先生たちの出陣 ②
リースはダンジョンから戻ってきた4人の様子から事態をいち早く察した。
(装備に汚れや傷が無い……。浮かない顔から察するに、トラップエリアか、厄介なモンスターでしょうね)
職員室へと戻った4人はその場に居合わせた先生達と緊急会議を開いた。
「えー、結論から申し上げますと、我々の実力では手に負えないと判断致しました」
教頭の言葉に職員室がザワついた。
実戦経験が浅い先生が大半を占めるこの学園で、今回探索した4人以上に強い先生はもう居ないのだ……。
「地下3階は即死攻撃のリーパーバニー。地下4階は物理無効のガス状生物が居ました。後者の方は識別が間に合いませんでしたが、おそらくはガスクラウドかと……」
教科書に書かれている危険モンスター。
その大半は『速やかに退避すべし』もしくは『遭遇するべからず』とある。
しかし、その姿を実際に目の当たりにし、なお『立ち向かう』となると話しは変わる。
「どうやらその道のプロに頼むしか無い様ですね……」
職員室の扉が開き、初老の人間の男が中へと入る。
教員が立ち上がり、一応に挨拶を投げる。
「校長先生!」
教頭が校長先生と呼ばれた男の肩へと飛び移る。
「生徒の命が最優先です。城の方へ依頼を出しましょう。近く冒険者の方々がお見えになるはずです」
校長先生の提案に意見する者は居なかった。
部屋の片隅で会議に混じっていたリースは嬉々とした表情を見せ、近々訪れるであろう探索の続きに胸を踊られていた。
「あ……ウッズ……」
トウマは学校ですれ違ったウッズに話しかけた。
ウッズは無言で立ち止まり、トウマの言葉を待った。
「……その…………昨日はすまなかった」
トウマは気まずそうに軽く頭を下げた。
「気にするな。きっと誰にでもあることさ」
ウッズは少し笑って応えた。
「……じゃ」
ウッズが立ち去ろうと歩き始める。
「なあ!」
気が付くとトウマはウッズを呼び止めていた。
立ち止まり、こちらを振り向くウッズ。
「怖くなかったのか?」
トウマの問いに間を置かずウッズは答えた。
「あれで危険度Cだせ?今でも手が震えてるよ……」
ウッズは微かに震える手を握りしめ、再び歩き出した。
次の授業中、トウマは新品に近い自分の教科書を久し振りにめくった。
ダンジョンに生息する危険モンスターのページには、不細工なウサギの姿があり『危険度C』『首斬り注意』とあった。
(きっとリース先生みたいな人は、屁でもねえんだろうな……。俺からしたら危険度Sだったな……)
その日、トウマは初めて授業を真面目に聞いた……。
先生達の敗走から数日後。
「やっと着いたな」
馬車から3人の男達が現れ、学園へと足を踏み入れる。
「ここって酒飲めるのかよ?」
「生徒への模範的な行動も依頼要項に入っている。酒トラブルは御法度だぞ」
「げ!マジかよ……」
「オイラは何でもいいけどね……」
とても学園に縁があるように見えない3人の男は、校庭の隅で座っていた男に声を掛けた。
「ああ、ゴメン。校長室に行きたいんだが、案内して貰えないかな?」
顔に大きな傷のある人間。ガラの悪そうなエルフ。飄々としたフェアリー。
異様な3人組を一目見てトウマは確信する。
――冒険者だ!!
読んで頂きましてありがとうございました。
更新ペースは週1~2になるかと思います。
すみません。




