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その60・次は妾の番なのじゃ

▼その60・次は妾の番なのじゃ

(※三日後、ラジオ会館から出てくるヘクトパスカル人間体とA。ヘクトパスカルは両手に荷物)

「いやあ、堪能した、堪能した」

「凄かったねえ……」

「コンビニの食事というものも興味深いな、あれは」

「久々にファミチキ美味しかったぁ……」

「それにしても『エンドゲーム』の凄さよ!」

「だねえ!」

「さらにそれが『スパイダーマン・ファー・フロム・ホーム』でああいう形になろうとは思わなんだぞ!」

「キャップと社長がいなくなっちゃうなんて……」

「であるな、であるな!」

「なんかお二人とも堪能しまくったようですな」

「おお、もちろんだとも! このビルを我が巣に持って帰りたいぐらいであるぞ!」

「どうせなら書泉ブックタワーと虎の穴も持って帰ってくるべきでしたね」

「次襲撃することが出来れば必ず!」

「文化の簒奪者(さんだつしゃ)かー。ま、僕は盗賊だからそれでいいのか」

「いやいや、そこは疑問を持ちましょうよ、Aさん」

「ですかねえ?」

「なんか前世の文化に触れて色々戻ってません?」

「そーですかねー?」

「とりあえず、これだけ今回は貰っていくぞ」

「はいはい。でもドラゴンがドラゴンのミニチュアなんて作れるの?」

「ドラゴンの細工仕事をバカにしたものではないぞ。それにこの水性塗料……そうそう、このシタデルとファレホの塗料があれば! あとこの細い筆!」

「まあ、模型製作のハウツー本と塗装のハウツー本もあるから大丈夫かな?」

「まあ、見ておれ、今度作った奴を持って来るぞ」

「で、電源はどれくらい持つの?」

「我が死ぬまでは持つであろう……まああと千年は」


(※ヘクトパスカル人間体、指先で周囲に魔法陣を描く)


「ではさらばだ!」


(※ヘクトパスカル人間体、荷物を持ったまま魔法陣の中に飛びこむ)

(※空中に巨大な魔法陣が登場、そこから元の姿、古龍となったヘクトパスカルが出現、空に舞い上がる)


【来週また来るぞー!】


(※あっという間に空の彼方に去るヘクトパスカル)


「またねー!」


(※手を振るA)


「もうすっかり親友ですな」

「そうですね……最初であった時はどうなるかと思いましたけど、いい(ひと)でよかった」

「まあ、それはそうなんですが」


(※Aの背後からBとC、和気藹々)


「……やっぱりそうだよねー!」

「私モ、ソレガべすとなかっぷりんぐダト思う」


(※BもCも両手に大量の紙袋)


「あー、お二人さん、楽しかった?」

「うん、もちろん! あ、A、これ貰っていってもいい?」

「まあ、いいけど……どうするの?」

「家に置いておきたいの! まあ、たまにしか帰れないけど……」

「Cさんも?」

「…………(※真っ赤になって何度も頷くC)」

「……まあ、文字通り奪ってきたものだから、そこはいいけど……全部持って行っちゃ、駄目だよ?」

「そこは弁えてますって!」

「…………(※真っ赤になって何度も頷くC)」

「これ以上は持ち出し禁止、いい?」


(※コクコクと頷くBとC)


「帰ルベキ場所ニ夢ガアル……アリガタイ、感謝スル」

「そこまで気にしなくても」

「ダガ、仕事ハ仕事。ココヲ去ッタ後ハ、オ前タチヲ全力アゲテ殺ス」

「シビアなビジネスキャラですなー」

「僕の命がかかってるんで茶化さないで下さい、ナビさん」

「そうですねわははは」

「…………」


(※C、Bと硬い握手)


「デハ、サラバダ、友ヨ。次ニココ以外ノ場所デ会ウ時ハ、死ヲ覚悟セヨ」

「悲しいけど、仕方ないよね……でもここでまた会えたらその時は」

「ソノ時ハ!」


(※C、かき消える)


「ところでB、Cさんと何の話で盛り上がってたの?」

「あんたには秘密」

「えー、幼なじみだろ?」

「これは女の友情に関わる話なの!」

「なんかふこーへーだ」

「まあまあ、いいじゃないですか。それに男が知ると色々人生怖い思いをすることになりますよ……ところで『ゴーン・ガール』って映画、観たことあります?」

「いいえ。なんかその話の筋からすると生涯観ないほうが心の平和には良さそうですね」


(※遠くから馬の足音&E王女の姿)


「A! どうであったか!」

「あ、E王女様!」

「古龍と共に入ったと聞いたが……それほどに危険な書物だらけなのか?」

「まあ、危険というか……ねえ? B?」

「えーとはい、危険ですE王女様」

「ふむ……ところで、お主、全員としたそうじゃな?」

「え?」


(※E王女、馬から下りてAに近づき、親指が人差し指と中指から出るような握り拳を作る)


「これじゃ、これ!」

「い、いや王女様そんなはしたない……(※A、真っ赤)」

「Bはともかく、FともHともしたというではないか!」

「Hさんご存知なんですか?」

「砂漠エルフ最大の集落の族長だぞ? いわば砂漠の大国の女王だ」

「はあ……」

「…………なのに、妾にはまだか?」

「あ、いえあのその……」

「今日はどうじゃ?」

「え?」

「正直、その話を聞いてから、お主が帰ってきてからどうしてくれようとずっと思っておった。特に……Fの夢見心地の目を見ておったら、本当に、本当に……」

「いやあの、あ、愛人の話ってマジなんですか?」

「当たり前じゃ、妾は己の貞節をそのような冗談に賭ける事は決してない」

「本気……ですか?」

「マジじゃ。大マジじゃ。妾を救い、敵を打ち倒す強きものよ、お主が王族であればそのまま結婚してやりたいほどじゃ」


(※真っ直ぐAを見つめるE王女)


「…………」


(※真顔のE王女)


「妾は、お主に惚れておる。あの時救い出されたその日から。ずっとじゃ。20…………ン年守ってきた貞節、せいぜい経略に使ってやろうと思い定めつつ、どこかで夢見ておったことが…………その……」

「えーっとあの……つまり……」

「(※小声&早口で)妾を助けてくれる白馬に乗った美少年に処女を捧げてめくるめく初体験をしたいという子供の頃からの願いじゃ! 愚か者!」

「!」

「か、かようなことを女の口から言わせるでないわ!」

「…………」

「で、どうじゃ?」

「あの…………えっと……」

「どうじゃ?」

「はい…………」

「よし!」

(※E王女、満面の笑み、そのままAをハグ)

(※E王女の胸にAの顔埋まる)

「お、王女様胸…………胸むむむ」

「うい奴、愛しい奴め……うんうん」

「ん~!ん~! ん~! ん~! ん~! ん~! ん~!!(※ジタバタ)」

「今夜は寝かせぬぞ…………いや、寝かせてくれるなよ? お主が(ねや)では龍もかくやの英傑であることは聞いておるぞ? 介添え役にはB、お主も頼むぞ?」

「え? あ、いえあの?」

「大丈夫。Fも混ぜる」

「は、はい…………で、でも王女様」

「なんじゃ?」

「Aが…………」

「ん?」


「…………きゅう(※窒息して気絶)」



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