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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
幕間 4色の独白

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青色の独白 後編

 高校生になったボクは天華院学園に入学した。


 自分でも驚いたし、先生や両親もビックリしていた。まさか馬鹿で有名だったボクが進学校に入学できるなんて夢にも思わなかった。


 怪我はすでに完治していたが、陸上に戻る気はなかった。


 ディスボに翔太からの返信はない。GPEXにもログインしていない。


 どうにも行動しないと落ち着かない性分のボクは連絡先を教えてもらおうと再び翔太の家に向かったが、引っ越した後だった。完全にお手上げ状態となった。


 再びGPEXのプレイを開始したが、翔太とくだらない話をしながらプレイしていたあの頃が一番楽しかったと今になって気付いた。


 悶々とした日々の中、ボクは配信者としての活動を始めた。


 元々興味はあった。GPEXを再開してから動画や生放送も毎日のように見ていた。将来はプロゲーマーか配信者になりたいと考えるようになっていた。それに、人気配信者になれば翔太が見てくれるかもしれない。だからアカウントは変えなかった。


 活動を開始した。


 最初は全然人気がなかったけど、続けていく内に段々と登録者が増えていった。


 同級生とも何度かプレイしたのがきっかけで配信者【青海】がボクであると知られてしまった。熱心なファンが積極的に広めてくれたこともあって同接や登録者が増えていった。


 ただ、誰とプレイしてもしっくり来なかった。


 配信に力を入れながら、学園では部活の助っ人などを行っていた。


 運動は得意だったし、体を動かすのは好きだった。頼まれると様々な部活に顔を出した。

 

 そんな風に忙しくしていたら、いつの間にか女神に選ばれていた。


 ボクが選ばれた理由としては部活の助っ人だったり、多くの人とゲームをしてコミュニケーションを取った結果らしい。

 

 女神に興味はなかったが、女神に選ばれたボク以外の人間には興味があった。


 赤澤夕陽は昔からアイドル的存在で、高校でも変わらず人気があった。中学で翔太が孤立した原因はこいつとの噂にある。噂が流れた当初、こいつは翔太をストーカーと認めたらしい。しかし翔太が転校した後でその噂を自ら否定していた。経緯を聞きたかった。


 黒峰月夜は中学三年から急にイメチェンした。こいつも翔太と関係のある噂が出ていたが、ボクはその噂が出始めた頃にはすでに翔太との縁が切れていた。だから事実か否か気になっていた。


 白瀬真雪に関しては全然知らない。見た目は子供っぽい感じだ。可愛いから人気になるのもわかる。


 男神に選出されたのは犬山だった。


 そしてあの日、すべてを知った。

 

 初めての神会議で犬山は激昂した。あの顔は今でも忘れられない。


 赤澤夕陽は最低だ。幼馴染の翔太をストーカーだと言いふらし、ストレスを解消するように本人に向かって様々な悪口をぶつけて長年に渡って傷つけた。


 黒峰月夜もクズだ。自分を守ってくれた翔太を犯罪者にして、自分は被害者面して周囲からの同情を集めた。


 白瀬真雪は救いようがない。傷心で心が壊れてる翔太に近づいて恋人になり、あっという間に別の男と付き合って心をへし折った。


 聞かされた話はどれも信じられないもので、胸糞悪かった。


 でも――


「おまえは親友とか言ってたくせに翔太を無視したり悪口を言ったりして、傷つけた。挙句の果てに階段から突き落として大怪我させたっ!」


 改めて聞かされるとボクも大概だった。


 ボクが翔太を無視したのも事実だし、悪口を言ったこともある。階段から転落した事件も体調管理ができていれば回避できたものだ。


 だから黙って受け止めた。


 怒りに震える犬山の姿にボクの心は罪悪感で満たされた。彼はボクみたいに裏切ったわけでもなく、翔太が優しさで関係を絶った親友。


 犬山の気持ちを想うとなにも言い返せなかった。


 すべてを知ったボクの頭はぐちゃぐちゃだった。

 

 ただ、確実なのは”敵”が出来たこと。


 こいつ等は犬山が激怒しているときに反論しなかった。つまり、全部真実ってことだ。最低だ。許せない連中だ。


 ◇


 高校二年になった。


 あの悪魔共との関係は最悪だった。ボクもケンカ腰だったが、連中も犬山にバラされて正体を隠す必要がなくなったのか常にケンカ腰だ。おかげで会議はいつも大荒れだった。


 そんなある日、転校生がやってきた。


 周りの話では爽やか系でそこそこイケメンらしい。


 全然興味なかった。だから偶然廊下ですれ違った時は酷く狼狽したものだ。


「……えっ?」


 転校生は翔太だった。思わず変な声が出てしまった。


 姿は変わっていたし、苗字も違っていた。

 

 でも見間違えるはずがない。髪を短くして、メガネを掛けていない姿は小学生の頃の翔太そのものだったから。一番記憶に残っている姿を見間違えるわけがない。

 

 けれど、確信を持てなかった。


 二年の空白期間があり、半年ほど喋らなかった期間があるのだから。


 それに本物の翔太なら疑問が残る。あいつの隣にいたのは名塚だった。名塚は東部中学校出身だから知っている。だから違和感がある。


 中学時代に翔太がされたことを考えると中学の頃を思い出したくないはずだ。それなのにわざわざ名塚と仲良くするだろうか?


 再会を懐かしむ気持ちと、謝りたい気持ちを堪えて様子を見ることにした。


 ある日だった。翔太らしき奴はGPEXの話をしていた。


 チャンスだ。


 ボクは意を決して話しかけた。


「君は確か……転校生の」

「虹谷だ」

「そうそう。虹谷翔太君だね。よろしく」


 我ながら演技力がなさすぎる。完全に声が震えていた。


 間近で見る顔は翔太そのものだった。困惑した表情をしていたが、それでもボクは強引に押し切った。一緒にプレイする約束をした。

 

 その日の夜。


 いつものように配信していると、異変が発生した。突如としてGPEXの翔太のアカウントがオンラインになった。


『えっ、嘘でしょ?』


 思わず配信中に声を出してしまった。

 

 焦ったボクは招待を連打した。自分でも何をしているのかわからない程に混乱していた。

 

 翔太は招待に応じなかった。

 

 ただ、そこで確信した。


 約束した直後にログインがあった。これを偶然と片付けられるほど馬鹿ではない。虹谷翔太は無川翔太だ。


 その日の配信を終了させ、ボクは頭を働かせる。


 苗字が変わっていたのは親の再婚だろう。こっちに戻ってきた経緯はわからないけど、あいつの性格と犬山の話から考えて復讐とかの類ではないだろう。名塚と仲良くしてたのはもしかして情報収集だったりするのかな?


 より詳しい情報を得るため学校での翔太をチェックした。


 最大のポイントは同じクラスの赤澤だ。翔太とあいつは同じクラスだった。距離感は単なるクラスメイトだ。それとなく周囲の話を聞くと、翔太は赤澤と猫田葉月を仲直りさせたらしいことも聞いた。

 

 ……どうして?


 そもそも赤澤は虹谷翔太が無川翔太だと気付いているのだろうか。幼馴染といってもあいつは翔太のことが嫌いだと判明している。


 もしかして、ボク以外は【無川翔太=虹谷翔太】に気付いていない?


 仮説を立てる。


 翔太は自分の正体を隠そうとしている。


 転校してきた経緯は知らないが、翔太はこの地に良いイメージを持っていない。で、転校してきた翔太はたまたま天華院に転入した。ボクが天華院に入学したことは翔太のお母さんも知らないし、あの悪魔共の進学先も知らないはずだ。


 転校早々絶望した翔太だったけど、自分の正体がバレていないと気付いた。

 

 だから別人のように振る舞った。赤澤と猫田を仲直りさせたのは自分が無川翔太とバレないようにするためのカモフラージュ。もし無川翔太なら赤澤の助けになるようなマネはしないはず、といった感じで行動した。


 仮説を立てると納得がいった。

 

 素っ頓狂な推理をすると、記憶喪失になってしまったとかの可能性もあるだろうけど、それならボクと約束した日にGPEXにログインするのはおかしい。


「……だったらボクが言うわけにはいかないよな」


 翔太がバレたくないのはボクを含めた女神達だ。翔太に気付いていると言ったらショックを受け、また転校してしまうかもしれない。


 心苦しいけど、気付かれないことがあいつの望みだろう。今度こそボクは間違えない。いつか自分の口で告げてくれるまで黙っていよう。そして、正体を明かしてくれたらあの時のことを謝ろう。


 数日後、一緒にGPEXをプレイした。翔太は少し下手になっていたが、好きな武器や戦い方は変わっていなかった。


 特に最後だ。突っ込んで返り討ちにあうところなんて昔とちっとも変わらない。まるで成長していないが、あいつらしくて笑えてきた。


 プレイ後に声を掛けてみた。


 軽く探りを入れた。多分、ボクはある種の期待をしていたんだと思う。二人きりになればもしかしたら打ち明けてくれるかもしれない、と。


 でも、正体を明かしてはくれなかった。


『っ、声は違うだろ、声は』


 面白い返しをしてきた。


 確かにあの頃の翔太とは声が違った。声が低くなっていた。でも、かつての親友の耳を誤魔化せると思ったら大間違いだ。喋り方も変わってないし、プレイスタイルも同じ。これで気付かないほうがどうかしている。本人が誤魔化せていると思っている辺りが本当に翔太って感じだ。


「うーん、声は確かに違うかな。あいつはもっと声高かったし」

 

 そう合わせておいた。


 確信を得てからボクは翔太とたまにゲームをする関係になった。相変わらず楽しかった。あいつとは波長も合う。それに名塚もいい奴で、昔に戻った感覚だ。


 しかし、状況は悪い方向に変化していった。


 あの悪魔共が動き出した。


 突如、黒峰と付き合っている噂が流れた。続いて白瀬が友達になったと会議に翔太を連れて来た。


 あいつ等も赤澤と同じで【無川翔太=虹谷翔太】とはなっていないはずだ。単なる偶然に翔太が巻き込まれた。もしかしたら女神の地位に固執し、転校生の票が欲しかったのかもしれない。


 その後、テスト勝負になった。


 テスト勝負では分がないのは承知だ。それでもボクは人生で一番勉強をした。終業式の挨拶はどうでもいいけど、こいつ等に負けるのが癪だった。


 結果は惨敗――


 ボクはあの時、とてつもないショックを受けた。


 テストの結果で負けたからじゃない。


 掲示板で翔太を見たからだ。見つめる視線の先には学年トップに輝いた犬山の名前があった。その名前を見た時、翔太が本当に嬉しそうな顔をしていた。


 裏切者であるボクとの差を感じた。


 その後、終業式前に再びトリオでGPEXをした。その際に赤澤と打ち上げでカラオケに行ったと聞き、更に焦った。

 

 このままではまずいと前から誘われていたGPEXのイベントに参加を決め、それに翔太と名塚を誘った。


 そして、ボクの一学期は終了した。


 ◇


 ベッドから飛び起きる。


 あれからずっと考えていた。


 悪魔共の狙いはわからない。でも、このまま放置しておくとロクなことにならない。黒は交際の噂を否定したので措いておくとして、赤と白は積極的に翔太に近づいている気がする。


「よし、決めた!」


 やっぱりゲーム仲間だけでなく、翔太とまた友達になりたい。出来れば遠慮なく何でも言い合えたあの頃に戻りたい。図々しい願いだけど。


 なにより、あの悪魔共から翔太を守りたい。


 ボクの行うミッションはいくつもある。前提としてあいつ等に【無川翔太=虹谷翔太】と気付かれないようにする。その上で翔太をあいつ等の魔の手から守り、そして翔太とまた友達になる。


 とても難しい。難しいけど、こなしてみせる。


 決意したボクは何となく体を動かしたい気分になり、外に飛び出した。

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