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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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第14話 赤い体育祭

 蓮司と青山による選手宣誓が行われ、神々の体育祭が開幕した。


 開会式が終わると、生徒達は自分のチームの集合場所に散っていく。俺も赤組が集まる場所に向かった。集合場所には多くの生徒が集まっていた。上級生から下級生までいるが、どの顔もやる気に満ちている。


 ほぼ全員が集まったところで。


「では、ここで赤組の代表から一言あります!」


 猫田の言葉の後、赤澤が全員の前に立った。


 その姿に視線が集まる。


「皆、優勝目指して頑張ろう!」


 拳を天に掲げながら発した。


 呼応するように全員が声を上げる。男子の声が大きかったのは気のせいではないだろう。赤組の士気が一瞬で上がったのがわかる。


 その姿は本物のアイドルみたいだった。


 直後、あちこちのチームから同じような声が響く。どうやらこれは恒例行事らしく、各チーム同じように士気を上昇させていった。


「えらい盛り上がりだな」

「今年は凄いよ。全部の色が女神の有力候補だからね。特に男子のやる気が限界点を突破してる感じかな」


 俺のつぶやきに真広が答える。


「単純だな、男って生き物は」

「誰目線なのさ」

 

 さて、グラウンドを囲うようにして色別に配置されているわけだが、俺達の右隣が青組で、左隣が紫組だった。


 気になって紫組のほうに視線を向けると、紫音が先ほどの赤澤と同様に前に立って皆を盛り上げていた。


 ……女神の適性があるのかもな。


 紫音の気持ちはまだ聞けていない。


 最近は時間が合わず中々話ができていない。食事中にするのは何となく嫌だったし、夜に部屋に行くのも躊躇った。そういったわけで紫音が女神を目指しているのかは不明である。


 ただ、あの様子を見るかぎりだと仮に女神になっても上手くいきそうな気がした。


 紫音の前で誰よりも大きな声を出していた八雲君が強く印象に残ったが、ここは触れないのが優しさだろう。アピールできるように頑張ってくれ。


 反対側に目を向けると、青山が同じように全員の士気を高めていた。


「っ」

 

 青組の声はすべてのチームの中で最も大きかった。


 体育祭といえば青山だ。


 現在の女神である【4色の女神】はどちらかといえば運動が苦手だ。かろうじて普通よりちょっと上なのが赤澤で、黒峰と白瀬は全然ダメ。そのため、この体育祭では青山の独壇場といっても差し支えないだろう。


 個人的にこの青組が最大のライバルだと思っている。


「青組もやる気満々みたいだね」

「相手にとって不足なしだ。優勝するのは俺達だがな」

「……翔太って意外と負けず嫌いだよね」

「今さらかよ」

「そういえば、ゲーム大会でも勝ちにこだわってたよね」


 あの大会では我ながら負けず嫌いを発揮したと思う。


 わざわざ昔のアカウントで青山にメッセージを送ったわけだからな。あれは我ながらリスクの高い行動だった。


「勝負だからな。当然勝ちにいくさ」

 

 当たり前のことを言いながら周囲を見ると、遠くのほうに桃楓の姿を見つけた。


 彼女のことは過去の病弱な頃を知っているので不安だったが、あそこには蓮司もいるから心配はいらない。立派に代表をこなしている様子だ。


 ただ、桃楓には気を付けないと。


 個人的には桃楓にすべて打ち明けていいと思っているが、蓮司が反対した以上は従うつもりだ。それに、成長を促すという兄貴目線には一定の理解を示せる。


 けどまあ、普通に正体はバレないと思うけどな。


 注目度が高いリレーは目立つけど、距離があるのではっきりと顔を見られることはないはずだ。それに、桃楓と会わなくなってから随分な時間が経過しているのでパッと見ではわからないと思う。


 蓮司には気付かれたが、他には気付かれていないのがその証拠だ。


 また、仮に疑われても蓮司が上手く言ってくれる手筈になっている。親友である蓮司が違うと言えば信じるだろう。


 気になる黄組だが、ここからは反対側になるので女神候補の姿は見えなかった。


 先輩だし、どうせ知らない人だから別にいいけど。


「そろそろ準備したほうがいいよ。最初の種目に出るんだからさ」

「おう、すぐに準備するよ」


 体育祭で俺が出場するのは100メートル走とクラス対抗リレーだ。


 100メートル走は全種目の中で最初に行われる。下の学年から開始され、すでに下級生達が走り始めている。


「あっ、虹谷君」


 待機場所に向かって歩こうとしたら、赤澤が声を掛けてきた。

  

 赤澤と喋るのは勧誘を受けたあの日以来だ。


「今日の体育祭、頑張ろうね」

「お、おうよ。絶対優勝するぞ!」

「最初が肝心だからね。頑張ってよね」

「おう……って、赤澤もだろ?」


 100メートル走に出るのは俺だけじゃない。赤澤も出場するはずだ。


「うん。序盤の勢いが大事って去年教えられたから」

「そうなのか?」

「去年は最初の競技で得点を離されて、そこからずるずる行っちゃったから。だから今年は最初から高得点狙いなんだ」


 なるほど、クラスメイトが俺を100メートル走に推薦したのはそれが理由か。


 納得した。と、同時に期待に応えようという気になった。


「ここで勝ちまくって勢いに乗りたいね」

「そうだな。確かに序盤でリードするのは重要だ」


 言葉には出さないが、代表である女神候補が勝利すればチームは勢いづくだろう。赤澤が結果を残せば赤組全体の士気はアップするはずだ。


 そういった意味では赤澤にも頑張ってほしい。


「調子はどう?」

「俺は万全だぞ」

「そっか……期待してるね」

「任せろ」


 話していて気付いたが、どうやら赤澤と喋ることにも以前ほどの忌避感はなくなっているらしい。


 理由はいくつもあるが、蓮司と再会して精神的に安定したことが最も大きいだろうな。


「あ、あのね」

「……?」

「私、すっごく頑張るから!」

「えっ」

「だからしっかり見ててね。虹谷君に推してもらえるように、今回の体育祭で全力アピールするから!」


 頬を赤らめた姿を見て、あの時の会話を思い出した。


『全部が素敵だからに決まってるでしょ。顔は超イケメンだし、すごく優しいんだよ。それに運動神経は抜群で、勉強だって頑張ってるよね。困ってるといつも颯爽と現れて助けてくれるし、本物の王子様みたい。あんな素敵な男子は他にいないよ。惚れない理由がないもん。好きっていうか、大好き!』


 あの赤澤夕陽に好かれている事実を思い出すと、感情がぐちゃぐちゃになる。


 子供の頃、それこそ小学生の運動会とかではしゃいでいた時代は俺がこいつにべた惚れだった。どうにかしてアピールしようとか思ってたのに――


 そういえば、こいつが白瀬に嘘を吐いた理由が未だにわかっていない。


 ホント、何を考えているのかさっぱりだ。大体、好かれるようなことをした覚えがない。絶対に俺よりイケメンはいるはずだけどな。


「……」


 いや、今は赤澤について考察などしている場合ではない。重要なのは体育祭での優勝だ。


「去年は悔しかったから、今年は優勝したいよ」

「したい、じゃない。絶対優勝するんだ!」


 俺が目指すのは優勝のみだ。元々負けるつもりで戦うのは嫌いが、今回は特別な事情もある。


 何故かって?


 昨夜、蓮司と賭けをしたからだ。直接対決で順位が下の奴が今度出かけるときに飯を奢るという内容だ。だから絶対負けるわけにはいかない。俺のバイト代はガチャにつぎ込むと決めているのだ。


「うん。絶対優勝しよう!」


 赤澤はそう言うと、今まさに走ろうとしている下級生のほうを向いて。


「赤組、頑張って!」


 大声で声援を飛ばす。


 その声を聞いた男子達のやる気がアップした。下級生達はその声に触発されたのか、良い成績を連発していった。


「じゃあ、私はそろそろ行くね」

「頑張れよ!」

「虹谷君もね!」


 俺は雑念を捨て、最初の種目に向かった。


 ――その結果、見事トップで駆け抜けた。


 休憩しながら様子を見ていると、赤澤も女子100メートル走でトップを取っていた。対戦相手に恵まれた感じだったが、この勝利は大きい。


 その証拠に、赤澤が勝利した瞬間に赤組の集合場所が爆発したのではないかというくらいに活気づいた。 


 赤澤がトップを取ったことに刺激を受けたのか、赤組はその後も次々と上位を獲得し続けた。


「よし、この調子で行こう。赤組ファイト!」


 最初の種目を終え、赤組は首位に立った。

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