その58・かりそめの帰還
すみません、諸事情あって一日すっ飛ばしてしまいました(汗)
▼その58・かりそめの帰還
(※盗賊都市近く、地面に魔法で広い穴が開く。ゆっくりと空中から地下三階まで抉る形で移送されてきた秋葉原ラジオ会館のビルが鎮座する)
(その側に古龍ヘクトパスカル、さらに作業服姿のAとB)
「ヘクトパスカル! そっちの右にもう10度ぐらい傾けて!」
(※A、その側で穴あき硬貨を糸で結び、棒に垂らしたもので垂直を計りながら声をかける)
【うむ、こうか?】
「よし、ジャスト! ピッタリ!」
【では地面に固定するぞ】
(※ラジオ会館の敷地周辺の床石部分と地面が固着化する)
【土台の下、深さ二キロほどは広範囲で石化させた。傾くことはもうあるまい】
「ありがとう、ヘクトパスカル」
【あとは電源が必要だな】
(※馬に乗ってE王女、女傭兵Fが来る)
(※E王女、馬を下りてラジオ会館を見上げるAに近づく)
「八階建ての建物か……良く持ってこられたな?」
「まあ、それはヘクトパスカルのお陰なんですけれども」
「さすが古龍殿だ」
【お褒めにあずかり恐悦である、王女よ】
「で、なんでこんな建物を?」
「敵が別の世界から来たのは間違いありません。でも本拠地のほうを殲滅するのは一般市民がいるんで難しそうだったんでせめて情報収集だけでも、と……」
「しかしこんな要塞を丸ごと一個か……どんな武器が納められてる?」
「武器は殆どないです。多分最上階にエアガンがある程度で。でもそれ以上のものが詰まってます」
「というと?」
「知識、情報、娯楽……人を殺さない破壊兵器が山ほど」
「?」
「とにかく、ここに危険がないかどうか3日ぐらいかけて調べたいので人払いをお願いします」
(※ナビさん、Aの横に現れる)
「さて、スキャニングを終了しました。人はいないし、電源に関しては先ほどヘクトパスカルさんが提案した方法で大丈夫だと思いますよ」
「ありがとうございます、ナビさん」
「いえいえ」
「結局僕の生きていた時代とほぼ同じ娯楽、ってことですか?」「
「そうですね、この中に入っているのは、というよりあの世界自体は、あなたが生きていた時代から五年未来で、少しズレてます」
「どれくらい?」
「アイアンマン2でウォーマシンの中の人がドン・チードルじゃなくてテレンス・ハワードのまんま、ってぐらいのレベルですね」
「おお、IF体験だ!」
【なるほど】
(※夕方)
(※ヘクトパスカルとAだけが残っている)
【では破損部分の修復は終わったし、電源の魔法式も出来た。発電を開始するぞ】
「うん!」
【では発動させるぞ……安定電源!」
(※ヘクトパスカルの頭上にプラズマの塊が出現、三つに分かれる)
(※三つに分かれたプラズマの塊、圧縮され、魔法陣から映えてくる透明な管の中に入る)
(※透明な管の上下に金属の蓋。そのままラジオ会館の屋上に舞い上がり、着地)
ぎゅうん……
(※真っ暗な中に光り輝き始めるラジオ会館、軽快な音楽が流れ始め外部モニターには新作アニメのPVが流れ始める)
「ああ……」
(※目を大きく見開き歓喜の表情のA)
「……ラジ館だ……」
(※涙を流しながら、中に入るA)
(※一階ロビー。左手にコンビニ真正面にエスカレーター、右手にエレベーター)
「アキハバラだ……僕は……僕は……」
(※Aの頬を涙が伝う)
(※Aの記憶にあるアキハバラの一人称視点)
(※電気街口の駅から出て見上げるラジオ会館から中へ入る。人でごった返す休日のラジオ会館の風景)
(※そして、今の人っ子一人いないラジオ会館の風景)
「……」
(※A、その場に膝を突く)
「帰ってきた……帰ってきたんだ……」
(※A、俯いて肩を震わせる。床にポタポタと落ちる涙)
「帰って……来た……」




