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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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第11話 無色の親友と桃色の事情

「わかった。俺のほうも話そう」


 そう言って蓮司は話を始めた。


「翔太がいなくなった後、翔太の母さんから手紙を渡された。それを見て、とてもじゃないが冷静ではいられなかった。ただ、あいつ等だけじゃなくて自分にもイラついたよ。親友がそこまで追い詰められてることに気付かなかった。言い訳になるが、当時は忙しくて余裕がなかった。家のゴタゴタもあってな」

 

 あそこから逃げ出す前、蓮司と話す機会は減っていた。


 俺が避けていたのもあったが、当時の蓮司は生徒会長という立場もあって非常に忙しくしていた。家のゴタゴタに関しては初耳だったが、恐らく現在引っ越してることと関係しているのだろう。


「ショックを受けていたら、学校全体がめちゃくちゃ荒れた」


 あの中学が荒れたという話は聞いていた。


 特に黒峰が暴れたという話は有名だ。


「俺も大暴れしたかったけど、中学の頃は我慢したよ。手紙に書いてあることを守ってな。まあ、完全には無理だったけど」


 蓮司は苦笑いを浮かべながら話してくれた。


 たまたま接触する機会があった黒峰にだけは我慢できず苛立ちをぶつけてしまったらしい。黒峰が暴行事件を起こしたのはそれから少し経った後のことだ。


 そこに関連性があったのか蓮司にはわからないという。


「翔太に関する噂を夕陽の奴が必死に取り除いたり、青山が骨折したり、黒峰の変貌ぶりといい、ホントにぐちゃぐちゃだった。その荒れ具合を見て俺は逆に冷静になった。馬鹿々々しくなったから受験勉強に力を注いだんだ」

「……蓮司なら勉強しなくても余裕だったろ?」

「どっかの親友のせいで冷静さを失ってたから成績がやばかったんだよ」


 そいつは申し訳ない。


「卒業後、この天華院学園に入学した。翔太じゃないけど学力的にも距離的にもちょうど良かったからな。ただ、想定外の事態になった。あの悪魔共もここに入学したんだ。しかも何故かそこには翔太の手紙に書いてあった白い悪魔もいた」


 ちらっと白瀬を見ると、何とも言えない表情をしていた。


 白瀬は姫宮女学院に通っていたから、蓮司はとても驚いたという。姫宮女学院は中高一貫校なので多くの生徒が高等部に進むのは有名だ。


「赤澤達がここに入学するって知らなかったのか?」

「ああ。あの手紙を読んでから夕陽とは喋らなくなってたし、他の女神とはそもそも接点がないからな。さっき話した黒峰との件くらいだ。同じ中学といっても違うクラスだったからな」

「……偶然が重なったわけだ」

「そうなる」


 なるほど、蓮司は知らなかったのか。


「同じ高校に入学したことで怒りが再燃した。けど、それでも我慢した。限界を迎えたのは天華コンテストの後だ。あいつ等が女神とか呼ばれるのがどうしても我慢できなくてな。で、あの会議に繋がったんだ」

 

 蓮司はそこまで話して深々と息を吐いた。


 必死に我慢したけど、女神呼ばわりが耐えられなくなったわけだ。逆の立場だったら俺もそうだろうな。蓮司に何かした奴が女神とか呼ばれ、多くの生徒に慕われてたらムカついてしょうがない。


「……あの時の犬山さんは凄い迫力でしたわ」

「そりゃそうだ。何年も我慢してたんだからな」


 後は俺も知っている通りだ。


 怒りに任せて蓮司が全部ぶちまけ、神同士が敵対関係になった。そこに俺が転校してきたと。


 こうして聞くと改めて蓮司にどれだけ迷惑を掛けたのか理解した。


「次に桃楓ちゃんについてだな」

「ちょっと待ってください」


 話そうとする蓮司に白瀬がストップを掛けた。

 

「……先ほどから名前が出ているその方はどなたですか?」 

「赤澤の妹だ」

 

 俺が教えると、白瀬は驚きに目を見張る。

 

「妹がいたんですね」

「結構有名らしいぞ。次期女神の候補だってよ」

「……初耳ですわ。わたくしの記憶にないのは赤澤さんと一緒に居るところを見ていないからでしょうか」


 白瀬は思い出しながらといった感じでそうつぶやいた。


「あの子は俺と蓮司にとって妹みたいな存在だったんだ。昔から体が弱くて、学校も休みがちでな。それでも素直で良い子だから放っておけなかったんだ」


 最後に見たのは小学生の頃で、ベッドで横になっている姿だった。


 あれからどうなったのか全然知らない。赤澤とは距離が開いたし、桃楓と接する機会もないまま引っ越した。


「桃楓ちゃんが元気になったのは翔太がいなくなる前後だな。本人から聞いた話によると色々頑張ってたみたいだぞ。食生活を変えたり、体を鍛えたり、漢方薬に頼ったり、手あたり次第に試してみたらしい。どれが直接の要因かは不明だけど、虚弱体質も少しずつ回復して学校に通うようになったんだ」


 話を聞いて俺はホッとした。


「そっか。元気になって良かった」

「まったくだ。ただ、翔太がいなくなったと知って悲しんでたよ。元気になって驚かせようとしてたんだとさ」

「……」

「そんな顔するなよ。今では元気に走り回れるようになった。あの頃とは違う。会おうと思えばいつでも会えるぞ」


 あの頃とは違うか。


 そうだよな。俺もこれだけ変わった。桃楓が大きく変化していてもおかしくはないか。この学園に通っているならいつでも会えそうだ。


「中学を卒業した桃楓ちゃんは天華院に入学してきた。その理由は――」


 蓮司は言葉を溜めた。


「現在の女神である【4色の女神】を蹴落とすためだ」

「っ」

 

 あの話を聞いていたのでそれほどの衝撃はないが、改めて聞くとインパクトがあった。弱々しかったあの桃楓がそう考えるとは。


 初耳の白瀬は予想外だったのか、口を半開きにして固まっていた。


「なあ、桃楓が女神になりたい理由って――」

「翔太のためだ。ここに戻ってきた時、あの悪魔共が女神って呼ばれてると翔太が悲しむと思ったんだとさ。だから自分が女神になろうとしてるんだ」

 

 あの時、蓮司と話し合っていた会話の中身はこれだったのか。


「……なら、やっぱり桃楓は俺の事情を知ってるのか?」

「知ってる。ただ、情報を伝えたのは俺じゃない」

「誰が教えたんだ?」

「翔太と夕陽に関する噂を聞いて違和感に気付いたらしい。その件で母親に聞いたりして、真実にたどり着いたんだとよ。ほら、翔太の母さんと桃楓ちゃんの母親は仲良しだろ。その関係で全部知ったみたいだ」


 噂というのは俺が赤澤をストーカーしていたという件だろうな。


 あそこからたどり着いたのか。そういえば、ベッドで横になっている桃楓には俺が親に頼まれて赤澤と登校していることを漏らした気がする。


「桃楓ちゃんからしたら翔太は大好きな兄貴分だ。夕陽のしたことが許せなくて、それがきっかけに姉妹ケンカになったみたいだ」


 ケンカについては赤澤のほうから聞いている。


「……あんなに仲良し姉妹だったのにな」

「おいおい、気にするなよ。あれは夕陽が絶対的に悪い。翔太のせいじゃないぞ」

「わかってるさ」

 

 俺の返答に蓮司は満足そうに頷く。


「で、俺は桃楓ちゃんから事情を聞いて彼女の手伝いをしている。次の女神にするためにな。それで今日のここに繋がったわけだ」


 これで蓮司と桃楓の事情を理解した。


「さて、これで話は終わりだ」

「ありがとな。全部理解したよ。それに、かなり迷惑を掛けたみたいだな」

「気にするなよ。翔太が無事に帰って来てくれたことが一番だ。お互いに色々とあったけど、こうして無事に再会できたわけだし」


 本当にその通りだな。


 改めて再会の喜びに浸る。


「今後だけど、俺が戻って来たことを桃楓に言ったほうがいいよな?」

「いや、悪いが少し待ってくれ」


 蓮司が止めたのは予想外だった。


「桃楓ちゃんは【4色の女神】を打倒することを掲げて頑張ってる。ここで翔太が戻ってきたことを教えたら頑張りが無駄になる可能性がある。ほら、桃楓ちゃんは翔太に【4色の女神】が君臨してるところを見せたくないわけだからな」

「……ああ、なるほど」


 俺のために女神になろうとしているのに、ここで会ったら彼女の頑張りが無駄になるか。


「けど、一学期に転校してきたことがバレたら結局意味なくないか?」

「意味はあるだろ。気持ちの問題っていうか、桃楓ちゃんの頑張りを褒めるのが大事ってことだろ」


 ふむ、確かに一理あるな。

 

「それに、病弱だったあの子が何かを成そうとしているわけだからな。その成長を見守ってやりたくもなってるんだよ」

「……本物の兄貴みたいだな」

「うるせえ」


 恥ずかしそうな蓮司を顔を見て、話は一段落した。


 その後は少しくだらないお喋りをした。桃楓の話をしたせいか、昔の彼女について少し喋った。


 しばらくして、蓮司は思い出したように。


「ところで、相談って何だ?」

「えっ――」

「えっ、じゃないだろ。さっき厄介なことになってるから力を貸してくれとか言ってただろ」

「ああ、忘れてた」

「……しっかりしろよ」


 昔話で気分が舞い上がっていた。気を引き締めねば。


 俺は現在置かれている状況について話した。


 あの料理対決の話から始まり、何故かあの女神達から好意を持たれたこと。紫音を守るために白の派閥に入ったこと。他の派閥から勧誘を受けていること。そして、女神達は俺を自分の派閥に引き込むためにアピールするらしいこと。


「……おいおい、厄介どころじゃねえだろ。大事件だぞ、それ」


 目の前で蓮司が頭を抱えた。

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