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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第2章 接近の夏休み

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第8話 青い作戦会議

『いよいよ明後日だね。大丈夫そう?』


 ボイスチャットから聞こえてくる青山の声はどこか緊張感に満ちていた。


「平気だ。体調はいいし予定もない」

『僕も大丈夫だよ』


 季節は八月を迎えた。


 八月の上旬にGPEXの大会があり、青の女神である青山海未とクラスメイトの名塚真広と共にトリオで参加することになっている。


 大会といっても緩いイベントのようなものだ。配信者を集めた大会で、ガチ勢というよりエンジョイ勢が集まったお祭りのような催しである。


 青山は【青海】という名前で配信を行っている人気配信者であり、主催者から声が掛かった。


 名目としては配信者大会ではあるが、全員が配信者でなくともいいらしい。当日に招待された人が配信をすれば問題ないということで、普段からトリオでプレイしている俺と真広も参加する運びとなった。この少々適当な辺りが緩いイベントといったところだ。


 実のところ俺は楽しみだった。


 大会やらイベントはいつも動画や配信で見ていたが、いざ自分が参加するとなると緊張と共に高揚感があった。


 どうせなら勝ちたい。


 当初はエンジョイ勢だけが参加する予定だったが、プロが二名参加するという話を聞いて気持ちが燃え上がった。


 是非ともその力を生で感じたい。


 というわけで、プールから戻ってきてからはGPEX漬けの生活を送っていた。最近ではパソコンでGPEXをしながら同時にアプリゲームをオートで周回している。


「今さらだけど、良かったのか?」

『なにが?』

「俺達は男だろ。こういうのって女と組んだほうがいいだろ。ほら、配信に俺達の声が入るんだろ」


 視聴者の立場なら女の子が配信してるのに急に男の声が乗っかるのは嫌だったりする。


『平気だよ。もう配信で言っちゃったから。知り合いを誘ったって』

「……そうなのか?」

『そもそも視聴者参加型でよく男の人ともプレイしてたしさ』


 知らなかった。


 それなら問題はなさそうだな。


 大会前々日であるその日、俺達は昼間から練習していた。最近ではすっかり感覚が戻ってきた。お世辞にも上手くはないが、足手まといからは脱却できた。


『楽しみだね』


 楽しみを堪えきれないのは真広も同様だ。


 真広は驚くほどの急成長を見せていた。どうやらこいつは夏休みに入ってから暇だったらしく、毎日のように自主錬に励んでいた。その成果もあって現在では俺より上手い。

 

 昼間から始まった練習は夕方近くまで続いた。


 平均順位も上がっていき、練習が終わるまでに二度優勝できた。最近では優勝も珍しくない。個々の実力と共にチーム力がアップしているんだろう。


『……あのさ、これから作戦会議しない?』


 最後の一戦が終了する直前、青山が切り出した。


「作戦会議?」

『そっ、みんなでご飯でも食べながらさ。本番は強いチームも参加してるし、普通にプレイしてるだけじゃ上位には行けないんだよね。だから、勝つために作戦練ったほうがいいかなって』


 いつでも全力な青山らしいな。


「このままボイチャで話すのは?」

『一緒にご飯を食べることで結束を深める狙いもあるんだよね。声だけだと味気ないし、オンラインだと盗聴の可能性もあるからね』

「……さすがに盗聴はないだろ」


 こいつと飯に行く?


 これが単なる食事のお誘いなら断るところだが、作戦会議と言われて俺の心がぐらついた。大会が素直に楽しみだ。その作戦会議とやらに参加することで勝利が近づくのなら悪くはない。どうせ参加するなら爪痕を残したいし、相手もいることだし全力を出すのが礼儀ってものだろう。


『いいね。作戦会議って本格的で楽しそう』

「……そうだな。俺も行くよ」

 

 ◇


 数十分後。


 俺はメガネからコンタクトにチェンジして自転車に乗り込み、ファミレスに向かった。


 集合場所のファミレスは以前勉強会で使った場所だ。


 家から近い場所だが、我が家ではファミレスに行くという習慣がないのであまり訪れたことがない。ここに来るのも勉強会以来だ。


「おっす」

「久しぶり」


 すでに待っていた真広と合流する。相変わらず中性的な顔立ちだ。家から全然出ていないのか肌は白かった。ずっとゲームしてたな、こいつ。


 夏休みの出来事についてしばらく会話しながら青山を待つ。


「――お待たせ」


 数分して青山がやってきた。


 トレードマークのポニーテールを今日は後ろではなく横で結んでいた。俗にサイドポニーという髪型だった。


 夏らしくラフな格好だ。ショートパンツから覗く美脚がまぶしかった。


 こうして見るとホントに可愛いな。


 ……見た目だけは。


 隣にいる真広は私服姿の青山に心を持っていかれていた。青山に対して恋心みたいなものがあるとか言っていたし、眼福といったところだろう。


 軽くあいさつだけすると、早速店内に入った。


「いらっしゃいませ――って、虹谷っ。それに名塚と青山さん?」


 店員の顔には見覚えがあった。


「猫田?」

「猫田さん?」


 俺と真広が同時に驚く。

 

 店員はクラスメイトの猫田葉月だった。


「どうしてここに? もしかして冷やかしに来たの?」

「単なる偶然だ。猫田こそ、その恰好は――」

「うちはバイトだよ。夏休みに入るちょい前に始めたんだ。遊んでばっかりいたらお金なくなってきたし」


 一学期の猫田は赤澤と仲直りをしてから遊び呆けていた。バイトする必要があったのだろう。納得だ。


 猫田と青山は目が合うと、互いに会釈した。


「あっ、それじゃ案内するね」


 席に通された。


 仕事中に話すわけにもいかなかったのだろう。あいさつだけすると猫田は自分の仕事に戻っていった。


「驚いたね」

「だな。まさか猫田がバイトしてるとは」


 驚く俺達の正面に座る青山が思案顔をしていた。


「……あれって猫田さんだよね?」

 

 青山も東部中学なので真広とも猫田とも同じ学校出身になる。


「そういえば、青山さんは猫田さんと仲いいの?」

「同じクラスになったことないんだよね。だから喋ったこともほとんどないかな」


 昔を思い出すが、確かに喋っていた記憶はないな。


「まっ、それより今は作戦会議だよ」


 それぞれ注文した後、俺達は作戦会議を始めた。


「まずはおさらいから。大会のルールだけど全部で五試合行われる。最終的に持っていたポイントで順位が決まる。ポイントは試合ごとの順位とキル数によって与えられる。だから相手を倒しながら最後まで生存するのが一番ポイントになる」


 最後まで生存しながらキル数を稼ぐのは理想だが、難しいだろう。


 参加する人達を調べてみたけど全員そこそこレベルが高い。俺達と同じように一般参加者も数人いるので正確にはわからないが、普通にプレイしたらチーム力は良くて五分か、少し負けている。大量ポイントを獲得するのは至難の業だ。


「プロはどうするんだ?」


 今回の大会にはプロが二名参加している。


「プロは別チームになるって話だからそこまで深刻にならなくてもいいかな。真正面から撃ち合ったら無理だけど、漁夫れば何とかなるだろうし」


 二名のプロは同じチームではなく別のチームで参加となる。バランスを取るための措置だ。

 

 作戦会議は思ったよりもしっかりしたものだった。


 その後、俺達はどこに降りるのか、どういった行動をするのか、戦術はどうするのか話し合った。会議に夢中になっていると。

 

「ほい、ご注文のチーズ入りハンバーグだよ」


 俺が注文したチーズ入りハンバーグが運ばれてきた。猫田がニコニコしながらテーブルに置いた。


 その後も猫田はてきぱきと料理を運んできた。まだバイトを初めて間もないと言っていたが要領がいいらしい。手慣れたものだった。


「ありがとな」

「美味しく食べてよね。じゃ、ごゆっくりどうぞ」


 最後までニコニコしていた猫田の姿に癒された。転校直後の暗い表情など微塵もない。


 美味しい食事に舌鼓を打ちつつ、その後も作戦を煮詰めていく。様々な状況を考えていくつかの動きを考えた。


「じゃあ、それで行ってみようか。明日は最後の練習で――」


 青山が言い終えようとした時だった。


「あっ、海未ちゃんだ」

「ホントだ。あれ、名塚君もいるじゃん」


 声のするほうに振り向くと二人組の少女が立っていた。


 どこかで見覚えのあるその顔は、かつて東部中学で青山と共に陸上部に所属していた少女達だった。

明日から毎日更新では無くなります。

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