答えようが無いし書けないんだけど出来なくなってしまったからしっかりと刻んだ。
55日目 深夜 滅びた村
あらん限りの魔力を制御して暴れ出す端から抑え込み、注ぎ込んで注ぎ込めるだけ注ぎ込む込む。だってまたここに再建するんだよ?だったら出来ることなんて二度と絶対に滅ぼさせない事だけなんだよ、別にこんな事して罪滅ぼしになるなんて思ってもいないよ、ただこれで今度は俺が作った村が滅んだら許されないうえに救いも無いじゃん。まあ救いなんてきっとなくてもこんな事しか出来ないんだよ?もうここにいた人たちは死んじゃったんだから、せめて帰ってくる人たちに出来る事なんてこれくらいじゃん。だって救えないし守れないし何にも出来ないんだよ?こんな事くらいなんだよ、出来る事って。
「眠たくない?無理に付いて来なくても良かったんだよ?別に危ない事しないし村を作るだけだから見ていても退屈なんだよ?」
(イヤイヤ。)(プルプル。)
お供について来てくれた。魔の森の伐採も進んでいてこの辺りは安全だしどうせ森の浅い所なんてゴブとかコボとか莫迦とかしかいないから大丈夫なんだよ?まあ深夜に莫迦たちがいたらそれは大丈夫じゃない気がするんんだけど大丈夫だろう。莫迦たちの頭以外は。手遅れだし?
城壁を巡らせながら物見櫓を建て繋げていく。あの時これがあれば間に合ったんだよ、あの時これがあれば助かったんだよ、もう何もかもが全然手遅れなんだけどせめて丈夫に頑丈に造る。きっともう意味なんて無い自己満足にすらならない様な無駄な行為なんだけど、それでもせめて頑丈で丈夫で守ってくれる城壁にしたいんだよ。馬鹿みたいだけどさー。
門を作り道を繋ぎ巡らせていく、住居は集中させて穀物庫と工房の予定地も作っておこう。人が半分以下になってるのに前より大きい村なんて迷惑かもしれないけど、またここに住むんなら豊かになって大きくなって欲しいじゃん?だって再建するんだよ、何もかも失くした人たちが?沢山の人を亡くして家も財産も失くして?普通は気力すらも無くすんだよ、凄いじゃん。
「うん、粉引き工房も設置したからきっと豊かになれるんだよ?壁だってもうオークキングだって止めれるよ?迎撃用の魔石だって壁に埋め込んだから…、魔物避けだって沢山入れたし……今度こそ。今度は…」
もう魔力の残りも少ないんだけど何か忘れている物は無いだろうか?何か見落としてはいないだろうか?本当にこれで大丈夫なのか?本当に本当にこれで良いのか?これでこの村は安全で幸せに暮らせるのか?もう、何も出来る事は無いのか…無いんだよ。何も。
帰る前に村の片隅に造ったモニュメントに向かう。ただの懺悔かもしれないけれどきっと村の人に必要だろう、俺が造ったのでは慰霊碑にも忠魂碑にも忠霊塔にだってならないかも知れないけど、それでもきっと村の人達には必要だろう。墓苑だ。
石碑には名前が彫られて行く。全部、全員亡くなった人たちだ、その人達の名前だ。領館で名簿を貰い一人ずつ刻み込んで行った、ただ彫り続けた。
「ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・・・・」
いつの間にか日が登り始めていた、それでも彫り続けた。
79個の名前を彫り、79人の名前を刻み付けて行った。
79名も逝ってしまったのだから、だから名前しか書けない。
すっかりと明るくなってきたがこれは自分の手で刻まないとならないものだ。
だから一人ずつ名前を彫って行く、一人ずつ刻んでいく。
俺に慰霊の文なんて書けないんだよ?書いちゃいけないんだよ。
だから名前だけを刻んでいった、一文字一文字を刻み込んだ。
そして……(ボクッ!)
後ろから殴られた。気配は分かってたけどなんで殴るんだよ!ちゃんと仕事したじゃん!って言うか夜中に内職の注文して朝にもう来るとか早すぎない!寝る間もなく働いてるんだよ?まったく……
「なんで泣いてるの!何であんたが泣いてるの!何であんたが謝ってるの!あんたが魔物を全滅させたんでしょう!あんたがあそこで魔物を止めたから助かった人たちは街に逃げ込めたんでしょう!全部殺し尽くして仇だって全部取ったでしょう!何であんたが泣いてあんたが謝ってるの!」
まったく気の早い雑貨屋のお姉さんだよ。もう依頼主の村の人達を連れて来ている、何でもう出来てると思うんだよ?普通次の日の朝になんて出来てないんだよ?全く何を考えているんだろう。
「ど-せ造ってると思ってたのよ。だから準備が終わった昨日の夜に依頼したの、だって作り終わったら逃げるんでしょう?村の人達から、生き残りの人達から、逃げようと思ってたんでしょう!皆が何度も何度もお礼に行っても逃げ回って!仕事や住む所まで当てがって、領主様からの高額な見舞金だってあんたでしょう!なにのに何度も何度も逃げ回って!」
お礼とか言われても困るんだよ。魔物を殺しただけで誰も救えてなんかいないのに、だって此処に79人のお墓があるんだよ?もう死んじゃったんだよ、俺だけが兆候を知っていたのに気付かなかった、気にも留めずに、そして森がおかしいって気付いても…同級生と殺し合っていた。
だからお礼とか言われても困るんだよ。罵られるならともかくお礼とか言われても困るんだよ?
「あんたは辺境を!辺境の住民を舐めてるんだよ!誰があんたを憎むの?誰があんたを恨むの?辺境にそんな屑はいないよ!確かに辺境は貧しいし貧弱で防壁すら無いよ、そして武器もなく弱くて身も守れない人達だらけだよ、あんたと違って魔の森と戦う処か魔物すら倒せないよ、貧しくて弱っちい滅びを待つ最果ての辺境よ。でもあんたに舐められるような人間は一人だっていないんだよ!辺境にも!そこで眠る79人にただ一人だっていやしないんだよ!」
何を言ってるのだろう、言葉の意味が理解できない。ただ村の人達にずっと見つめられている。
「そこにいる79人の人はねー、英雄なんだよ。あんたから見れば弱くてただ魔物に殺された犠牲者にしか見えなくってもこの村の英雄たちなんだよ、みんなを逃がす為に農具を握りしめて此処に残って戦って時間稼ぎにもならなくても命かけて戦ったんだよ!それに老人の人達は足手纏いになるって包丁を握りしめて一匹でも道ヅレにするってここに残った英雄なんだよ!馬鹿にすんなあああっ!この人たちは生き残った人たちを助けたあんたに感謝する事は有っても謝って貰うような人は一人だっていないんだよ!辺境はみんな死の覚悟して生きて来たんだ、この辺境にただの一人だってあんたを憎んだりあんたを恨んだりするような人間は一人もいないんだよ!」
だからって死にたかった訳が無いじゃん?だからって生きたかったに違いないんだよ、その英雄たちはもう死んじゃったんだよ。
「だからあんたは、あんただけは胸を張って感謝されなきゃいけないの。みんなを救ったあんたが感謝されなければ其処で眠ってる英雄たちの死が無駄になるんだよ!この人たちは託したんだよ?命を捨てて、きっと助かってくれるって。それを託されて救ったあんたが感謝されなかったらこの人たちの死が報われないんだよ!命を捨てて願った最期の願いを叶えたあんたが謝っちゃいけないでしょう!だからあんたは胸を張って感謝されろ!助けた以上それはあんたの義務で責任だ、だからあんただけは謝ったら駄目なんだよ?謝るようなことは一つもしてないんだから、誰も少年の事を恨んだりして無いんだから。みんなが心からの感謝をしてるんだよ?分かった?」
「「「「ありがとうございました!」」」」
答えようが無い。胸なんか張れないけれど、謝る事も出来なくなってしまった。義務で責任らしいから。
だから慰霊文なんて書けないんだけど、しっかりと石碑に刻んだ。『眠れる戦士の墓、村の英雄に万感の感謝を込めて。』
(プルプル。)
そうだね?うん、村の引き渡しも済んだし帰ろうか?みんなも待ってるだろう。
魔力も使い切ってお腹もすいたし今日は何を作ろうかな?
お読み頂いてありがとうございます。 御感想、ブックマーク登録、評価を頂きありがとうございます。
そして前話の後書きで余計な事を書いてしまいすいません。
急に沢山の評価を頂いていました。催促したみたいになってすいませんでした、そしてありがとうございました。
そして何でクリスマスなのに書き貯まっているかは聞かないで下さい、重ね重ねありがとうございました。




