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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第3章 無色の再会

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第2話 虹色の衝撃

 白の派閥に所属することを決めた。


 派閥に所属といっても単なる意思表明だ。契約書にサインするわけじゃないし、特別な作業もない。


 それに、今のところ天華コンテストで白瀬に投票する予定もない。


 確かに仲直りはした。しかし過去の出来事を忘れていきなり好印象に変わるとかはない。白瀬は謝罪してくれた。俺はそれを受け入れた。現状ではそれだけだ。


 天華コンテストでは当初の予定通り、紫音に入れるつもりだ。


 義理の妹なわけだが、多くの連中がその事実を知らない。兄貴が妹に投票しても別におかしくはないはずだ。誰かに投票を知られても妹を可愛がっているシスコン気味の男と笑われるだけだろう。


 だったら最初から紫音の支持を表明すればいい?


 それではダメだ。白の派閥に入るのは女神対策だ。


 何故か俺は女神達に好意を持たれている。白瀬の勘によれば、今後派閥に勧誘される可能性が高いらしい。しかし俺としては全然参加したくない。ただ、理由もなく断ると学園で大人気の女神様のプライドを刺激し、女神とその派閥の連中を敵に回す可能性がある。


 そこで白瀬という盾を利用させてもらうことにした。相手が女神じゃない紫音なら圧力をかけられる可能性もあるが、同じ女神である白瀬なら防げるらしい。


「えっ、それって――」

「こういうことだ」


 白いハンカチに真広は驚いた様子だ。


「へえ、翔太って白瀬さん推しだったんだ」

「……まあ、一応そうなるかな」

「ビックリだよ」

「そうか? 相手は女神の一角だし、そこまで驚くことないだろ」

「ほら、翔太って他の女神達と知り合いだからさ。面識のない白瀬さんを支持するのは予想外だったんだよ」


 そういえば、真広は俺と白瀬の関係を知らなかったな。それなら驚くのも頷ける。

 

 赤澤とは言うまでもなくクラスメイトの関係だ。一緒に夏祭りを楽しみ、赤澤の親友である猫田とも良好な関係を築いている。


 青山とは一緒にゲームをプレイしている間柄だ。真広とトリオでゲームの大会に参加した経験もある。


 黒峰とは交際の噂が流れた。噂は否定したが、男嫌いの黒峰がまともに会話できる男子は俺くらいだ。しかも義妹の紫音は黒峰の追っかけをしている。


 それに比べたら俺と白瀬の関係はないように感じるだろう。真広からしたら一番ありえない選択肢ってわけだ。


「実は知り合いなんだ」

「そうなの?」

「以前、義妹いもうとについて話しただろ」

「夏祭りの時に見かけたかも。中学の頃は姫宮女学院に通ってたんだよね?」


 真広に言った時は適当だったけど、あれは事実だった。


「その姫宮女学院で白瀬と部活の先輩後輩関係にあってな。その縁もあって、夏休みに知り合ったんだ」


 全部が嘘ではない。


 実際に紫音と白瀬は同じ学校で、しかも同じ部活だった。夏休みに知り合ったわけじゃないが、夏休みに仲が深まったのは事実だ。


「なるほどね。それなら納得かも」

「あっさり納得したな」

「正直なところ女神達は全員すごく可愛いでしょ。僕だって同じクラスになった赤澤さんを可愛いと思ってるからさ。距離が近くなれば好意を抱くのは自然かも」


 真広の言い分は理解できる。


 あまり大きな声で言いたくはないが、あいつ等のルックスは見事なものだ。これに関してはケチのつけようがない。


 それぞれタイプは異なるが、学園でトップクラスの美少女だ。


「それに、翔太は妹を随分と可愛がってるみたいだし」

「関係あるのか?」

「どっちかといえば白瀬さんって妹系だからさ」


 白瀬の外見は小柄で、顔立ちも童顔だ。


 妹系といえばそうだろうな。口調がお嬢様っぽいので、ロリお嬢様といったところだろうか。


 ロリコンと言われているようで心外だが、この際いいだろう。


 あくまでも白の派閥に入るのは一時的な措置だ。このハンカチは他の女神とか、その派閥の奴等に勧誘された時に防御の切り札として使うものだからな。


「――おはよう!」


 お喋りしていると、隣の席の少女が登校してきた。


「おっす、猫田」

「おはよう、猫田さん」


 俺と真広は挨拶を返す。


 二学期になり、席替えが行われた。俺の隣はまたしても猫田ねこた葉月はづきだった。

 

 その猫田は二学期が始まってからとても晴れやかな表情をしている。夏祭りに見かけたあの時はえらい違いだ。


 猫田の笑顔は俺にとって癒しだったりする。


「ねえ、何の話してたの?」

「派閥についてだよ」


 真広が答えると、猫田は不敵に笑ってポケットに手を突っ込んだ。


「当然、うちの支持は決まってるよ!」


 猫田は赤いハンカチを取り出した。


 そういえば、猫田は一学期の頃から赤いハンカチだった気がする。あまり注視していなかったけど。


 これは当然だろう。親友の支持をしないのは単純に意味不明だし。


 個人的には猫田も投票されるべき美少女だと思っているが、本人はそういうのに興味なさそうだ。ここは何も言わないほうがいいだろう。


「名塚はやっぱり青山さんなの?」

「まあね」

「うぅ、この裏切り者めっ!」

「僕は最初から青山さんの支持者だよ。何と言われても意見は変えないから」


 言葉だけならケンカしているっぽいが、どっちも笑顔だった。微笑ましいやり取りじゃないか。


 とか思っていたら。


「で、虹谷は――えっ?」


 猫田は俺の手にある白いハンカチを見つめて固まった。


「そ、それって……もしかして?」

「翔太は白の派閥に入ったっぽいよ」


 言葉を聞いた猫田は「ええええぇぇ」と大きな声を出して固まった。結構な音量だったのでクラスメイト達がこっちに向く。


「おまっ、勝手に言うな!」 

「え、何かまずいの?」


 真広は小首をかしげる。


「そ、それはだな――」

「ハンカチ持ってたら誰でもわかるでしょ。女神の派閥とかに興味ないって人もいるけど、白いハンカチってかなり目立つから」


 その発言は正しい。


 男子高校生が白いハンカチというのは珍しい。このハンカチを買う時に調べた情報だが、男子高校生が好むのは青系とかチェック柄が多いらしい。


 今のは口止めしていなかった俺が悪い。


 いや違うな。そもそもハンカチを持ち歩く時点で口止めとか関係なかったわ。いずれはバレていただろうし。


「虹谷って……そうだったの?」

「まあ、一応な」


 ちらっと赤澤の席を見た。幸か不幸かまだ登校していなかった。


「恥ずかしいから誰にも言わないでくれるとありがたい」

「わ、わかった。かなり驚いたけど、虹谷には一杯お世話になってるからね。秘密は絶対に守るよ!」

「大袈裟だな。持ち歩く以上は別に秘密じゃないぞ」


 そう言って俺は苦笑いを浮かべた。


 ◇


 その後、猫田とは関係ないところからバレた。


 教室で白いハンカチを出しながら大声で話をしていたらクラスメイトに知られるのは当然だった。


 クラスメイト達から事情聴取されたりした。実は多くの女神と関係を持っていた俺の動向はそれなりに注目されていたらしい。どうして白の派閥なのか質問責めにあった。


 どうやら結構な人が衝撃を受けたらしい。


 昼になる頃には俺が白の派閥に入ったという話はかなり広まっていた。当然、それは女神達の知るところになった。


 午前中最後の授業、ふと視線を感じたので顔を上げてみた。


 赤澤が燃えるような、あるいは鮮血のような真っ赤な瞳でこっちを見ていた。

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