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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第2章 接近の夏休み

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第20話 白い仲直り

 唐突に頭を下げる白瀬。


「翔太さんを傷つけてしまったこと、自分の目的のために利用してしまったこと、本当に申し訳ありませんでした」


 地面に頭をつけて謝る白瀬の姿を俺はジッと見ていた。 


 その姿に過去の出来事やら思い出が瞼に浮かぶ。


 こいつにトドメを刺されてから引きこもっていた俺は、部屋の中で体育座りして独り寂しく部屋の中で恨み言を並べていたものだ。あの頃ならこの光景に対して様々な感情が湧いたことだろう。


「……」


 でも、今は違う。


 頭を下げる白瀬に対して怒りも湧かないし、謝罪させてやったみたいな達成感もなかった。


 二年の歳月と、正体を隠して生活していた一学期と夏休みがあったからだろう。こいつの思考や行動、動機などを知った今だからこんな気持ちになったんだと思う。


 俺は大きく息を吐いた。


「わかった。謝罪を受け入れるよ」

「……えっ、いいんですか?」


 白瀬のほうが驚いていた。


「なんでおまえが驚くんだよ」

「怒ってないのですか?」

「そりゃ、あの直後は怒ったさ。悲しかったぞ」


 白瀬は申し訳なさそうな顔をした。


「確かに当時は大ダメージだった。けど、今となっては二年以上前の話だからな。白瀬の事情も聞いちまったし」

「ですが――」

「大体、怒ったところでどうしようもないだろ。あの時の男は八雲君だったわけだし、その八雲君はめちゃくちゃいい奴ってわかってる。彼は紫音に夢中だからおまえの気持ちは届かないのが確定してる。おまえはそこでダメージ受けてるのに、これ以上追い打ちをかける気もない。こうしてきっちり謝ってくれたわけだしな」


 白瀬と出会った時の俺はもうボロボロだった。


 トドメは刺されたが、白瀬から受けた仕打ちは他の女神に比べればマシだ。劣等感とトラウマを植え付けられたり、病院送りにされたり、悪評を流されて学校に通えなくされたわけではないからな。

 

 許す。白瀬を許す。土下座までしてくれたんだから謝罪も反省も本気だろう。


「復讐とかは考えてはないんですか?」

「ありえないだろ」

「何故ですか。わたくしはあなたを傷つけたのに」

「今の俺には紫音がいるからだ。おまえは学園でぶっちぎりの人気を誇る女神様だぞ。下手に攻撃したらファンに仕返しされるのは目に見えている。そこを敵に回したら何の関係もない紫音も巻き込むことになりかねない」


 白瀬だけじゃなくて他の女神も同様だ。


 こいつ等のファンというか、派閥とかいう連中が暴走したら紫音にも怒りの矛先が向かう可能性がある。


「正体を隠していたのは、復讐するためではないんですね」

「そんなことは考えてない。バレたら昔みたいに攻撃されると思ったからだ」

  

 今の俺にとっては大事なのは過去の恨みを晴らすことではない。新しい家族がいて、新しいクラスメイトがいて、新しい友達がいる。この新生活を楽しむほうが遥かに大事だ。


「白瀬は反省してるんだろ?」

「もちろんですわ!」

「だったらいい。悪いと思ってるなら普通に接してくれたほうが助かる。むしろアレだ、謝る気があるなら今後の生活に関して協力してくれると助かるんだがな。特に、他の女神対策に関して」


 白瀬は再び頭を下げた後、小さく頷いた。


「わかりました。誠意として翔太さんに協力致しますわ」

「じゃ、これで正式に仲直りだ」

「はい」


 こうして俺は二年越しに白瀬と仲直りした。

 

 もしかしたら、俺の対応は甘いかもしれない。


 でも、今の生活を失いたくはない。感情としてはまだ複雑なところもあるが、こいつを怒らせて他の女神達に正体をバラされるくらいならこれが最善だ。

 

 無事に仲直りしたところで。


「で、どうして赤澤との関係を知ってたんだ?」

「犬山さんから聞きました」

「……蓮司から?」

「はい。去年の神会議のことです」


 それから白瀬は事情を話してくれた。


 昨年、男神と女神が決定した後の会議で蓮司が怒り狂って過去に俺がされたことを女神達にぶちまけたらしい。


「……」

 

 我ながら情けない。


 残した手紙が蓮司を苦しめちまったようだ。


 考えればわかったことだ。俺も蓮司が同じような仕打ちを受けたらキレていただろう。でも、言い訳させてもらえるなら当時の俺はそこに気が回るような精神状態じゃなかった。


「じゃあ……他の女神達も俺の事情を知ってるのか」

「そうなります」


 まずいな。


 事情を知られているのは危険だ。俺がされたことを全員共有したってことは嫌がらせの幅が広がったとも取れる。


 けど、実際どうなんだ?


 一学期と夏休みを共に過ごし、あいつ等に対する印象が変わったのは事実だ。俺の正体に気付いていないとはいえ、性格が良さそうに映った。


「……女神って仲悪いんだよな?」

「悪いですわね。確実に」

「原因は?」

「わたくしにもさっぱりです。それまではお互いに特別な干渉もなかったのですが、いきなり攻撃的な態度になったんです。去年の神会議の直後でしたわね」


 そこは聞いていた通りだ。


「俺はその原因を蓮司だと考えていた。白瀬はわからなかったけど、あの三人は蓮司に惚れてるんじゃないかと」

「犬山さんに、ですか?」

「女神達は蓮司に惚れていて、あいつを奪い合ってケンカになったと考えていた」


 そう考えると納得できることがいくつかある。


 女神達のケンカ、そして青山の謝罪チャットだ。


 青山は中学時代に実は蓮司に惚れていて、親友であった俺に謝罪したと蓮司に言い訳をしたかった、という説が浮上するのだ。


 まあ、その後も謝罪チャットを送ってきた青山に関しては本気で反省しているのかもしれないが。

 

「いいえ、原因が犬山さんというのはありえないかと」


 ありえない?


「何故だ?」

「彼女達は犬山さんに対して一切興味を示していませんので」

「照れ隠しだろ」

「考えにくいでしょう。そもそも、犬山さんが女神を嫌悪しています。親友を転校に追いやったのですからね。さすがに女神のほうもそこは理解しているかと」


 恐ろしいほどの正論だった。


「というか、赤澤達は俺の正体に気付いてると思うか?」

「気付いていませんわ。絶対に」

「絶対に?」


 えらい自信だな。


「ええ、絶対です」

「何故言い切れる?」

「知っていたらアクションを起こすはずですから」


 俺と同じ結論だ。


 同じ結論なのだが、白瀬がここまで自信満々な理由は気になるところだ。


「相当大きなアクションに違いありません。わたくしの勘によると、あの方々は虹谷翔太さんに対して強い好意を抱いています。なので、もし正体がバレていたらとんでもない事態になっていると思います。なにせあの方々は無川翔太さんに対しては最低な虐めをしていた方ですから」


 えっ?

 俺に対して強い好意?


 全く予想していなかった言葉であった。

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