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【コミカライズ開始】ひねくれた私と残念な俺様  作者: 合澤知里
番外編

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友達と再会しました

 四人で温泉街の雰囲気を楽しみつつ、広大さん達のお勧めのお店や、気になったお店にふらっと入って見て回った。私は初めてなので色々物珍しくて楽しいのだが、大河さんはずっと不貞腐れたような顔をしている。


 「大河さん、何処か行きたい所はありますか?」

 先程から、私達に付き合ってもらっているだけだったので、気になって尋ねてみると。


 「いや、俺は特にない。」

 素っ気なく返されてしまった。


 うーん、大河さんは楽しくないのかな? そう言えば、可愛い系のお店ばかり回って来たから、つまらなかったのかも知れない。


 「じゃあ、大河さんのお勧めのお店はありますか? そこに行ってみたいです。」

 「俺のお勧め? そうだな……。」


 少しばかり考えた大河さんの提案で、美味しい温泉饅頭のお店に連れて行ってもらえる事になった。漸く大河さんの表情が柔らかくなって、私は密かにほっとする。


 大河さんが案内してくれたお店は、やはり人気があるようで、人が多かった。お店の奥から運ばれて来た、白や茶色の美味しそうなお饅頭が、店頭に並べられる端からすぐに売れていく。昼食の影響でまだお腹が苦しいけれど、折角だから食べてみたい……そうだ。


 「大河さん、一つ買って、半分こしませんか?」

 「ああ、良いぞ!」


 大河さんが目を輝かせて笑顔を見せた。お勧めのお店を訊いたのは正解だったな、と思いながら、大河さんが購入して渡してくれたお饅頭を、出来るだけ綺麗に割って、片方を大河さんに渡す。お饅頭は黒糖を使った茶色の皮の中に、こし餡がぎっしり詰まっていて、上品な甘さでとても美味しかった。


 「美味しいですね! これ、ジュエルのお土産にしようかな。」


 箱入りのお饅頭を購入し、良い買い物が出来た、とほくほく顔になる。大河さんも幾つか購入していた。きっと会社のお土産にするつもりなんだろう。


 「じゃあ冴香ちゃん、行こうか。」

 「あ、はい。」

 雄大さんに声を掛けられ、お店を出ようとした時。


 「あの……すみません、もしかして、冴ちゃん?」


 後ろから聞こえた声に振り向くと、茶髪のストレートヘアにくりっとした大きな目の、同い年くらいの綺麗な子が立っていた。その隣には、ふわっとしたウェーブの茶髪に大きな目の、おそらく妹と思われる、良く似た顔立ちの女の子。

 ……って、あれ? 何だか見覚えが……。それに、私の事を『冴ちゃん』って呼ぶ人なんて……。


 「……えっ、美海みうみちゃんと美雪みゆきちゃん!?」

 思い当たった名前を口にすると、女の子達はぱあっと顔を輝かせた。


 「やっぱり冴ちゃんだ!! 久し振りー!!」

 「うわあああ!! 二人共本当久し振りだね!!」

 私達は、ここがお店の中だという事も忘れて、お互いに手を取り合いながら大声を出してしまった。


 青柳美海あおやぎみうみちゃんは、私の小学校の時の同級生だ。入学したばかりの時に、引っ込み思案でなかなか友達を作れずにいた私に、明るくてすぐにクラスのリーダー的存在になった美海ちゃんが声を掛けてくれて、それからずっと仲良くしてもらっていた。妹の美雪ちゃんは、確か二つ年下だったから、今は高校二年生かな? 二人とは、お母さんが亡くなり、堀下家に引き取られる時に別れて、それっきりになってしまっていたけど。


 「えー、二人共どうしてここに!?」

 「今日は家族旅行で来たの! お父さんとお母さんも来ているよ! ほらあそこ!」

 「えっ、じゃあご挨拶したいな! 皆さんちょっとすみません!」

 咄嗟に大河さん達に断って、二人に手を引かれてご両親の元に向かう。


 美海ちゃん達のお母さんには、凄くお世話になった。家が近かった事もあって、顔を合わせれば挨拶をする、程度だったにもかかわらず、私のお母さんが亡くなった時、すぐに駆け付けて来てくださって、呆然とする私に代わって、葬儀会社の人と話をしてくださったり、必要な手続きについてアドバイスをもらったりと、本当に良くして頂いたのだ。その後、急に堀下の家に引き取られる事になって、碌にご挨拶も出来ずに引っ越してしまったから、改めてお礼が言いたい。

 美海ちゃんのご両親も、私の事を覚えてくれていて、再会を喜んでくれた。ご挨拶をして、お母さんの葬儀の時のお礼を述べる。


 「あら、気にしなくて良いのに、ずっと覚えていてくれたなんて、冴ちゃんは律儀ね! それはそうと、冴ちゃんはどうしてここに?」

 「友達と一緒に来たんです。今は自由行動でバラバラになっていますけど……。」

 「冴香ちゃん、立ち話もなんだし、この近くに喫茶店があるから、良かったら案内するよ。」


 青柳ご一家とお喋りをしていると、雄大さんに声を掛けられ、私はお言葉に甘える事にした。皆さんと一緒に、喫茶店へと移動する。


 「積もる話もあるだろうから、俺達はその辺をぶらついているよ。じゃ、また後でな。」

 「えー、僕は一緒に話したかったのに。」

 広大さんはニコッと笑うと、不満顔の雄大さんを捕まえて行ってしまった。


 「……冴香、終わったら連絡しろよ。迎えに来てやるから。」

 すっかり不貞腐れた顔に戻ってしまった大河さんは、それでも笑顔を作って振り向くと、ごゆっくり、と青柳家の皆さんに一礼して去って行く。


 「ねっねっ! 三人共イケメンだったね! あの人達と冴ちゃんって、どんな関係なの!?」

 美雪ちゃんに訊かれて、私は顔を赤らめた。


 「えっと、その……黒い着物の人が、私の婚約者で……。」

 「「「えええーっっ!?」」」

 思い切って本当の事を告げると、女性三人から黄色い歓声が上がった。


 そして喫茶店に連れ込まれた私は、馴れ初めやら何やらと、根掘り葉掘り色々訊かれる羽目になってしまった。親同士が勝手に決めた婚約が切っ掛けでどうのこうのと、全ての質問に正直に答えるのもどうかと思ったので、適当にぼかして答えるのが大変だった。

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