その47・戦雲戦乱、嵐の中を(2)
▼その47・戦雲戦乱、嵐の中を(2)
(※陣から後方10キロ。爆撃されたときの大穴)
「……時間が来ました(B、襟元のボタン型時計を見ながら)」
「よし、ではゆこう」
(※土を敷いた布の下からE王女とB、僅かな近衛騎士団たちが出てくる)
「戦馬召喚!」
(※魔法使いたちが空中に陣を描くと中から輝く半透明の馬たちが現れる)
「B、馬には乗れるな?」
「は、はいっ! 実技は全部合格を貰いました!」
「では妾の側におれ。近衛騎士団長I!」
「はい!」
「妾とこの子を頼むぞ」
「はっ!」
「では参る!」
(※地面を轟かせて失踪する半透明の魔力の塊の馬、さらにそれにまたがるE王女たち)
(※敵陣地)
「なに? 敵が突撃しながらこっちの陣地手前でふたつに分かれた?」
「しまった、囲まれるぞ! ヘリで飛ばせる奴はないのか?」
「どれも燃料補給がまだ終わりません!」
「包囲網を固めろ! 味方のほうも呼び戻せ!」
(※移動するAたち)
「第七部隊を東へ! 第五部隊から戦場を離脱させます! 今です! 真っ直ぐ西へ走って下さい!」
「はいっ! 命令復唱……」
「ナビさん、次はどこが手薄になります?」
「ちょっと待って下さいね……今ミノタウロスの弩弓部隊が南方の丘から射撃準備を行ってます、どうやら左翼の第三、第二部隊を狙うつもりみたいですね」
「第三、第二部隊に通達、南方の丘よりミノタウロス弩弓の射撃! 備えろー!」
「りょ、了解です! 命令復唱!」
「馬の扱いも慣れてきましたね」
「王女様の馬だけあって素直で優しいんだと思います……次は何か来ますか?」
「敵の陣地の中の戦闘ヘリで、燃料補給を終えた何機かに弾薬補給は後回しで離陸命令が出てますね、おそらく我々が本陣に斬り込んでくると思い込んでるようで……無線の内容からするとあと五分です」
「有り難い、武装無しなら味方が驚かないように言い聞かせて何とか出来ます!」
「でも背後の敵が段々集結してきてますよ?」
「そこに関してはE王女を逃がすためですから、仕方ないです」
「あら、随分冷静ですね」
「た、多分スキル発動してるから冷静なんだと思います。これが終わったらどうなることか……きっと落ち込んだりするんだろーなーとは」
「妙に冷静な分だけ、ホントにそうなったときの落ち込みようが想像出来そうで怖いですな。自殺とかダメですからね」
「ご心配ありがとうございます」
「私の職歴に汚点が出来ますから」
「ひどいなあ」
(※敵陣地)
「くそ包囲陣だと思ったら、逃走のために散ってるんだ、これは!」
「報告、王女は幻影! 本物は30キロ離れた地点を移動していくのを偵察ドローンが確認!」
「くそ、どういう理屈だ! こっちが手薄になってる所を狙って逃げ出しやがる。グルグル回りながらの応戦だからうっかり手が出せねえ」
「うちの無能な作戦立案部とあの王女を取り替えて欲しいですな」
「思考を読まれてるかもしれん。うちの魔法屋に思考防御の魔法障壁を強化するように言え!」
「それだと攻撃用魔法の構築が送れますが」
「諦める! そもそもあの王女相手に……」
「Y崎課長から入電!」
「無線機は壊れた! 応答するな!」
「はい!」
「この期に及んであのクソ野郎の声を聞いたら血管が切れる!」




