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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第1章 4色の接触

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第24話 虹色の勉強会

 神々によるテスト対決の話題はあっという間に広がった。

 

 その話題は当人達だけでなく、多くの生徒に影響を与えた。


「赤澤さんだろ。勉強も運動も完璧だぞ」

「海未ちゃんも半端じゃねえぞ。テストの度に順位が上がってる」

「月夜様に決まってるでしょ。去年の学年末二位だったんだから」

「いいや真雪たんだ。この間の中間テスト学年二位だぞ」


 それぞれの派閥の連中があちこちで論争している。


 おかげで学生達のテストに向ける意識は強くなった。休み時間のお喋りは少なくなり、どの生徒達も真剣に机とにらめっこするようになった。


 神の対決に興味のない俺だったが、勉強はしっかりしていた。クラスのみんなが勉強していると自分もしなければいけないという使命感に駆られ集中力がアップしている。これならいい点数が期待できそうだ。


「――さすがは翔太だね。まさか勝負にするとは」


 真広はいつもと変わらぬ顔で話しかけて来る。


「あの場ではあれが最適だったんだ」

「そう言えるのは翔太だけだよ。女神達があんまり仲良くないって知ってるから勝負を焚きつけるような事は今まで誰もしなかったんだ」

「……まずかったか?」

「別にいいんじゃないかな。ほら、おかげでみんなのやる気が出たみたいだし」


 そう言われてホッとする。一部険悪なところもあるが、テスト勝負というイベントは生徒達にとって刺激になっているようだ。


 しかし、たかが終業式の挨拶に大袈裟だろ。


 そもそも本来は生徒じゃなくて校長先生とかが挨拶するもののはずだ。生徒に挨拶させるとか職務放棄だろ。


「女神様達も露出するチャンスだからやる気十分だね」

「そうまでしてなりたいかね。女神に」

「この学園において神の称号を持つってことは重要なんだよ。進学にも就職にも大きく関係するしね」

「そうなのか?」

「容姿だけでなく生徒から信頼を得ている証拠だしね。それにほら、例えば大学のミスコンとかで優勝すると就職に有利って聞いたことあるでしょ?」


 見た目の良さが求められる職業もあるだろう。実際にミスコン優勝者は女子アナウンサーとして活躍していると聞く。


「結構有名だよ、天華院の神制度って」

「それは理解したが、あそこまでいがみ合う必要なくないか。俺が無理やり会議に参加させられた時の空気やばかったぞ。一歩間違えば事件になってたぞ」


 説明を聞くかぎりではケンカするメリットがまるでない。同票とはいえ女神に選出されてるわけだし、今年も獲得する意味はないだろう。


 一度でも女神を獲得していれば進学とか就職に有利のはずだ。連続して獲得すればそりゃ名誉かもしれないが、特に恩恵はないように感じる。


「特権のためかもね」

「……初耳だな。特権とか」

「神に選ばれると特権が与えられるんだよ。食堂で食べ放題になったり、神専用の部屋が与えられたりね。今の神達はあんまり利用してないけど」


 食べ放題に神専用の部屋まであるのか。素直に羨ましい。俺もなにかの間違いで男神ワンチャンないだろうか。

 

 ……まあないだろうな。


 どう見ても目の前の真広のほうがモテそうだし。


「後はプライドじゃないかな。去年の天華コンテストが終わった直後、女神達は急にやる気になったんだ。去年のコンテストまではお互いそれほど興味もないって感じだったのに、突如としてバチバチになってさ」

「……じゃあ、仲が悪くなったのもそれか?」

「コンテスト終わりからだった気がするよ」


 去年のコンテスト直後か。

 その頃ここにいなかった俺には何が起こったのか想像もできない。


「そう言われると僕も気になるかな。もしかしたら神会議で何かあったのかもしれないね。だとしたら男神関係だったりして」

「男神といえば、今回の勝負に急遽参戦してきたらしいな」


 今回の勝負に参加してきたらしい男神についての情報はまるでない。そもそも男に興味もないが、今回の勝負に参加してくるからには学力に自信はあるのだろう。


「完璧超人のイケメンだよ。気になる?」

「野郎に興味はないが、神はイケメンと美少女か。あれこれ邪推しちまうな」

「実際に男神と女神がカップルになったケースは過去に何度もあったらしいよ。会議は基本的に二人きりだから親密にもなるし」

「ありがちだな」


 男神の話が一段落すると、話題はテストの方向に流れた。テスト範囲や問題の傾向について話をした。


 そして昼休みが終わろうかという頃。


「翔太、よければ放課後一緒に勉強しない?」


 勉強熱にあてられたのか、真広がそう提案してきた。


「勉強会か。捗りそうだな」

「僕としても青山さんに良い所をみせたいからね。今回は高い順位狙っていくつもりだよ。青の派閥の一員として不甲斐ない成績は避けたいからね」

「俺は構わないぞ。なら、放課後――」


 その時だった。


 隣から捨て猫のような声が聞こえてきた。視線を向けるとゾンビよろしく机に項垂れ、涙目の猫田がいた。


 ジッと見ていると猫田はぐるりと首を反転させて俺と目が合う。


「……猫田?」

「お願いします、うちも仲間に入れてください!」


 涙目の猫田が俺と真広の腕を掴むと深々と頭を下げた。

 

 こうして三人で勉強会をすることになった。



 勉強会は近所のファミレスで行われることになった。

 

 夕飯も食べられるし、飲み物にも困らない。お金もそこまでは掛からないと三拍子揃っていたので即採用となった。


 勉強会が始まって数十分。


「……おまえ馬鹿だったのか」

「馬鹿って言うなし!」


 猫田の学力は思った以上に深刻だった。


 問題ありどころかこのままでは赤点待ったなしだ。どうしてここまで酷いのかと問いたくなるくらいには酷い。


 話を聞けば原因がわかった。赤澤と仲直りしたのが転機となり、放課後はいつも遊び歩いているらしい。


 今まで抑圧されていた反動だろうか。これまで遊べなかったうっ憤を晴らすかのごとくカラオケに行ったり、ゲーセンに行ったり、ショッピングに行ったりしていたようだ。


 おかげで成績は急降下。


 去年は普通のよりもちょい下くらいだったが、今では最下位に近い。中間テストでも過去最低点を更新したらしい。


「赤澤さんに教えてもらわなかったの?」

「夕陽は今回気合い入ってるから」

「……そっか」


 あいつも足手纏いに教えているヒマはないってわけだ。

 

 そこまで勝利にこだわる理由が逆に気になるくらいだな。


 愚痴っていても仕方がない。俺と真広は協力して猫田に教えながら、ついでに自分の勉強をちょくちょく進めた。


 二時間ほどが経過した。


 猫田が限界を訴えたので、休憩がてら食事をすることにした。それぞれ注文して食べ始めた。猫田は食欲旺盛で俺や真広よりも多く食べていた。


「そういえば、虹谷ってまだスマホ買わないの?」


 食後にジュースを飲みながらそんなことを尋ねてきた。


「僕も聞きたかったよ。早く連絡先交換したいんだよね」

 

 以前、スマホがないと言った時に騒動となったことを思い出す。田舎者のごり押しで躱したつもりだったが、さすがに今どきの高校生がスマホなしというのはありえないらしい。


「スマホいらないとか虹谷のいたところどんなレベルの田舎だったのさ。今は田舎でも必須らしいけど」

「と言われてもな。案内するにしても遠すぎるからな」

「じゃあ卒アル見せてよ。あっ、そうだ。卒アル見せ合わない?」


 卒業アルバムを見せ合う?


 その申し出に少し揺れた。


 単純に見たい。俺が転校してからあの学校は荒れてしまったらしい。どう変化したのか気になる。


「虹谷も気になるでしょ。夕陽の中学時代」


 確かにちょっとは気になる。赤澤以外の二人の女神も気になるところだ。特に黒峰はどう変化したのか見たい。


「じゃあ、期末テストが終わったら見せ合うか」

「それじゃ打ち上げで見せ合おうよ!」

「了解だ」

「よっし、超やる気出てきたよ。うち頑張るからね!」


 テンションの上がった猫田はノートに向き合う。


「……あのさ、名塚も虹谷もありがとね。ホントはうちみたいな足手纏いに付き合わなくてもいいのにさ」

 

 俺と真広は顔を見合わせて笑う。


「気にするなって。猫田に教えることで復習にもなってるからな」

「そうだよ。楽しく勉強出来て僕としても良かったかな」


 食後、俺達は再び勉強を開始した。朗らかな雰囲気の中で行われた勉強会は中々に集中できて大満足だった。

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