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花を売る娘さん
小さな花屋で、その娘は働いている
一目見たとき、なんと可憐な娘だと
それはそれは、まるで雨後に咲いた
しめやかなる一輪の鈴蘭のよう
可憐な娘さん
店の奥にある椅子に座り
うつむき加減に本を読んでいる娘
その姿は一輪の石南花のよう
ある晴れた日にその娘を見ると
それはそれは、輝かんばかりの若さと
あふれんばかりの瑞々しさをもって
店先に立っていた
凛々しく、清廉なふんいきを湛えて
花屋の娘さんは、にっこりと笑う
その笑顔は、たおやかなる紅梅のよう
花屋が閉まっていたある日
その花屋の娘さんは
お店に帰って来るところだった
黒い礼服を身に着けて……
その姿は哀しげで、くらい横顔
そんな娘さんは、まるで彼岸花
長い、濡れたような黒髪
赤い唇
その姿に、わたしは死の予感と
生命の隠された蠱惑に
惹きつけられてしまった
わたしの心には
人には見えざる
花が咲く




