら貴族共の利権にしようと辺境に圧力まで掛け毟り取ろうとする始末、とっくの昔に我らは皆殺しにされても当然の所まで来ている。そこまでやってしまっている。


 私の最期は兄に代わってメロトーサム卿の下に行く事だろう。もう言葉も無いがせめて王家の者として頭を下げねば、それすらも烏滸がましいとしても其れしか出来ない。


 「貴族軍の状況及び作戦は?もうどうせ王国が滅びるなら辺境軍と挟んで潰し殺してやるのも一興か?」


 「ごっ、御冗談でも口が過ぎます!その様な王国が割れるような発言が外部に漏れれば大問題になるでしょう、辺境に肩入れする御積りならば国賊とされかねないのです。」


 兄でさえ、王でさえ止められなかった最悪が私に止められる訳が無い。


 そして王が伏せている間に最悪がさらに最悪になっていく、考えられる最も悪い状況よりも悪くなっていくのだ。


 既に王国軍よりも貴族軍の方が圧倒的に多い、そして王国軍が分裂し大貴族達と癒着している。戦いにすらならないだろう。


 手打ちできそうな条件などその訳の分からん小僧とその宝しかないだろう、それすら無しに貴族共とその裏の教会共と交渉に持ち込む手札が無い。


 オムイ伯が庇い立てせねば身柄を抑えて貴族共の大義名分を潰せるやもしれない、全ての民を助けるのがオムイとは言え余りにも頑な過ぎる。


 そして何の譲歩も無くあの貴族共が手を引くなど在りえない以上落し所はそれしか無い、駄目ならば内戦以外の道は消える。


 だが貴族共は本気で我ら王家や貴族の有象無象が束に成った処であの辺境軍に勝てるとでも思っているのだろうか、あの屑貴族共は辺境を見た事すら無いと言うのか、あの魔物が徘徊し跋扈する魔の森で戦うあの辺境軍の強兵達と浅い迷宮ですら潰せぬ貴族軍で真面に戦えると思っているのだろうか。


 「シャリセレスの救出は失敗したらしいがあんな物は救出にかこつけた暗殺だ。既に交渉する口実まで潰されたんだぞ、そもそも交渉できる材料も無ければ交渉が許される立場ですらないのにだ。」


 「もう辺境を討つ以外に手立て等残されていないのです、戦乱を避ける手立てがないのです。ご理解下さい……」


 「お前はオムイを討てと言うのか?王国の英雄にして大恩人、それを民が許すと思っているのか?」


 「……討てなければ王国が終わり王国の民は国を失い流浪の身に落ち果てるでしょう、そして……大陸が戦乱になります。討てるかどうかではなく討つ以外の道が無いのです。それがあのオムイであっても。」


 愚かさに滅びるか、最早王子共の首と我が首を差し出して収まる話では無くなっている。行くしか在るまい、辺境オムイに。


 出来る事ならその冒険者の小僧の身で貴族共を黙らせたうえでオムイ伯との交渉に持ち込みたい。王族の首を並べてでも謝罪し、貴族共はその小僧で手打ちにするしか最早打つ手はない。最期の道だ。


 この首と交換でも良い、内戦になれば王国は終わる。


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[良い点] 政治色の極めて濃い、読み応え抜群の説明回ですねぇ [気になる点] 清濁併せ呑んでこその政治だからねぇ なんもいえねーわさ [一言] これは本当に単行本が欲しくなった もちろん紙媒体の方…
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