その45:撤退戦
▼その45:撤退戦
(※銃声と爆発、大混乱の中、A、爆発で開いた穴の中に飛びこむ)
「……戻った途端、ろくに再武装も出来ないまま3秒足らずでドンパチってひどくないですか?」
「すみません、こちらで出来るのは状況の把握だけで、未来予測は無理でして……」
「大体僕、盗賊だから戦闘には不向きなのに……」
「適材適所と行かないのが戦場の厳しい所です」
「それにしても大軍だ……1万ぐらいいそう」
「正確には敵味方それぞれ3400と5千ですね。王女様の軍は魔法使いを大勢補充したんでまだ拮抗してますが、相手は武装ヘリ二十機に……」
(※低空で侵入してくるドローンが爆撃、思わず頭を下げるA)
「ドローンがどう見ても100機ぐらいいますよ! ……ああもう、さっきの爆撃でBたち何処に行っちゃったんだろ?」
「えーと、この先100メートル先ですね。200人ぐらいに囲まれてます」
「それ早く言って!」
「あー、今飛び出すとモロに……」
(がるるる)
「召喚されたサーベルタイガーの軍勢に会いますよ……ってもう遅いですが」
「うわあああ!」
(がー!)
「なんでこうなるのー!」
「はい、久々にナビゲートしましょう。そこ左に飛んで下さい。転がってー、右手伸ばして下さい、そこに傭兵の落としたグレネードランチャーが装填済みであります。右下に向けて撃ってください」
(どがーん!)
「そこに弾薬があるんで一網打尽……ですね、すでに」
「えーと、Bたちは?」
「E王女と合流してます、左手40メートル先」
「えーとグレネードは……ああもう、なんでファンタジー世界で現用兵器なんか!」
(※A、走る)
「持ち込むバカがいるからですな。敵側に、というのが何とも言えませんが」
「そういえば僕、魔法使えないんですか?」
「それもスキルの一つに入っているんで今は無理です」
「えー!」
「まず魔法使いにお知り合いをつくって、その人と手を握らないと」
「面倒くさいスキルだなあ……あ、B!」
(※爆撃後の穴にB、F、E王女他騎士団数十名、魔法使いが入っている。散発的な銃撃戦)
「A! すみませんあっちのほうに魔法障壁を!」
「了解!」
(※光の壁が前方からAのところへ一部移動する)
「走って!」
「う、うん!」
(※A、穴の中に転がり込む)
「無事か、A!」
「E王女!大丈夫ですか?」
「包帯が大げさなだけじゃ。肩と頭にかすった程度よ」
「肩のほうには弾丸が入っております……治癒魔法のスクロールがもう切れてて……」
「よい、この痛みでむしろ頭が冴えるわ……魔法使い、戦況を報告せよ」
「それが……念話で他の者たちと連絡を取っているのですがどこも煙に視界を奪われており、さらに攻撃が激しいので現状しか……」
「妾一人を暗殺するのになんとも豪勢なことじゃ」
「ナビさん!」
「えーと…………じゃあ今から読み上げますよ」
「あの、見てきました! ここから東で交戦中のお味方300と敵500は現在拮抗中、西のほうのお味方1500は敵の狙撃で指揮官を討たれたものの、ご指示通りに2キロ後退して戦線を再構成中、北のほう800は敵の集中砲火を浴びて今魔法防壁で辛うじて耐えている状態です。この辺を囲んで居るのは敵の歩兵部隊で数が200。召喚されたサーベルタイガーと……ミノタウロスが会わせて450。あとドローン……じゃなかった使い魔みたいな機械兵器が300、ヘリ……空中機械は恐らく補給に戻っているんであと1時間は前線に戻ってきません」
「敵の本陣は?」
「ここから5キロの彼方です。向こうも魔法障壁を張ってます。こちらよりも魔法使いは温存されているんで、突破には王女さまの魔剣の力を持っても難しいと思います」
「……撤退するしかないか、やられっぱなしで悔しいが」
「殿(※撤退戦のさい、最後に残る部隊)はオレがやる。ありったけの攻撃魔法のスクロールをくれ」
「F……頼めるか」
「ああ、まだオレたち傭兵のほうがこういうのには慣れてる……A、Bと姫様を頼むぜ」
「Fさん……」
「なあに、傭兵の真髄は負け戦だ(ニヤリ) 必ず帰るから、その時はお姫さまとA、あんたの介添えをしないとな!」
「あ、いやあの……」
「どういう意味じゃ?」
「ここ3日、ベッドの上でコイツのドラゴンと戦ってた。こっちはボロ負けだったけどな」
「なんと!」
「いやあのFさん!」
「呼び捨てにしてくれよ。オレもお前の女だぜ?」
「……じゃあ、Fさ……F」
「よし……傭兵ども! オレについてくる肝っ玉の奴はいるか!」
「持ってねえ奴がいるかよ、姐御!」
「おうさ! あたしも行くぜ!」
「俺もだ!」
「私もいく!」
「よし、総勢20人、これだけいれば大軍団だ!」
「ナビさん、どう思う?」
「……いいたかないですが、これは絶望的な撤退戦です。ヘリが戻ってくるには一時間かかりますが、撤退戦でこの数の差は圧倒的です。90パーセント以上の確率でFさんは帰らぬ人になります」
「…………その確率、僕がいると下がる?」
「……下がりますが、あなたの死亡確率も高くなりますよ?」
「……やる」
今年の六月にでた一般向け警察小説「警察庁・私設特務部隊KUDAN」という作品が今朝方重版決定しました!
この期を逃すな、というわけで本業というか、商業作品作成のほうも忙しくなってきたのとイベントがあるので一週間ほど一日1回の更新となります。
朝7時にはアップしますので、今後ともお付き合いを。




