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これぞ冒険! ②

「そりゃ!」


 スライムを斬り飛ばし、剣を納めるトウマ。

 眼前には『keep out』と書かれた札が掛かっており、ポッカリと空いた洞穴が冒険者達を未知へと誘っていた。


「さ、ここからは本気で行くわよ。後衛組はマッピング。前衛組は敵への警戒をお願い」


 そしてリースは短い詠唱で呪文をいくつか展開した。

 それぞれの足元に常に北を示す魔法陣を展開し、瞳には魔力で隠蔽された仕掛けを見破る呪文をかける。


「え!? 見え方がいつもと違うよ!」

 生徒たちが驚きお互いの顔を見合わせた。


「罠や隠された扉が見える様になったわ。多少の闇でも見える様になっているから、暗くても安心よ♪」


 さらに呪文を詠唱すると、皆の身体が地面から数cm程浮き上がった。


「わわっ!」

 腕を振りバランスを取る生徒たち。


「ダンジョンに足跡を残さない為よ。さ、生きましょう」





 未探索へと足を踏み入れた生徒たち。

 リースは地面の質を指で確認した。


「空気も澱んでない上に、適度にモンスターが歩いた形跡もある。皆、気を付けて」


 生徒たちに緊張が走る……。


「へへ、ゴンベの野郎ビビってやがるぜ……」

 後ろでキョロキョロと周りを見渡すゴンベの足は震えているが、前を歩く2人の肩もガチガチに緊張していた。


(ふふ、何だか懐かしい気分になるわ)

 リースは昔々、まだ駆け出しの頃を思い出した。


(何か居るわね……)


 細い通路を進んでいると、前方から黒い人影が2人歩いて来る……。


「ひっ!……出た……」


「きっとゾンビね」


 腐敗して崩れ始めた身体をヨロヨロと動かしては、不快な空気と生臭い臭いを撒き散らしゾンビが二体襲いかかってきた!


「さぁ!行くわよ!」

 リースが生徒たちに気合いを入れる!




  ゾンビ 2


「トウマ君右! ウッズ君左!」


「「はい!!」」


 そろぞれ言われたとおり、別のゾンビに斬りかかる2人。

 トウマは、各個撃破した方が良いのでは?と思ったが言われた通りに動く事にした。


 肩へ深く斬り込むトウマに対し、ウッズは胴を切り払い、一撃離脱を図った。


「シルフィ左!」


「……はぃ!」

 返事と同時にシルフィの手から小さな火炎弾が飛び出し、左のゾンビの顔にヒットした!


 ゾンビは倒れ、泡の様に消え始める。


「ゴンベ君トドメよ!」


「え、あ!」


 ゴンベは戸惑いながらも、トウマの剣で動きが止まったゾンビの身体へ深々とダガーをねじ込んだ。

 ゾンビはバラバラになり、同じく泡の様に消え去った……。

 その跡には小さな木の宝箱が残る。


「みんなやるじゃない!」

 リースは満面の笑みで生徒たちを褒め称えた。


 しかし、勝利の余韻にはまだ早い。

 小さくも棘のあるソレが本当の狙いなのだから……。


「シルフィさん、鑑定呪文は使える?」

「……数回なら」


 シルフィは宝箱へ手を当て、目を閉じて静かに詠唱を始めた。


 シルフィの脳裏に爆弾のイメージが浮かび上がる……。


「……多分、爆弾」


「はい、じゃあゴンベ君。君の時間だ」

 手招きされたゴンベは、震える手を握りしめて宝箱と対峙する。


 道具袋から罠外し用の道具を取り出し地面に広げると、慎重に作業に取り掛かった。


「ゴンベ君、爆弾で合ってそう?」


「……はい、これなら出来そうです」

 いつの間にかゴンベの手の震えは治まり、顔付きも真剣そのものだ。


(何もかもが懐かしいわね……)

 リースは遠い目をした。

 ゴンベの手は進んでいるのか分からない遅さで作業にかかりっきりだ。


(こんな時、フェリーだったら何ていうかしら?)


(正直、君の技はまだまだだね!荒っぽくて、弱くて、哀れで、効率が悪くて、マヌケで……まあ、これ以上は言わないよ。それでも君の助けが必要さ。それも沢山ね!)


(こんなところかしら?)

 リースは1人クスクス笑い出した。


「先生?」

 生徒たちが不思議そうに見つめた。


「え?あ、ごめんなさい。少し遠くへ行ってたわ……」



「あ!開いちゃった!」

 ゴンベの驚く声が聞こえた。


「開いちゃった……って何だよ」

 トウマが詰め寄る。


「ご、ごめん。間違ったと思ったら開いたんだよ……」

 ゴンベはばつが悪そうにした。


「で、中身は何だ!!」

 生徒たちが我先に宝箱を覗き込んだ。


 宝箱の中には薄汚れた革の手袋と数枚のコインが在るだけだった。

「何だよ~これだけかよ!」

 ガッカリするトウマたち。

 しかし、極限の緊張の中自らの仕事をやり終えたゴンベの顔は清々しくも充実していた。


「……大変良く頑張りました」

 リースはゴンベの両肩に手を置き、最大の賛辞を与えた。


 ゴンベはとても嬉しそうに革の手袋を取り上げ、ニカッと笑った。

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