その78・復活
▼その78・復活
※これまでのあらすじ
討伐軍を逆に殲滅しようとして大挙して押し寄せた魔王軍は、以外に粘る討伐軍と古龍、ヘクトパスカルの参戦によって、何故か急に敗走を始めました。
(※深夜の荒野)
(※敗走する魔王軍……商事会社ヒノモト22株式会社、戦略作戦部実働部隊)
(※疾走する指揮用装甲車の中、Y崎課長とO山隊長、背後では足の遅い戦車が殿となって捨て身の攻撃をしている))
「Y崎課長、何故逃げるんです! まだやれます!全体の一割も失っていない!」
「O山君、それは早計というモノです、うん。これは作戦を失敗しています、うん」
「どこがですか? 対ドラゴン用ミサイルを使用して、あの龍を倒せばあとは一気じゃないですか!」
「あのミサイルは高価です、うん。確実に倒せるときでなければ使えません、うん」
「何出し渋っているんです!」
「あの敵の動き、あなたはどうみますか、うん?」
「確かに、統率は取れていましたが我々のほうが遙かに数で勝っています!」
「その通り、装備も戦略も我々のほうが上です、うん……しかし本当ですかね?」
「?」
「私はね、うん。直感を大事にするんです、うん。あの軍勢は指揮官を失った軍の動きをしていませんでした、うん。特に大きなカリスマを失いながら、何故あんな動きが出来るのか」
「前もって指示でも出していたのかも知れません」
「だとしても、あまりにも鮮やかすぎます、うん」
「でも、間違いなくあの勇者はE王女を殺したんでしょう?」
「それは間違いありません。私は彼の脳とリンクして一部始終を見ていました。ごまかしは有り得ない。頭を45口径弾で撃ち抜かれて脳漿が飛び散るのをはっきり目撃しましたし、彼もその瞬間幻覚などにかかっているような脳波などの兆候は皆無でした。同行させたBもFも確かに死にましたしね」
「では一体何だと言うんです!」
「私の判断が間違っているかどうかは、帰社してから考えましょう……転移用意!」
(※通信士、背後で『転移用意!』と復唱。各車両の中、頑丈な小型金庫に保管されているスマホ型魔導具が取り出され、カーナビスロット等にセット、魔法陣が光る)
「転移用意完了!」
「転移開始!」
(※それぞれの車両、進行方向の空間が歪み始める)
「転移準備でき次第、随時突入せよ」
「了解、各員随時突入! 各員随時突入!」
(※突入していく車両)
(※暗闇)
【動いたぞ、我が友よ】
「う……うー……」
「大丈夫? もう、あんたったらギリギリまで繋がってるから……」
「大丈夫、なんとかなる……奴らの『道』は見えた?」
【どうやら無事に捕まえたようだ。行くのか?】
「うん、行かなくちゃ……こっちから『のろし』を挙げるからすぐに来て」
【良かろう、今度は書泉を奪うぞ!】
(※商事会社ヒノモト22株式会社、作戦本部基地)
(※次々と時空の歪みを突き抜けて車両が到着)
「画像分析! 戦況班、録画したカメラの画像を直ちに取り出して分析して下さい、再生出来るところまでで結構です、うん!」
「は!」
(※腕組みし、こめかみに指を当てるようなポーズを取るY崎課長、メガネが光る)
「おかしい……やっぱり、おかしい」
「なにがですか?」
「我々と対峙したあの古龍ですが、最初に出現したとき……いや、それ以外の時も、微妙に魔法陣とそこから出力される魔法の作用点がズレている時があります。私の記憶にもある」
「ということはどういうことなんですか?」
「あれは幻影、あるいは何らかの形で龍の姿を纏った偽物である可能性があるということです」
「本体じゃない?」
「ああ、でも質量は存在する……でも、着地時の地面のへこみが小さい……質量が半分以下……しまった!」
(※血相をかえたY崎課長、ヘッドセットを握りしめるようにして怒鳴る)
「転移中止、転移中止! 罠です、これは罠だ、うん! 罠です、中止、転移中止!」
「無理です、もう全員突入している!」
「しまった……迎撃態勢を! 早く!」
「??」
「龍が来ます! でなければ軍勢が来ます!」
(※銃声。45口径の連射と、MK46の連なったもの)
「!」
(※外へ飛び出すY崎課長、O山隊長)
「うわあああ!」
(※撃ち倒される装甲車の人員)
(※、がごん、と床のコンクリートを粉砕しながら時空の歪みから飛びだしてきて擱座する履帯部分を失った10式戦車。その上に人影)
「借りを返しに来ました」
「君は……なんで生きているんです!」
(※やややつれた顔のA、セマーリンを構えている)
「教えて……あげませんよ!」
「ならば結構!」
(※Y崎課長、腕からレーザー砲)
(※それより早くAがセマーリンが連射)
(※Y崎課長の頭にセマーリンの銃弾。倒れるのへMK46の銃弾でズタズタに)
(※A、Y崎課長の残骸を見る)
「これで終わりじゃないですよ、課長さん」
「全員降伏しろ!」
(※F叫ぶ。隣でB、硝煙たなびくMK46を構えている)
「でなきゃこの辺一帯全部、この戦車の主砲で吹き飛ばすぞ!」
(※10式戦車の主砲が動く)
「構うな、撃て!」
(※O山隊長の言葉に構えるよりも早く、砲塔が動いて大砲が発射、周囲を吹き飛ばす)
(※魔法障壁が展開され、Aたちを守る)
(※天井の一部と壁が崩れ、通路が丸見えになる。非常サイレン)
「Aさん、CさんとE王女にもう二発ぶっ放すように言ってください。ここから敵の心臓部までそれでまっしぐらに行けます」
「王女様、Cさん、あと2発撃ってください!」
(※そのまま2発砲弾が発射される。通路の奥、降りはじめた隔壁を数枚まとめて吹き飛ばす)
「よし、これで奥まで進める!」
(※Aたちの周囲から魔法の障壁が消える。F、背負った荷物からまとめてスクロールをBとAに放り投げる)
「ここからは自動展開の魔法障壁スクロールは貴重だから、大事に使えよ!」
(※ハッチが開いて中から、マント姿の暗殺者CとE王女が出てくる)
「もう3発ぐらい撃たせよ!」
「王女様、あんまり撃ちまくると余計なところまで壊れるから、今は我慢してください」
「なに? では後で撃たせてくれるか?」
「状況によります」
「よしよし、おかしな機械で自分自身の生き傀儡を動かす、気味の悪い体験を我慢した甲斐があるというものじゃ!」
「結構楽しんでたよーな」
「気にするな!」
(E王女、ハッチから飛び出すと魔剣を引き抜く)
「さあ、参ろうぞ!」
「いえ、お留守番お願いしますって! 突入するのは僕とBとFさんで……Cさん、陛下を頼みます」
「……心得タ(※何故か真っ赤)」
「ぬう、臨機応変じゃ、妾もそなたと共に行く!」
「駄目ですって、ヘクトパスカルを呼び寄せる『のろし』をお願いします。約束しましたよね?」
「ぬう……仕方ない、特別じゃぞ」
(※ぷうっと頬を膨らませてE王女)
「じゃ、行こうか……借りは一〇〇万倍にして返さないとね!」
「ええ、あんなキッツイ真似されて黙ってられるもんですか!」
「とにかく、これで終わらせちまおうぜ!」
(※走り出すAとB、そしてF)




