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4色の女神達~俺を壊した悪魔共と何故か始まるラブコメディ~  作者: かわいさん
第1章 4色の接触

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第19話 白い追跡者

 期末テストに向けて学園の雰囲気がひりついてきた頃。


 俺はクソみたいな女にクソみたいな条件を突きつけられ戸惑っていた。勉強は進めているが、どうにも身が入らなかった。


 白瀬から持ち掛けられた話は保留とした。


 その前にすべきことがあるからだ。


「ついに最後の女神の情報が知りたくなったみたいだね」


 真広が満面の笑みを浮かべる。


「どうしてうれしそうなんだ?」

「僕としては友人である翔太が誰を推すのか興味あるんだ」


 誰も推すわけないだろ。


 とはいえ、そこは思春期代表の高校生だ。好きな相手とか推しのアイドルみたいな話題は全員好きだったりする。


 天華院においてそれは【4色の女神】である。


「今のところ推しは誰なの?」

「特にないな」

「女神以外を推す感じか」

「普通に誰も推さないぞ」

「じゃあ、天華コンテストで誰に投票するの?」

「誰にも投票しねえよ」


 コンテストに参加しなければいい。


「それは無理だよ。投票は全員参加だからね。生徒の義務みたいなもの」

「……嫌な義務だな」

「ある種のお祭りだからしょうがないよ。しかも投票先がバレるからね」

「最悪だな」

「まあ、詳しいことは天華コンテストが近づいたら話すよ。で、今は誰に入れるつもりなの?」


 現在の女神達に入れる気はない。

 

 となると、選択肢は狭まってくる。


 他のクラスの人間とはあまり交流していない。それこそ女神とかいう悪魔連中くらいだ。連中に入れる気がない以上はクラスメイトが妥当だろう。


 有力なのは隣の席の猫田だろうか。


 猫田も中々に人気がありそうだ。仲直りして以来、彼女はすっかりかつての輝きを取り戻してクラスの人気者になっている。


 もっとも、赤澤と親友だから票が割れそうな気もするが。


 しかし猫田に入れるのも問題がある。仲直りさせるためにお節介したわけだが、投票したら好きって告白するのに近い気がする。下心ありきだと邪推されるのも面倒だ。


「……今の段階なら義妹かな」

「そういえば一年生にいるって言ってたね」

「まあな」

「僕も妹がいるけど仲良くないんだ。翔太のところは仲いいんだね」

「一応な」


 仲良しではないが、特に仲は悪くない。どう接していいのか迷っているのが本音だ。あっちも俺に対して好意的だが、年頃のせいかどこか遠慮している節があるし。

 

 長々と妹について喋ると義理の兄妹であるとバレる恐れがあるので話を打ち切る。


「その話は今度でいいだろ。肝心の白の女神についての情報は?」

「白の女神様だったね。前にも話した通り彼女だけ違う中学校だったんだ」

「……じゃあ、情報は少ない感じか」

「白瀬さんとは去年同じクラスだったからそこそこ知ってるかな」


 ほう、そいつは期待だな。


「白瀬さんの特徴は圧倒的に目立つ容姿と家柄だね。小柄で童顔、それでいてお嬢様。運動神経はないけど、学力に関しては黒峰さんと並んでトップクラス」


 白瀬真雪の特徴はわかりやすい。圧倒的に目立つ容姿にある。


 あいつはめちゃくちゃ可愛いのだ。可愛いというのは美少女というよりもマスコット的な意味合いが大きい。白瀬は身長が140センチ台前半で、どう見ても小学生にしか見えない童顔である。ランドセルを背負えば今でも現役で通用するだろう。


 そして、お嬢様だ。


 父親が会社を経営している社長令嬢でもある。


「へえ、お嬢様なのか」


 毎度のことながら知らないフリをする。


「そうだよ。お父さんが社長さんだってさ」

「……お嬢様なら姫宮ひめみや女学院っぽいけどな」


 無論、俺はあいつが姫宮女学院の生徒だったと知っている。

 姫宮女学院はここからそう遠くない場所にある中高一貫の女子校である。


「おっ、凄いね。大当たりだよ。彼女は姫宮女学院に通ってたけど、わざわざこっちに進学してきたみたいだよ。理由は知らないけどね」

「なるほどな」

「翔太はよく姫宮女学院知ってたね?」

「……」


 しまった。またやっちまった。


「じっ、実は俺の義妹も姫宮女学院からこっちに来たんだよ」

「そうなんだ」


 適当言っちまった。すまない。


「白瀬さんの続きだけど、ロリ系のお嬢様って独特だからね。おまけにちょっとポンコツなところもあるんだよね。男子からは庇護欲を駆り立てられるからって人気があって、女子からもマスコット的な見方されたりしてるみたいだよ」

「納得だ」

「ただ、今年は彼女強いと思うよ」

「何故だ?」

「イケメンな弟がいるんだよ。これがポイント高いみたい」


 イケメンな弟?


「そう。彼に近づきたくて白瀬さんと仲良くしてる女子もいるみたい。そういうわけだから今年は去年よりも得票数が伸びるって予想されてるね」


 おいおい、弟がいるなら彼氏役をそいつに頼めばよくないか。どうしてわざわざ俺に声を掛けてきたんだよ。


 しばし考えても答えは出なかった。



「引き受けてくれるんですか?」


 放課後、俺は再びマンションの近くで白瀬に捕まった。


「その前に二つ聞きたい」

「何でしょうか」

「おまえはここで暮らしているのか?」

「はい、一人暮らしを始めました。つい先日から」


 なるほど今まで遭遇しなかったわけだ。

 

 偶然にも我が家と近かったわけか。しかしお嬢様なのにマンションで一人暮らしとは予想外というか、ちぐはぐな感じもするな。


「で、もう一つ質問だ。恋人のフリをするって話だが、恋人はいないのか?」

 

 こいつとはかつて交際していた。


 その際、俺はフラれた。


 単なる失恋ではない。恋人になって一週間も経たないうちに本命の彼氏を俺の前に連れてきやがった。


「常識的に考えてください。彼氏がいたらあなたに頼むはずがありません」


 つまりあの男とは別れたのか。


「……わかった。条件を守ってくれるなら引き受ける」

「ありがとうございます。言質は取りましたよ」


 いろいろと考えても答えはでなかった。ならば白瀬が出した今後近づかないという報酬を受け取ったほうが有益だ。


 要求を突っぱねて敵に回すと面倒そうだ。クソみたいな条件で脅して来るような女だしな。


 それにだ、事件が発生したら胸糞悪い。ストーカーは何をするかわからない。


「具体的にはどうするんだ?」

「次の土曜日にデートしてください」

「……」


 確かに恋人のフリをすると言ったが、さすがに即答できなかった。


「ダメですか?」

「ダメじゃないが、ストーカーがその様子を見るとは限らないだろ。気は進まないが、下校中にこうして話すって行為を何度か繰り返すのが一番効果的じゃないか」

「大丈夫ですよ。弟にはそれとなく伝えますから」

 

 何だって?

 

「弟に伝えるって……ああっ、なるほどな。弟君もストーカー退治に協力するって意味か。相手が力づくで迫ってくる可能性もあるし、人数は多い方がいいよな」

「いいえ、弟がストーカーなんです」

「……?」


 理解が追い付かなかった。


「混乱させてしまいましたね。わたくし、父とケンカして家を飛び出しました。弟は父の手先でわたくしを家に連れ戻そうとしています」

「それって、つまり単なる家出か?」

「言い方を変えればそうなります」


 心配して損した。体から力が抜ける。


「何ですか、その顔は」

「急激に馬鹿々々しくなったからさ」

「わたくしにとっては大問題です」

「……家出の理由は?」 

「知らない人と結婚させられそうになったのでケンカして家を飛び出しました」


 つまり、知らない男と結婚させられそうだから俺という決まった相手がいると弟君に説明するわけだ。


 普通にバレるだろ。


「弟はとても単純です。恋人が出来たと言ってデートしている姿を見せれば納得してくれるでしょう。それが父にも伝わるはずです」

「単純なら上手く丸め込んで仲間に引き抜けよ」

「……いいえ、これが最善の方法です」


 どこがだよ。


「悪いがパスだ。家族の問題ならそっちで解決してくれ」

「ダメです。言質は取りましたから」


 騙し討ちみたいなマネをしやがる。


 ここで変にケチ付けるのは良くないだろう。録音とかされていたらアウトだ。嘘つきと言い触らされたら今後の生活に支障が出る。言質を取られた俺の負けだ。


「……了解」

「では、連絡先を教えてください。恋人のフリをするのに連絡先を知らないのはありえないので」


 スマホを取り出す白瀬だが、俺はスマホを出さない。


 というよりも、出せない。


「どうしました?」

「……スマホを持っていない」


 スマホを持っていない。


 親からも持つように言われているが、パソコンがあれば特に必要ないと思ったので拒否していた。学校でもスマホを持っていないと言ったら驚かれたものだ。クラスで持っていないのは俺だけで、クラスのグループに入れない云々で騒がれた。


 理由に関しては田舎者をごり押しをした。


『田舎には必要なかった』

『田舎最強』

『田舎こそ至高』


 みたいな感じで説明するとふわっと了承してくれた。


 弁解をしておくと転校前の高校でも全員スマホを持っていた。俺が持たないのは元々家が貧乏だったので母に迷惑をかけたくなかったからだ。]


 今持っていないのはその名残りだ。別にスマホアンチとかそういうわけじゃなく、単純に必要性を感じていない。


「……なるほど」

 

 なるほど?


「では、土曜日の朝九時に駅前集合で」

「わかった。それから、約束は守ってもらうからな」

「もちろんです。問題を解決していただければ虹谷さんには今後近づかないと約束しますわ」


 言質は取った。

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