その54・呉越同舟闇の中
▼その54・呉越同舟闇の中
「ぷあっ! なにこれ水?」
「B! 腕掴んで!」
「え? A? どうしたのよ? ここどこ?」
「多分東京の何処か」
「トキョー? 魔王の都ってそんな名前なの?」
「話は後、ここから出ないと!」
「あ、え? あたし裸? きゃああ!」
「こ、こコレとりあえず身体拭いて! 羽織って!(※真っ赤)」
(※B、バスタオルを身体に巻いて何とか機械的なカプセル装置から出る)
「あんた、何その格好?」
(※A、ダブダブの作業用ツナギ姿)
「服がコレしかないの、はい!」
「あたしもコレ着るの?」
「仕方ないでしょ、他に何もないんだから」
「にしても何ここ、凄く冷たい感じ」
(※AとBがいる所は広大な真っ黒い壁と床の部屋、大理石のよう。天井全体がLEDパネル。Aが入っていたカプセル装置、Bが出たカプセル装置ともうふたつ同じものがある)
「こっちは……誰もいない。B、そっちの中見て、誰かいる?」
「女の人が入ってるみたい」
「了解」
(※A、赤い大きなボタンをぶん殴るようにして叩く。警告音と共にカプセルが開く、中の水溶液が溢れる)
「あれ、このおっぱいと腹筋はどこかで見た……あたっ!」
「何見てるの、あたしが身体拭いた、このふわふわの布、アレ持って来てよ!」
「はいはい」
「……」
「起きて、あなたも魔王に捕まったんでしょ? 逃げるわよ!」
「ウウ……ココハ……どこ……ダ?」
「はいこれ」
「身体拭いて! 服は変なのだけどあるから!」
「多分、誰かそろそろ来るから急いで」
「……オ前ハ!」
「……お知り合いでしたっけ? ナビさん、憶えある?」
「……す……ま……せん。ここはせつぞ……く……て」
「ああ、そうかここはナビさんと繋がりにくい場所なんだっけ」
「…………」
「さあ、身体拭いたらこれ着て!」
「ワカッタ……」
「そろそろ誰か来ると思う、隠れて!」
「…………」
(※女、バスタオルを巻き付けたままドアの横に貼り付く。ドアが開き、兵士四人登場)
「何事だ!」
(※入ってきた兵士の背後にするりと回り込み、首を一瞬でへし折る女。バスタオルが落ちる)
「な……」
(※倒れる兵士の腰からナイフを抜いて次々と残り三人の首を刺し、喉を切り、額を刺す女)
「あ……」
(※女の下腹部にタトゥー)
「あのタトゥーは……」
「まさか暗殺者C!」
「気付イタナ、オ前タチ」
(※血まみれのナイフを持ったままたつ全裸の女暗殺者C)
「そりゃまあ、その胸と見事な腹筋とタトゥーに褐色な肌は、僕にとってドストライク……もとい、ファーストインプレション高すぎですから」
「…………死ネ」
(※襲いかかろうとするC。太腿が後ろから撃ち抜かれる)
「ヌ……」
(※次々と背後から銃弾、AとB、カプセルの陰に隠れる)
(※バランスを崩しながら弾を避けて床に転がるC、盾にした死体に銃弾が撃ち込まれる)
「!」
(※A,スライディングして死体の側のM4ライフルを取り、反撃)
「B、その人の手当てして!」
(※思わぬ反撃で怯む兵士)
「この! 異世界人を舐めるなよ!」
(※A,次々と撃ちまくる、何人かが肩や手足に被弾、廊下の奥へ下がる)
「よし」
(※A、死体の腰のパウチから赤十字マークの入った包帯等の救急キットを取り出す)
「え……止血剤に消毒液ゼリー入り液体包帯チューブ? なにこれ? えーと有効期限が2055年? まあいいや、B、これその人の傷に塗って!」
「わかった! って、え、なに? これ塗った側から乾いて包帯みたいになっちゃうけど!」
「たぶん、それでいいんだと思う」
「…………」
「で、どうするの、これから?」
「奥へ進むしかない。B、死体から銃を取って、その人にも渡して」
「正気?」
「ああ、この中でその人が一番戦闘経験が高い」
「…………オ前ハ、ばかカ?」
「ここで僕らを殺すほど君がバカだとは思わないだけだよ」
(※A,死体から予備弾倉とジャケットを回収、着用する)
「血まみれなのは気味悪いけど、これつけて。多少は弾よけになるから」
「う、うん……」
「……」
「いやあの、暗殺者さん、せめて下は何か履いて欲しいんですが」
「要ラヌ、死ヌ時ハ死ヌ」
「そう言われても……その、男なんで、僕」
「……御大事」
「え?」
「ナ、ナンデモ、ナイ」
(※B、死体のズボンを脱がせて着用する)




