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鎧暮らしの首だけ姫〜おひとり様おひとつ限り〜  作者: 風見鶏
第一章「どうしてここに生首が?」

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3

 

「無事に帰還、おめでとうございます」

「……無事かどうかは、怪しいですけど」

「五体満足なら無事ですよ。怪我は治せますから」


 受付のお姉さんがことも投げに言うのは、それほどにひどい怪我をして戻ってきた冒険者たちをこれでもかと見てきたからなのだろう。


 あれから村を散策しながら、ゴブリンと何度も戦闘をした。慣れれば、ゴブリンは単調な動きばかりで、しっかり対処すれば問題がない。ただ、うっかり入った村長の屋敷で、三匹のゴブリンに囲まれたのが不味かった。


 連携もなくただ飛びかかってくるゴブリンを相手に、地面を転がるやら、テーブルに突っ込むやら、怪我はするやら。なんとか勝ったとはいえ、服はズタズタだし、顔も頭も汚れ回しているし、ほうほうのていで帰ってきたのだ。


「それではこれが報酬となります」


 トレーに置かれた銅貨を数えてつまみ上げ、受付を後にした。

 ゴブリンが持っていた武器も持って帰ってきたが、それは自分用の備えとして残してある。命懸けでゴブリンを戦って、得た報酬は銅貨が八枚。これじゃ今日の食事代にしかならない。


 もっと効率的に、もっと安全に、もっと長い時間、迷宮に滞在しないと、生活するのは難しそうだ。

 はあ、とため息をついて、僕はギルドを出た。とりあえず、疲れ果てていた。それにこの分厚い服を脱ぎたいし、汗と汚れと血を流したいし、お腹も空いている。


 ずいぶんと欲求が湧いているな、と気づくと、なんだかおかしくて笑えた。

 ズタボロに汚れて、丸々と着膨れして、剣を腰に下げて歩いている僕を見て、すれ違う人たちから冷たい視線が向けられる。それだって別に構わない。


 これまでずっと他人事のような人生だったけれど。

 迷宮に行けば、それがようやく自分のことのように思えるのかもしれなかった。


 そう思うと、稼ぎがわずかだって、ゴブリンに追いかけ回されたって、構やしないと思える。

 僕は今日の実入りである銅貨を握りしめて、まずは公衆浴場に向かうことにした。

 



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