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その24:路上の会談

▼その24:路上の会談


「ほう、そなたが当代の盗賊王Gか」

「E王女陛下にはご機嫌麗(きくげんうるわ)しく」

「挨拶など良い。お主が自ら門の外に出てくると言うことは、相当(そうとう)中は紛糾(ふんきゅう)しておる、と言うことだな?」


「残念ながら。我々の最初の予想では、7対3の割合で、あなた様をここへ誘拐してきて、拷問や快楽責めで我々の傀儡(かいらい)にするということになるはずでしたから」

「ほほう。拷問は判るが快楽か。我が王族も舐められたものだ」

「私はそれに反対する3のほうに所属しております」

「なぜだ?」

「あなた様は快楽や拷問では落ちません。籠絡(ろうらく)というのは迷いのある人間にこそ意味がありますが、迷わぬもの、信念を持っているものには通じませぬ」

「難しい話をいうな?」

「ご謙遜(けんそん)を。000王国の女王陛下はもはやご高齢で半ば御引退状態、今現在は、あなた様が全てのまつりごとを取り仕切っておられることは周知の事実」

「母上はそれほどヤワなお方ではない」

「これは失礼……ともあれ、あなたさまには正式な話し合いが必要だと思い、そのための誘拐を計画しました……が、人選の幸運か、それともあなた様の温情慈悲(おんじょうじひ)のたまものか、このふたりは合法的にあなた様をここへ、ご意志をもってお招きできることと相成りました。これは正に幸運」

「妾をここへ呼び込めた幸運はAに感謝せよ。あやつに我らが部隊は救われた。そうでなければ222共和国、333王国などと語らい、その足でここへ攻め入るつもりであった」

「それはまさに……Aへは後でたっぷりと礼金をはずむことに致しましょう」

「ほう、礼金か。我が国であれば褒美(ほうび)の他に爵位(しゃくい)であるが」

「社会的地位は与えたものが奪えますが、お(かね)は当人の才覚でどうにでもなります。我らの価値とはそこにありまするゆえ」

「なるほど、褒美の金子(きんす)のほうが実在的だな。実存的とも言えよう。気に入ったぞ」

「光栄の至り」

「さて、妾もそなたに対して、気に入られることをせねばなるまい。なにを所望する?」

「まず、今だ盗賊都市の中はあなた様への思い定まらず、混乱の地となっておりますゆえ、ここにて、立ったままの話し合いをすること、お許し願いたく」

「構わぬ。こちらとしても暗殺だの毒殺だのを気にして見知らぬ壁に囲まれて死ぬより、広い道の真ん中で話し合うほうが良い」

「ありがたきしあわせ」


「えーと、なんか全然、僕ら出番が無いね」

「偉い人同士の話し合いですからね。平凡な15歳の盗賊が、ここで席の真ん中にいたら、あなた今日からあらゆる勢力に狙われることになりかねませんよ? あるいはあらぬ噂とか」

「あらぬ噂?」

「だってあちらにいる未亡人盗賊王と20代こ……いや、E王女陛下との間に挟まれたナニが上手な小僧、とか?」

「……つまりその、ベッドのペット?」

「若い燕、という言葉をご存知の年齢じゃなかったですね、今も前世も」

「しーっ! 黙ってなさいって!」

「しかし、美人だなあG様って」

「あたりまえでしょ! 美しき盗賊王G、華麗なる盗賊王の名はもはや不動! 周辺諸国からも怖れられる盗みの腕と冷徹な判断、広い度量、凄いんだから!」

「ホント、G様が大好きなんだね、Bは」

「……(真っ赤)」

「宝塚の男役に憧れるようなもんですな。未亡人ですが」

「ああ、そう言われるとますます魅力的……いやいや、ダメダメダメ!」

「珍しくこういうことに関して理性的ですね」

「権力と未亡人って大概おっかないことになる、って映画や小説でよくみましたもん」

「何見たんですか?」

「犬神家の一族とか、八つ墓村とか」

「随分渋いの見てますね、というか微妙に解釈が間違ってるというかそういう見方もあるのかというか……」

「でもまあ、まだ転生して二日もしないうちにこんだけめまぐるしく状況が変わるなんて……」

「15年分の経験やら知識やら、今のうちに思い出しておいたほうがいいと思いますよ?」

「それもそうだね……えーと……」

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