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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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第22話 神々の激突

「ほう。で、この状況になったと?」


 その日、俺は少しだけピキピキしていた。


 あの体育祭後から天華院学園は荒れていた。


 青山海未が天華コンテストを辞退した件は大きな話題となった。週が明けても話題は青山一色で、未だに青い暴風が吹き荒れている状態だ。


 ただでさえ有力候補が辞退してざわついているというのに、このタイミングで新しい燃料が注がれたのである。


「中間テストで神が再び激突するって何だよ!」


 間近に迫った中間テストだが、そこで神々が再び激突すると噂になっている。


 前学期の期末テストで男神と女神が勝負をしたわけだが、今回も勝負することになったのだ。あの時と異なるのは俺が何一つ関わっていないという点である。

 

「落ち着いてください」

「落ち着きなよ」

「落ち着け」


 三者三様に俺を宥める。


 現在の状況を説明すると、ある日の放課後だ。


 俺の目の前には蓮司がいる。その隣には困惑した表情の白瀬がおり、さらにその後方には笑顔の青山がいた。


「声を合わせるな。俺は落ち着いてる。ただ、状況を知りたいだけだ。どうしてまた勝負することになったのか聞かせてくれ」 

 

 視線を鋭くしながらそう言うと、両女神の視線が蓮司に向いた。

 

「えっと、それは犬山さんが」

「そうそう、全部犬山のせいだから」


 俺は正面に座る親友を見る。 


「わかった。では、順を追って話そう」

「――その前に一つよろしいでしょうか?」


 話し出そうとした蓮司を制すると、白瀬は視線を背後に向けた。

 

「どうして青山さんがこの場にいるのでしょう」


 さっきから戸惑っていたのは青山の存在が原因らしい。


 そういえば、白瀬には伝えていなかったな。白瀬からしたらここに青山がいるのは不思議でならないはずだ。


 簡単に事情を説明した。


 青山とは仲直りをして、関係を再構築中だと。今のところまだ友達未満だが、普通に会話をする関係になったと。そして今回は神絡みの案件だったので話を聞かせてもらうために招集した、と。


「あら、そうでしたの」

「疑問が解消したなら本題に移ろう。さあ、答えてもらおうか」

 

 話を戻すと、蓮司に向きなおった。


「焦らなくても説明する。問題が発生したのは昨日のことだ。あのくだらない会議がすべての発端だ」


 蓮司は話を始めた。


 中間テストが迫ってきた昨日の放課後、毎月恒例となる神会議が行われたらしい。嫌がりながらも蓮司はこの会議に出席した。


「今月は特に行事がない。だからまあ、何事もなく終わるはずだった。俺としては行事のない月の会議など全く無意味だと思ったが、教師連中からも言われてたから仕方なく参加したんだ」

「ふむふむ」

「そこで黒峰から提案された」

「……内容は?」

「中間テストでの勝負を持ち掛けられたんだ」


 一学期の戦いで勝ったのは蓮司だった。


 黒峰は前回のテストで2位で、ここにいる白瀬が3位だ。上位を独占するのはさすが神の称号を持つ者だと感心したものだ。


「負けたのが悔しかったらしい。再戦しようってさ」

「リベンジマッチってわけだな」

「当然、俺は断った。メリットがないからだ」

「……そうなのか?」

「前回は終業式の挨拶を賭けていただろ。あれは生徒の代表があいつ等だと嫌だったから参加したんだ。ただ、中間テストではそういった行事がない。はっきりいって受ける必要がなかった」


 蓮司としては勝負を受けたところで意味がないわけだ。


 メリットがないのなら受けないのは当然だろうな。ここまでは納得できる。納得できるのだが。


「けど、その勝負を受けたんだよな?」


 ジト目を向けると、蓮司はそっぽを向いた。


 代わりに青山に続きを求めた。


「赤澤の奴に煽られたんだよ」

「煽られた?」

「あいつ、犬山を挑発したんだよ。黒峰からの挑戦を断ったところで、赤澤が笑いながら『あれ、いつも強気なのに逃げるんだね。そういえば体育祭ではアンカー勝負で虹谷君に大敗してたもんね。しょうがないよね』とか言ってさ。それで犬山がイラっとして、勝負することになったんだ」

 

 煽られたくらいで何をしているのか。


 再びジト目を向けると、蓮司は何とも言えない表情をしていた。


「冷静になって考えてみろよ。他の誰が相手でも構わないが、夕陽の奴にそれをされたのがイラっとしてな。我ながらガキだとは思ったんだが、我慢できなかった」

「で、受けたのか?」

「……まあな」


 完全に子供じゃねえか。


 とはいえ、これは仕方ないかもしれないな。運動も勉強も、それから顔も完璧な蓮司は昔から挑発に弱いという弱点があった。


 負けず嫌いな性格のせいか、軽く挑発されただけで簡単に乗る。


 それは昔から蓮司と付き合いのある人間なら誰でも知っている特徴だった。無論、幼馴染である赤澤が知らないはずない。


「しかし狙いが謎だな」


 俺の声に反応したのは白瀬だった。


「恐らくは実績作りでしょうね」

「実績?」

「ほら、赤澤さんや黒峰さんの目的ですわ。翔太さんを自分の派閥に引き込むためのアピールというわけです」


 最近の出来事が濃すぎてすっかり忘れていた。


「本気を出した犬山さんに勝ったというのは何よりのアピールになりますから」

「……なるほどな」


 言われて納得する。


 俺は体育祭で蓮司に勝利したが、どうあがいても勉強では勝てない。こればかりは今までの積み重ねというか、勉強に費やした時間とか全然足りてない。


 本気の蓮司に勝てば俺はビックリするだろう。


 ということは、自信があるってわけだ。運動も勉強も得意な万能タイプの赤澤に、勉強ならトップクラスの黒峰だからな。勝算はゼロじゃないのかもしれない。


「事情はわかった。けど、まあ別に問題ないだろ。今回は何も賭けないんだろ?」

「――いや」

「えっ」


 蓮司は言いにくそうに。


「実は勝負を受けた後で、黒峰から個人的にタイマン勝負を持ち掛けられたんだ。負けた方が相手の言う事を一つ聞くってものだ」

「……受けたのか?」


 蓮司は俺と目を合わせないように頷いた。


 こいつ、また挑発でもされたな。


 その発言に驚いたのは俺だけではなかった。


「初耳でしたわ」

「ボクもだよ」


 秘密でタイマン勝負を持ち掛けてきたのか。


「黒峰は何をするつもりだ?」

「さあな。狙いは俺にもさっぱりだ。そもそも黒峰と喋った記憶がほぼない。同じ中学でもあいつは小学校が違ったし。記憶にある会話はケンカ腰で俺が一方的に言っただけだからな」

「……そんな勝負を受けて大丈夫なのか?」

「まあ、大丈夫だろ。今までも勝ってきたんだから」


 フラグじゃなきゃいいけどな。


 とはいえ、今回の対決に俺は何一つ関わっていない。蓮司の判断で勝負を受けたのだから、無関係の人間がここで何か言うのも違うよな。


「大丈夫ならいい。応援してるぞ」

「おう、任せろ!」


 頼もしいじゃないか。


「そういえば、翔太のほうはどうだ?」

「俺はそれなりに順調だ。ただ、紫音はかなり成績が落ちてるな。ここからは本腰を入れる予定だ。しばらくは紫音に付きっ切りだな」


 紫音の成績は予想通り低下しており、このままではテストで悲惨な結果となる可能性が高い。


「頑張れよ。テストが終わったらまた遊びに行こうぜ」

「おうよ。白瀬と青山も頑張ってくれ」

 

 白瀬は大きく頷いた。


「ええ、頑張りますわ。わたくしもトップを目指しますわ!」

「ボクは気楽にやらせてもらうけどね。女神に興味ないし、この戦いも放棄したようなものだからね。適当に頑張るよ」


 正反対の反応だが、どちらも頑張ってほしい。

 

 神々の激突には興味をそそられるが、今回ばかりは俺に何の関係ないイベントだ。こっちはこっちで頑張らないと。


 俺は気合いを入れ直すと、帰路についた。

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