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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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閑話 白色の決意

「……最悪ではないですが、芳しくはないですね」


 現在の状況を冷静に分析して、わたくしは大きく息を吐き出しました。


 どのように芳しくないのか。それは二学期が始まってから本日までの日々を振り返ればわかります。


 夏休み終盤に翔太さんと仲直りをしてから、わたくしは絶好調でした。


 二学期に突入すると、翔太さんは白の派閥に入ると発表してくれました。これが紫音さんの為というのはわかっています。わかっていますが、白いハンカチを持ち歩いているという事実に胸が温かくなりました。


 その後は予想通り、女神達が翔太さんに接触してきました。


「……あれは予想外でしたわね」


 白の派閥という盾を使って勧誘を防ごうとした翔太さんですが、女神達はしつこく食い下がってきました。あそこまで積極的なのは予定外でした。


 女神達を退けるために翔太さんは自身の魅力をアピールするように言い放ちました。これはその場凌ぎの言葉だったそうです。


 ……なるほど、アピールですか。


 はっきり言いましょう。わたくしは再会してから、正確にいえば誕生日プレゼントを貰った後くらいから翔太さんが気になっています。姿を見かければ視線で追うようになりましたし、登下校の際などは一緒にならないかと密かに期待しているくらいです。


 子供の頃、弟の八雲に抱いた感情と同じか、それ以上にこみ上げるものを感じます。


 もっと仲良くなりたい。


 その気持ちは日増しに大きくなっていきました。

  

 表面上は仲直りをしましたが、翔太さんがわたくしに好意抱いているのかと問われたら答えはNOです。それは当然でしょう。謝罪して仲直りしたとはいえ過去の出来事は事実なわけですから。


 ならば、好意を持ってもらうために全力を尽くすのみです。わたくしも自分の魅力をアピールしようと考えました。


 恋心を自覚した頃、翔太さんは親友である犬山さんと再会しました。


 わたくしもその場に参加させていただき、犬山さんに納得してもらいました。


 犬山さんとの再会はわたくしにとっても非常に嬉しい出来事でした。あの日、翔太さんが引っ越す原因の一因はわたくしにもあります。だから二人が再会できて良かったと心から思いました。


 ここまでは順調でした。そう、ここまでは良かったのです。


「……その後は全く良いところなしですわね」


 まずは体育祭です。


 どうあがいても運動では活躍できません。昔から運動は大の苦手です。何もないところ転ぶのは子供の頃から変わりありません。


 体育祭は最初から楽しむ方向で立ち向かいました。

 

 幸か不幸か白組は運動が不得意な方が多く集まったらしく、見せ場もなく最下位でした。しかし、負けても白組の方々は最後まで笑顔でした。個人的にも非常に楽しめたので大満足でした。


 個人としては楽しめましたが、成績は最下位です。さすがにこれではアピール成功とは言えませんね。


「……翔太さんの活躍、あれは今思い出しても素敵でしたわね」


 対抗リレーでアンカーを務めた翔太さんですが、あの犬山さんを寄せ付けず勝利する姿は本当に素敵でした。


 ただ、体育祭全体で見れば最も目立っていたのは青山さんでしょう。


 最終種目で大逆転勝利を果たし、青組はドラマチックな逆転優勝を果たしました。その活躍もあって、青山さんは女神候補筆頭に躍り出ました。


 悔しいですが、最後の走りは見事でした。グラウンドを颯爽と駆け抜けるあの姿には美しさを覚えたほどです。


 しかし、予期せぬ展開となりました。


 大活躍した青山さんが天華コンテストを辞退したのです。理由がわからず頭にハテナを浮かべました。事情が判明したのはそれからしばらく経過した後でした。


 体育祭の後に神会議がありました。


 そこで黒峰さんがテストで勝負しようと言い出したのです。少し揉めた後で勝負が行われることになりました。その旨を翔太さんに伝えることになったのですが――


『どうして青山さんがこの場にいるのでしょう』


 集まった場所にまさかの青山さん登場です。


 そこで説明を受けました。どうやら青山さんは翔太さんと仲直りをしたみたいです。これは意外でした。

 

 話を聞いたところ、彼女は自分の過ちを後悔して謝罪の言葉を以前から口にしていたようです。それに、犬山さんから聞いたあの出来事は事故だったとのこと。だから翔太さんは謝罪を受け入れて仲直りしたというのです。


「……これに関してわたくしに言う権利はないですからね」


 過去にやらかした、と点に関してはわたくしも同じです。彼女に対して何か言う権利はないので黙っておきます。


 ただ、あの方を悪魔呼ばわりしたことは訂正致しましょう。以前から謝罪をしていたのであれば気持ちに偽りはないのでしょう。


 わたくしにとって救いだったのは青山さんから翔太さんに対する特別な感情が見えなかったことです。好意的ではありますが、そこに恋愛感情はないように映りました。あれは明らかに友人に対してのものです。


 仲直りした青山さんはすっきりした表情で女神の座から降りると言いました。未練も後悔もなさそうな彼女は――


「良い顔をしていましたわね」


 あれが本来の彼女なのでしょうか。以前のどこか張りつめていた彼女とは大違いでした。さすがに青の女神と呼ばれるだけありますわ。


 さて、体育祭が終了すると話題は中間テストに移りました。


 これが本当に計算外でした。


 黒峰さんからの勝負を受けたのは自信があったからです。今回こそは犬山さんを倒してトップに立つ予定でした。


 その結果は。


「……赤澤さんにも負けてしまいましたわ」


 言い訳をするつもりはありません。


 ありませんが、中間テスト期間中に家族間トラブルが発生して勉強の時間が確保できなかったことが敗因でしょう。


 わたくしを巡ってお父様とお母様が真っ向から激突したのです。八雲からその件を聞かされ、自分が原因で夫婦喧嘩となったことに胸が痛みました。

 

 ただ、激突の結果は悪くないものでした。


 お母様からお説教されたお父様は反省したらしく、態度を軟化させました。後日、わたくしと八雲を交えて家族で話し合いをすることになりました。どうにか家のゴタゴタが解決しそうで嬉しいです。


 それは嬉しいのですが、これによって運動だけでなく得意の勉強でも後れを取ってしまいました。アピールは大失敗です。


 ここでまたしても予期せぬ展開です。


 学年トップに立った黒峰さんが突如、次回のコンテストを辞退したことです。これは本当に意味不明でした。


 犬山さんに勝利したのにどうして?


 おまけに敗北した犬山さんまでもが次回のコンテストを辞退したのです。驚きましたが、これは納得できる理由があります。恐らくは賭けが原因でしょう。

 

 黒峰さんは犬山さんと個人的な勝負を仕掛けていたらしいのです。黒峰さんが辞退するように命令したと考えるのが普通でしょう。


「……けれど、何かメリットがあるのでしょうか?」


 彼女の行動などわたくしにはさっぱりですが、これは本当に謎です。


 とはいえ、好都合です。


 何もしていないのにライバルがいなくなりました。そして、犬山さんの辞退で翔太さんが男神になる可能性が高くなったと言えます。


 ……わたくしが女神になり、翔太さんが男神になる。


 一緒に並び立つ姿を想像すると気分が高揚します。


 わたくし達が神になれば自然と接触は増えるでしょう。親密になっていくのは誰の目にも明らかです。


「アピールが上手く行っていないので状況は芳しくありません。ですが、ライバルが少なくなったので最悪ではありません」


 お互いが神として並び立つ未来のためにもアピールを続ける必要があります。どこかで挽回しなければ。


「いいえ、ここは前向きに考えましょう。赤澤さんはまだ翔太さんの正体に気付いてすらいない状態です。総合的に見ればわたくしのほうが断然優位のはずです。後は伏兵に気をつけながら進むだけです」


 ただ、過去の大きな失敗があることは忘れません。焦らずじっくりと、信頼と実績を築き上げていきましょう。


「ここからは本気を出して、必ず翔太さんの隣に立ちますわ!」


 強い決意を胸に秘め、わたくしは進み続けます。

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