表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第2章 接近の夏休み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/128

第12話 青いイベント後

 大会から数日が経過したその日、俺はファミレスにいた。


 テンションは低かった。目の前でニコニコしている青山と、真横でニコニコしている真広に若干の殺意が湧いた。


「まあまあ、機嫌直してよ」

「……ハメやがって」

「翔太って結構単純だよね。人が良いっていうか、騙されるタイプだよね」

「やかましい」


 真広に呼び出された。相談があるからとスマホに連絡があった。いざファミレスに到着すると、そこには青山もいた。


 相談があるというのは真っ赤な嘘だった。どうやら真広と青山は先日行われた大会のお疲れ会を企画していたらしく、俺を呼び出すために相談があると持ちかけた。騙されるタイプなどと言ってくれやがったが、友人から「相談がある」とか持ち掛けられたら普通は結構深刻なものだと思うだろ。


「けど、しょうがないよ。翔太はあの日からディスボにも繋いでないし」

「……」

「嘘吐いたのは謝るけど、何の連絡もないって酷くない?」


 それは一理あるかもな。


 あの大会から俺はどこか気が抜けていた。


 あれからGPEXは繋いでいない。燃え尽き症候群ってわけじゃないが、しばらく触れなくてもいいかなって気分になった。だからディスボにも繋いでいなかった。


「まあまあ、それくらいにしようよ」


 青山が強引に割って入る。


「じゃ、役者も揃ったことで。改めてお疲れ様っ!」

「お疲れ様でした!」

「……お疲れ」


 ドリンクで乾杯する。折角来たので俺も乾杯に混ざる。


「しっかし、あの大会は盛り上がったよね!」


 青山の言葉に真広が頷く。


「僕達が盛り上げたといっても過言じゃないよね」

「だよね。あの追い上げは我ながら凄かったもん」

「最後の試合は手に汗握ったよ」

「同じ気持ちの人も結構いたみたい。あれから配信に来てくれる人も増えたんだ。おかげでモチベが高くてさ」


 先日の大会で活躍したことで視聴者も増えたらしい。


 昨夜チラッと見たら同接も登録者も増加していた。結構な効果があったようだ。コメントでは特攻癖のある俺のプレイスタイルを面白いと言ってくれる視聴者も多かった。特に最後の特攻は普段の青山らしくないプレイで視聴者的には新鮮だったらしい。


「えっ、青山さん今度コラボするの?」

「誘ってくれたからさ……やってみようかなって」

「大丈夫なの? コラボとかしないって聞いてたけど」


 更に青山は大会で戦った人達からコラボの誘いも受けていると話した。


 配信者【青海】はこれまで他の配信者とコラボをしないスタイルだった。どういう風の吹き回しだ。


「ボクも大人になったんだ。今までみたいな閉じコンじゃなくて、これからはもっと人気者を目指していこうかなって。ほら、人脈って大事でしょ」

「ちなみにコラボ相手は?」

「例のVtuberグループの人だよ。今度トリオで戦場に行ってくるんだ」


 大会でしのぎを削ったライバルと友情が芽生えたらしい。聞けばすでにディスボでやり取りしているようだ。年齢も近いので意気投合したという。


 しばらく試合を振り返って話し合った。


 騙されて連れて来られたので最初こそテンションが上がらない俺だが、話をしているとあの時の興奮と感動が戻ってきた。確かに最後の試合の緊張感は凄かった。大会後も興奮していたのか、あの日の夜は妙に目が冴えていたのをよく覚えている。


「次があれば総合優勝したいよね」

「そうだね。僕等も腕を上げておかないと。ねっ、翔太?」

「……次があればな」


 大会の話は終わり、食事をしながら雑談に移っていく。


 話題は学生らしく夏休みの話になった。


 俺はすでに宿題を終わらせていたが、二人はまだ手を付けていないらしい。どちらも大会までゲームばかりしていたようだ。


「そういえば、二人の今後の夏休みの予定は?」


 青山が聞いてくる。


「僕のほうは変わらないかな。宿題して、ゲームして、後は寝てるだけかな。ここまでもそうだったし、夏休みが終わるまで変わらないと思うよ」

「名塚は寂しい非リア生活だね」

「……そういう青山さんは?」

「宿題して、配信して、後は寝てるかな」


 一緒じゃねえか。


「虹谷はどうなの?」

「俺も大差ないな。宿題は終わりかけてるから、家でダラダラしてる。お盆になったら転校前にいた田舎のほうに顔を出して、それから夏の終わりに――」

  

 俺が言いかけると。


「忘れてた。夏祭りがあったね」


 真広が思い出したようにつぶやいた。


「夏祭りって、あの花火大会?」 

「クラスの人達と行くことになってるんだ」

「へえ……って、クラスの人達?」

「結構な数で集まって行く感じだね」

「……それってあいつも、赤澤も来るの?」

「もちろんだよ。というか、彼女と猫田さんが企画したんだ」


 途端に青山の表情が曇った。


 相当仲が悪いらしい。大会で吹っ切れてからの青山はかなりご機嫌だったのに名前が出ただけでこれとは。


 考えるように俯いた後、俺のほうを向いた。


「虹谷は行かないよね?」

「翔太も行くよ」

「えっ、本当!?」

 

 その驚いた顔は何だよ。


 俺にだって協調性はある。クラスメイト達の女子数人に教室で誘われて断れるようなメンタルは持ち合わせていない。大体、夏休み始まる前に夏祭り付近の予定とかあるかわからないし、あの場面では参加すると答える以外にないだろう。


「付き合いってものがあるからな」

「……そっか。友達やクラスメイトとの付き合いは大事だもんね」


 その通りだ。あそこで拒否できる奴がいるなら是非とも見たいよ。


「青山さんは行かないの?」

「誘われたけど人が多いからパスしたんだ。ボクのクラスは興味ないって人が多かったし、個人的には配信したかったしさ。それに、視聴者は夏祭りとか嫌いな人が多いんだよね」


 人気配信者も大変だ。


「けど、二人が行くならボクも参加したいな。日付いつだっけ?」


 青山は日程を調べたが、どうやら例のコラボがその日らしく断念した。


 話題は二転三転した。俳優の熱愛が発覚したとか、アイドルの浮気が報道されたりとか、とりとめのない話をした。


 時間は流れそろそろ解散という頃。


「あのさ、虹谷ってスマホ買ったんでしょ?」

「お、おう」

「ボクにも連絡先教えてくれないかな」


 真広には青山がいない時にこっそりと教えていたので青山は俺がスマホを購入したことを知らなかった。先ほど呼び出した時に知ったらしい。


 断る理由はない。というよりこの状況で断ったら空気が悪すぎる。ちなみに俺の隣にいる真広はすでに青山と連絡先の交換を済ませている。


 青山と連絡先を交換した。


「ありがとね」

「……基本はディスボだからな」

「わかってるよ。じゃ、また一緒にゲームしようね。夏休みの間はいつもログインしてるから、プレイしたくなったら声掛けてよね」


 そして、解散となった。


 俺は店から出て自転車に乗った。出発直前に思い出した。


 ……あれ、そういえば猫田は?


 自転車に跨りながら店内を覗くと猫田はちゃんと働いていた。しかしその表情は明らかに元気がなく、とても曇っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ