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朝日の中で

 翌朝。


「じゃあな……」


 そういうと山本は、照れた様な苦笑いを浮かべた。列車が駅に停車した。扉が開き、山本は駅に降り立った。俺と久遠は山本の後ろ姿を見ていた。山本はきびすを返して振り返り、俺に握手の手を伸ばした。俺はゴツゴツとした山本の手を、力いっぱい握りしめた。


「今ならわかる。俺は帰りたかったんだな。俺は誰かに、認めてもらって帰りたかったんだよ。岩岡、ありがとう。お前も早く帰れよ。嫁さんに早く会いたいぞ俺は!今夜は頑張るか!久し振りにな!」


 おどけて笑う山本に、俺も無言で頷いた。山本の顔が穏やかなものになった。


「……俺達の無限の時間は、世界にとっては時間ですらない。この世界は、人の心の様だ。都合よく、いびつで、悲しくなるほど虚しい。でも、お陰で、自分の気持ちと向き合えた。綺麗事じゃないんだよな人生は。猛烈に生きて行くしかないんだよな、うん。俺はそれを思い出したよ。ありがとうな」

「こちらこそ、ありがとう」


 俺も最後に背中を押された気になった。俺も早く帰りたいと思った。扉が閉まる。太陽が暗闇から顔を出し、朝日が山本を眩しく照らした。山本が、解き放たれた様に破顔した。その笑い声には、とても覇気があり、俺も釣られて、笑みがこぼれた。朝日の中で、山本は本当に輝いていた。初めて見る、山本という男の輝きだった。列車が動き出し、仁王立ちのままの山本が小さくなって行った。

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