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その57・管理職対転生勇者

▼その57・管理職対転生勇者


(※銃声、Y崎課長の指が吹き飛ぶ)


「Cさん!」


(※M4を構えたAが突入。後ろからB、おっかなびっくりで閃光手榴弾を投げる)


「この、このこのこのっ!」


(※Y崎課長へA、M4を乱射。銃弾食らってひっくり返るY崎課長。A、Cの襟首をつかんで撤収)


「これでっ!」


(※B、おっかなびっくり閃光手榴弾を放り投げる)


「逃げる!」


(※爆発と閃光)

(※A、Cを担いで全力疾走、さらにB閃光手榴弾を投げるので爆発と閃光でだいぶ距離が稼げる。さらに煙幕弾)

(※煙の中を疾走するAたち)

「とりあえず、どこかへ隠れよう!」


「いや、無駄ですよ、うん」


(※走ってくるY崎課長、身体中銃弾のあと、そこからメカが見える)


「さ、サイボーグ? 義体?」

「私は会社に全てを捧げているのです。うん」

「き‥‥‥‥企業戦士Yamazaki!」

「ほう、知っているんですか、通ですね、うん、よろしい」


(※疾走するY崎課長、メガネのレンズに光が収束される)


「!」


(※急ブレーキをかけるA、メガネからレーザー、床から壁を一閃、爆発)


「おやおや、壁の中の配管を破壊してしまったようです、うん。私としたことが」

「いくらなんでもでたらめが過ぎる!」

「今の何あれ? 竜の口から出る閃光?」

「同じ様なもんだと思う」


(※AたちとY崎課長、巨大な広間で対峙。天井が高く吹き抜け状態)


「愛社精神と言うのはそういうものです、うん」

「んな話聞いたこともない!」

「あなたたち異世界人がまずいのはそこです、うん。滅私奉公、大義のためにすべてを犠牲にする覚悟がないのです、うん。そこがあなたたちの最大の弱み。我々のように、国に国家に他の人たちの繁栄のために全てを捧げる覚悟、勇気、心意気、それらがあるからこそ、われわれは最強なのです、うん」

「一体、この世界で何をするつもりなんですかあなた方!」

「19世紀までのイギリスと同じことです、うん。襲撃と略奪。ただし、かつての過ちである分割統治などいたしません、うん。我々はあなたたちを攻め滅ぼし奪うだけです。終わったら二度と戻らないシンプルでしょう?」

「襲撃と略奪‥‥‥‥?」

「異例の不景気から脱却するためには、わが国は資源が足りず、人が足りず、そこはいかんともしがたいので他所(よそ)から持ってくることにしたというだけです、うん」

「魔王って結局… 」

「あなた方はわが社を、この世界を征服するものかなにか、そう思ってらっしゃるようですが、われわれは魔法とかの技術に関してはあまり興味がないのです、うん。これまでの世界によって既に我々は独自の魔法システムを持っていますから、うん。それよりも鉱物資源人的資源の供給ですね。あなたたちには脅威と技術をわれわれは労働力と資本を得る。そのためにはE王女のような人物は、邪魔です、うん」

「待って、魔王ってあなたのことじゃないんですか?」

「いいえ、私は単なる中間管理職です、うん。あなたたちが魔王と呼ぶものは、わがヒノモト22株式会社戦略企画部であります、うん」

「ヒノモト22株式会社? 戦略企画部?」

「その通りです。わが社は多次元世界における、資材資源、人材育成と収集を主に活動とするべく国家より委託された広告代理店をメインとする一大コングロマリットであります、うん。今回の第43次収奪計画は、あなたのような人間のおかげでなかなかにうまく進んでおりません、うん。こんな手間ひまのかかる異世界は初めてなので、あなたたちのような人間から情報を得ようと思ったのですが、どうやら、間違いだったようです。特にあなた、あなたは一体何者ですか?」

「!」

「あなたのような方は、初めてです、うん。タイムトラベラーなのかと最初思いましたが、頭の中に格納されている記憶は二重構造になっていて、うち1つは21世紀初頭におけるわが国の文化事情と構造そのものという、常識ではやや推し量るのが難しい存在です、うん」

「‥‥‥‥」

「あなたのような人物はイレギュラーが過ぎます、うん」


(※Y崎課長、右手でAを指差すようにする。背広の袖が破けて腕の中から機関銃らしきものが四挺展開、さらにレーザー砲、小型ミサイルも出る)


「不確定要素はなるべく排除した方がビジネスのためには重要。E王女の片腕ともおぼしい指揮能力。行動力、羨ましいほどの精力、そしてドラゴンを従わせるセールストークの能力! あなたが味方であれば私も残業時間が半分以下になって他の業務への集中も可能になるのですが、、うん。適当ならば潰すしかありません、うん」

「つまり、ここから生かして外に出してくれる、っていう事はないってことですね?」


(※A、じりじりとY崎課長との距離を離そうとする。だがジリジリとY崎課長の照準、Aを追う)


「当然ではないですか、うん。捕虜に逃げられてしまえば管理者の能力を疑われます。まして、この前無能な部下2人が捕虜になったばかりですからね。これ以上考査を下げてもらうわけにいかないのです、うん」

「……」


(※A、険しい表情になる)


「そんなことのために人2人殺しちゃったんですか?」

「われわれはただのビジネスをしているわけでは無いのです。侵略と略奪と言う大きなビジネスをしています当然手が綺麗であるわけはない。生殺与奪も業務のうちです」

「‥‥‥‥」

「それにあなたは今私を撃った」

「!」

「私が普通の人間であれば即死ですよね? うん、つまり同じことです。我々は殺し合いをしているのです、うん。生き残るためにはリスクを下げる、リスクを下げるためには味方を殺しても仕方がないことです。これを大義といい大局と言うのです、うん」

「‥‥‥‥生まれて初めて、憎悪で人が殺せそうです」

「憎悪に意味はありません、うん。それは恐怖の裏返しです。さてそろそろ部下も来たことですしあなたたちには死んでいただくことにいたしましょう、うん」

「B、Cさんを頼む」

「A。どうするの?」

「戦う」


(※A、走る。Y崎課長の銃撃開始、A、着弾位置が分かるかのように動く)


(やっぱり!)


(※A、ミサイルを避ける)


(ここまで来たらスキル発動ぐらいあると思ってたけど! なんとか!)


(※爆発と閃光、A、上手くそれにのって飛んだり、壁を蹴って方向転換をしたり)


「おお! 何故だ、何故こちらの予測を超える!」

「そりゃこっちも死にたくないんで!」


(※A、M4を撃つが、Y崎課長、腕から展開するエネルギー場で受ける)


「では肉弾戦でお相手をしましょう、うん!」

(※Y崎課長、両手からレーザーブレード)

「わわっ!」


(※かろうじて避けるA、持っていたM4が真っ二つ)


「いつまでも逃げられるものではありません。私は疲労を超越した存在ですが、あなたは肉体の中に閉じ込められた魂、疲弊は免れ得ません!」

「この!」


(※B、奪った拳銃を構えて撃つが、Y崎課長腕で弾き、メガネレーザー)


「きゃあ!」


(※B、一瞬差で避けるが拳銃が切断)


「B! 動くな!」


(※避け続けるA、だが、やがて足がもつれる。倒れた所へレーザーブレードを振りかざそうとするY崎課長)


「あー、くそ、だめか……」

「終わりですね君」

「最後に……1つだけ聞きたいんですけども課長さん。僕らがつかまってどれくらいの時間が経っていますか?」

「そうですね、大体2時間位でしょうか」

「へえ‥‥‥‥じゃあ今は3時間ぐらい経ってます?」

邯鄲(かんたん)の夢と言う言葉があるでしょ? あれと同じです、うん。あのままずっと夢を見続けていればよかったものを。なんで満足しなかったんです?」

「まぁ、早い話がシナリオがクソだったってことです」

「最後の言葉がそれと言うのはずいぶんと、格好悪いですが、いいのですかね?」

「いえ最後の言葉じゃないです。単なる時間稼ぎなんで」

「?」

「僕をここまで運んできた竜は、ただのドラゴンじゃありません。古龍(エルダードラゴン)、つまり知恵もあれば勇気もあり、道義心や友情もあるそして強力な生き物です。1日2日経ったのならともかく、2、3時間ぐらいだったら多分まだ探してます……僕の事を」

「‥‥‥‥!」

「彼がそうだということに気づかなかったんですね?」

「ハッタリでは?」

「いいえ。実はもう、分かってます、彼‥‥‥‥ヘクトパスカルには」

(※破壊の振動、兵士達がざわめく)


「ほら来た」


(※閃光が走り、天井が切り落とされる)


「!」

【我が友よ、無事か?!】

(※ヘクトパスカルの思念波で倒れていく兵士、Y崎課長も倒れそうになる)

「ぬ!」

「大丈夫だよ、ヘクトパスカル!」

「に、逃すわけには」

(※Y崎課長の腕上がり、眼鏡に再び光収束するが、額のど真ん中に名刺が突き立つ)

「オ返シ……ダ……」

(※更にもう一枚、名刺が尽きたってY崎課長のメガネが左右に切断される)

(※荒い息をつくC、そのまま再び気絶)

「Cさん!」

(※AとB、Cの脈を取る、ふたり顔を見合わせて安堵の表情)

「さすが暗殺者ですな、あのY崎さんのほうはもうダメです」

「義体だから死にませんよね?ナビさん」

(※A、光が差し込む中、舞い降りるヘクトパスカル、隣にナビが復活)

「たぶん。大丈夫でしょう。脳は見当たりませんからあのボディは遠隔操作でしょうし‥‥‥‥にしてもいやお久しぶりです。お会いできて嬉しいです」

「途切れ途切れにナビさんと繋がってたんで、必ずヘクトパスカルもくると思ってました!」

【さすが我が友、我を信じておったか】

「勿論! 友だちを見捨てるような竜だとは思ってない!」

【では帰ろう、ついでにこのいけすかぬトウキョーそっくりな街を焼き払っても良いか?】

「それはダメ、まだこの街の人が全員悪人だと決まったわけじゃないから。そのかわり、ビル一つ適当なのを秋葉原で引っこ抜いて持ってける?」


【ふむ‥‥‥‥? そうか、お主の考えがわかったぞ? よかろう、やろう!】


(※飛び立つヘクトパスカル、秋葉原上空へ)


【人間共、これよりこのビルを持ち去る! 10分待つから逃れよ!】


(※悲鳴をあげて逃げ出す人々)


「どう? みんな避難した?」

【どうやらもう人はおらぬようだ…………気配は無い】

「ではやっちゃって!」


(※ヘクトパスカル口からレーザー、秋葉原のラジオ会館の周辺を切り取る)


【では持ち帰ろうぞ! 文明と文化を!】


(※ラジオ会館、魔法で包まれ、飛び立つヘクトパスカルとともに飛翔)


【ふははははは! アキハバラを貰っていくぞ!】

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