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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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第25話 神々のテスト結果

 中間テストが終わった。


 今回は期末テスト以上の手応えがあった。


 出来が良かった要因はわかりきっている。紫音と共に頑張ったからだ。紫音の前でサボることはできなかったので、集中して勉強することができた。


 さて、ここで神々の様子について触れよう。

 

 赤澤はこれまでとは比較にならないくらい集中していた。今回のテストに賭ける意気込みは前回以上だ。誰とも会話せず、黙々と勉強していたのが印象的だった。蓮司を挑発した件からもわかるように自信がありそうだ。


 青山は前回と違って非常に緩かった。配信もしていたし、ゲームだって封印せずプレイしていた。女神を続投する意思は皆無で、勝負もしないようだ。俺からしたらテスト前でも遊びまくっている姿のほうが見慣れている。


 最注目の黒峰だったが、バイト先で会わなくなった。俺は日数を減らしていたが、どうやら黒峰はそれ以上に減らしていたようだ。学園でも取り巻きと距離を置いて勉強一本に力を注いでいるという話を聞いた。それだけ全力を傾けたわけだが、果たして結果はどうなるか。


 白瀬はいつも通りだ。本人談では全力で頑張ってはいたらしいが、元々の性格もあるのかそれほど頑張っているようには映らなかった。近くを通ると笑顔で会釈をしてくれるし、相変わらず小さなお嬢様って感じだった。


 女神の挑戦を受けて立つ蓮司とは頻繁に連絡を取り合っていた。あいつは普段と変わらない。余裕のメッセージを送ってきたので心配もしていない。俺との賭けも覚えていたようで、俺の金で飯を食うのが楽しみだと言っていた。


 学年上位30人の名前が掲示板に掲載されるのは期末テストと同じだ。


 2年生の結果が記載される掲示板前には既に多くの生徒が集まっていた。


 今回は俺が焚きつけたわけではないが、勝負の結果は気になるところ。それに、自分の結果だって気になる。


「……そろそろだね」


 期末テストの時は緊張した面持ちの真広だったが、青山が辞退したせいかテンションが低い。戦いの結末に興味はなさそうだ。


「真広は手応えどうだった?」

「あの勉強会のおかげで持ち直せたけど、前回よりはダメだと思う」

「……そっか」


 会話をしていると、先生がやってきてテスト結果が張り出された。

 

 多くの生徒に混じって下から目で追っていく。どこで名前が出てくるのかどきどきしながら視線を上げていった。


 25位 名塚真広


 前回から少しダウンした場所に真広の名前があった。


「この結果はしょうがないかな」

「……ドンマイだぞ」

「ショックはそれほどないから大丈夫だよ。まっ、ここは30位以内に入れたことを素直に喜ぶべきかな。得点はそれほど下がってないし」

「そうだな。十分上位だしな」


 青山の一件があったせいで集中力を欠いたのだろう。こればかりは仕方ないし、集中力が削がれるのも無理ないだろう。


 続けて順位を追っていく。


 自分の名前が中々出てこないことに不安を覚えていると。


 10位 虹谷翔太


「うおっ!」


 思わず変な声が出た。

 

 まさかのトップ10入りだ。自信があったとはいえ、驚きの結果だった。あまりの衝撃に俺はガッツポーズを繰り返していた。


「凄いよ、翔太」

「俺もビックリしてる!」

「やったね」

「おう、やったぞ」


 ご機嫌になった俺はそのままの勢いで順位の確認を続ける。


「……青山さんの名前はないか」


 隣からつぶやき声が聞こえる。


 勉強していなかった青山は上位30人にはランクインしなかったようだ。勉強をしていなければそうなるだろう。前回がむしろ良すぎただけだろうな。


 真広のつぶやきを華麗に無視して続きを確認する。


 6位 佐藤悠馬

 5位 飯野柚木

 4位 白瀬真雪


 ここで白瀬が登場した。


 白瀬は前回よりも順位を落としている。ということは、赤澤は白瀬を上回ったのか。それはまた驚きだな。


 その時、周囲のざわめきに気付いた。

 

 大番狂わせでもあったのだろうか。俺はごくりと唾を飲みこみながら、視線をゆっくりと上げていく。


 3位 犬山蓮司

 2位 赤澤夕陽


 そして、栄えある1位に輝いたのは「黒峰月夜」だった。


「……」

「お、大番狂わせだ!」


 結果を見た誰かがそう叫んだ。


 あの蓮司が敗北した。


 去年からすべてのテストでトップだった蓮司が負けた。というより、俺が知る限りでは中学時代からテストでは負けなしだったのに。


 周囲がざわついた原因はこれだったのか。


「……ちょ、得点を見てよ!」

 

 唖然としていた俺に真広が言った。


「えっ」

「ほら、黒峰さんの得点」


 順位の隣に掲載されていた得点だったが、黒峰の点数は満点だった。


 満点とかマジか。


「……おいおい満点かよ」

「さすがに凄いね」

「お、おう」

「いくら犬山君でも満点を出されたら無理だよね。彼が負けたことに驚いたけど、これなら納得だよ」


 改めて得点を確認したが、蓮司の調子が悪かったわけではないと知った。蓮司の得点は期末テストとあまり変わらなかったからだ。


 俺は驚きながら周囲を見回してみた。


 青山はこの場にいない。そもそも上位に入ると考えていないらしく、顔すら見せていなかった。それはそれで潔い。


 小さな白瀬は背伸びしながら順位を確認し、その結果に驚いていた。いや、正確には順位というよりも得点のほうだろう。


 その隣では飛び跳ねる猫田の姿が見えた。


「凄いよ、夕陽!」

「今回は頑張ったからね。でも、1位になりたかったな」

「でも2位だよ。今までの最高順位じゃん!」


 赤澤は2位だったせいか少しばかり複雑そうだったが、蓮司に勝利して嬉しそうだ。笑顔の猫田に抱きつかれ、ニコニコしていた。


 一番テンションが高いのはその奥にいる集団だった。


「さすがです、月夜様!」

「凄いですね、黒峰さん!」

「やりましたね、お姉様!」


 何故か紫音も混じっていたが、見なかったことにしよう。自分の順位を確認しろと言ってやりたくなったが、テストはすでに終わっているので今さらだ。

  

 黒峰は自分のテスト結果を見て頷いていた。得点に驚いている様子はない。満点でもおかしくないと自分でわかっていたのだろう。


「ねえ、翔太」

「どうした?」

「あっち見て」


 そこには女子に囲まれていた蓮司がいた。盛り上がりはなく、お通夜のような空気が漂っていた。


「……」


 蓮司は口を半開きにして絶望していた。今まで見たこともないような、絶望に染まり切った表情だった。


 親友のよしみで何も言わず、俺はその場から立ち去った。


 ◇


 その後、男神が敗北したという話題はあっという間に広まった。


 ……これは大きな騒ぎになるだろうな。


 などと思っていたのだが、直後に広まった情報によって騒ぎは別の方向に拡大することとなった。


「……」


 そう、男神の犬山蓮司と黒の女神である黒峰月夜が天華コンテストを辞退したのだ。




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