その26:特殊な意味の部隊(後)
▼その26:特殊な意味の部隊(後)
「それだけでは不足だと申したらどうする?」
「これは我々からの提案です。そちらからのご提案を窺いたい」
「では、そちらの精鋭を集めた特殊部隊を我が傘下に入れて頂こう。扱いは私の直属。魔王との戦いにのみ使い、それ以外の任務は、たとえこの盗賊都市が焼け落ちても負わせぬ……というのではどうかな?」
「では、その人数は?」
「多くは要らぬ……まずそこにいるA殿とB殿を所望する」
「あれ? なんか王女様が僕とBを指差してるんですけれど……?」
「あー、逆指名ハーレムですかね?」
「え?」
「つまり精鋭部隊の名前をかりて、あなたとBさんをそのまま自分のハーレムに入れちゃおうって考えです」
「え!」
「表向きはE王女があなたたちを従える、でもE王女ご自身はプライベートではあなたのもの……まあ、昔の王侯貴族じゃよくある『捻れた外見の関係』というやつですな」
「いやいや、転生してまだ二日も経ってないのに急展開過ぎますって! 第一この世界の自分がどんな人間だったかさえまだ把握し切れてないのに!」
「しかたないです、転生者というのは流転ハードな人生と、大抵相場は決まってますから」
「A、ナニ人生について悩んでるのよ、モヤシピクシーのくせに」
「B、僕ら、これからどうなるか判らないんだよ!」
「何言ってるのよ! G様がお願いすれば例え火の中水の中、ドラゴンの喉の奥まで飛びこむのが盗賊ってものでしょうが!」
「あ、この子熱狂的なファンだからむしろこれはご褒美なのか……」
「というより、多分彼女はこれが逆ハーレムじゃなく、自分自身へ課せられたクエストだと思って燃えてるんだと思いますよ?」
「あー、そっかー。そういうことか」
「なによ?」
「えーとさ、一つ視点を忘れてるみたいだから言うけど、僕らE王女様の所有物になるかもしれないってこと、つまりその……夜のゴニョゴニョ……が」
「!(真っ赤)」
「どうする?」
「お、おーじょさまに夜のベッドででででさ、挿しつ挿されつがナニヨゥ!(※声、裏返っている) ががががんばるしかないじゃないの! あたしたち盗賊都市の子なのよ?」
「無理して頑張るのは……よくないと思う。B、恥ずかしいんでしょ? 僕はまあ、男だからいいけど、女の子は自分を大事にしなくちゃ……と思う」
「な……なに真面目な顔してあたしに意見するのよっ! Aの癖に!」
「そりゃそうだけど……でもさ、僕ら大きなことをしたんだよね? 少しは自分を大事にすること、してもいいと思うよ?」
「あーそういうことを言うと……」
「……!」
(ぱあん!)
「ほらね」
「ご……ごめん……で、でもあたしたちは、あたしたちは! 立派な盗賊にならなくちゃいけないのよ! 時に情け無用、自分の身体を道具と割り切る! 教わったでしょ!」
「なにをしているの、ふたりとも」
「あ、G、G様……」
「何でもありません、ふたりの個人的なことが言い合いになっただけです。お話し合いの邪魔をしたのでしたら謝ります(ペコリ)」
「……本当に?」
「はい」
(※まっすぐに見返すAの視線を受け止めるG、背後でE王女、何か言いたげな表情だが飲み込む)
「B、本当?」
「違います。Aは嘘をつきました。E王女様直属の部隊になったら、ベッド……(真っ赤)じゃなかった、ちがいます! ど、どんな要求をされても応じるのが盗賊都市の子としての役割だと言ったら、Aが、手柄を立てたんだから我が儘を言っても良いとか馬鹿なことをいうので、ついカッとなって……」
「…………あなたたち」
(※ぎゅう)
「あいやあのG様……(はふぅんはふうん、なんかいいにおい・やわらかい・すてきいいいいい!!!!)」
「~~~~~~~~~!」
「馬鹿なことを言っては駄目。今回に限ればAのほうが正しい。でも普段ならばBが正しい。喧嘩をしてはダメ……私個人は、あなたたちが盗賊都市の子であることを誇りに思って欲しい、でも……それ以上に幸せに生きて欲しい。盗賊は陽気で暢気でも構わない生き方なのよ?」
「……はい(うわーすごいやわらかいあたたかいいい匂いがするぅううううう!)」
「Aさん、完全に話、聞いてませんなー。美しい未亡人にBさんと一緒に抱きしめられて夢見心地でぽーっとなってる」
「は、はひ……」
「はい……(真っ赤)」
「……というわけで、E王女、このふたりをお申し出通りお預けいたします……が、閨への談は何卒ご容赦頂けますでしょうか?」
(※にやりと笑うE王女)
「妾も嫌がるものを無理矢理引き込む趣味はない。まあ、二人とも妾に惚れてくれたということで、閨に忍んでくる場合は受け入れてしまうぞ? ははははは」
「そこはもう、当人たちの意志ですから」
「うむ。だが私は人徳がある故、きっと戦いの途中で私に惚れるであろう! はははははは!」
「さすが王族、凄い自信だ……ああ、でもあの腹筋、あの巨乳。年上の理想の女性に童貞を奪われるこの誘惑に、僕はどこまで我慢出来るだろう、我慢出来るだろう! ああ!」
「今さっき真顔でBさんによいこと言ったのが台無しですな」
「A……あんたホントサイテーのモヤシピクシー野郎ね」
「え? 今の声に出てた」
「出ました」「出てた!」
☆あとがき
26話目となりました。
アニメやドラマでいえばこれで2クール目の節目となります。
お読み頂き感謝いたします。
こうした後書きや活動報告というのも書いたほうが、こちらでは読んで下さった方々に感謝の念が伝わりやすいということをようやく本日知ったので、なるべく書いていこうと思っています。
いやもうトロくってすみません……




