その84・洗脳勇者
▼その84・洗脳勇者
(※洗脳勇者の剣が振り下ろされる直前、横から別の閃光)
「!」
(※洗脳勇者の剣、Aの頭上からそれを切り裂くほうへ軌道変更)
(※切り裂かれた閃光、千々に避けるようにして天井や床をぶち抜く)
「何者!」
(※振り向く洗脳勇者)
(※その彼方で輝く光)
「待たせたな、友よ!」
(※通路の奥からコートを翻して現れる人間体ヘクトパスカル)
(※場面転換)
(※10式戦車砲塔近く、魔法陣を展開するE王女と暗殺者C。周囲には敵、ひっきりなしに攻撃を仕掛けてくるのを防御魔法で防ぎつつ、ヘクトパスカル召喚のための魔法陣を張り続け、同時に彼女の魔法を解除しようとする敵の魔法使いと装置を破壊する火焔魔法を撃ち込む)
「おのれ、豆鉄砲で撃ちまくりよって! Aのところへゆけぬではないか!」
「殿下、モウ少シゴ辛抱ヲ! 帰リ道ガナクナッテシマイマス!」
(※Cも奪ったHK416を撃ちまくる)
「王女陛下!」
「王女!」
(※発砲しながらBとFが戻ってくる)
「おお、戻ったか!」
「彼と行き違いました! あと2分持たせて欲しいと!」
「無理を言う!」
(※そう言いながら不敵に笑うE王女)
(※場面転換)
「遅くなったな、A。ここはややこしい多重閉鎖空間の上に数的力量が不安定な場所に漂っているのでな、この姿でなければ来られなかった」
(※人間体ヘクトパスカル、片手をかざし、稲妻を集束させる)
「とっととこやつを屠って例の錨とやらを吹き飛ばすぞ」
「いやあの、ヘクトパスカル、この人は洗脳されてて罪は」
「構わぬ、こういう洗脳された敵に、情けをかけると後々になって祟るし、計画も推進出来ぬ、下手に会話をして情が移る前に始末するのがよいのだ! あのビルの書物でも殆どそのパターンで物事をしくじらせているではないか」
「いやまあそうだけど! でも!」
「でも、は無しだ!」
「魔王の手下か、人の姿をした龍とはな! 恥を知れ!」
「お前こそ、勇者のくせにおめおめと洗脳なんかされおって、我が友とこの世界の為に死ね!」
「いや、それ完全に悪役のセリフだから!」
(※閃光がぶつかり合う)
(※思わず死を覚悟して腕で顔の前を覆うA、だが勇者の剣をヘクトパスカルが受け止めている)
「ゆけ! ここは我が引き受けた! E王女の元へ……」
(※物陰から先ほどまでAと戦っていたのと同じ機械兵士たちが登場、構えたランチャーから、グレネードサイズのミサイルを数十発、次々と発射)
「賢しいわ!」
(※飛来するミサイルを素手で次々とはたき落とすヘクトパスカル、爆発するミサイルで周囲がもうもうと煙に)
「ぬ……これは!」
(※顔色を変えるヘクトパスカル)
「ではいくぞドラゴン! 秘剣・龍殺し!」
(※刀身に赤い光を纏わせて斬り込む洗脳勇者、両手でそれを受けるヘクトパスカル)
「ぬう!」
(※A、洗脳勇者に飛びかかる)
「邪魔するな!」
(※片手で吹っ飛ばされるA、壁に身体を打ち付けて絶息しそうになる)
「友よ!」
(※気を取られた瞬間、続けて撃たれたミサイル数十発の爆発とともに吹っ飛ぶヘクトパスカル)
「!」




