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第五十四話 長い長い旅でした!

大変お待たせいたしました。


魔王の城に行く道具『天球儀』の動力『蒼の鉱石』を見つけたラテル一行。

しかし『天球儀』探しの方は難航して……?


どうぞお楽しみください。

 ラテルが『蒼の鉱石』を手に入れておよそ半年。

 『天球儀』を探す旅はいくつかの成果を上げながらも、完成に至らずにいました。


「……ねぇみんな、次はどこに行こうか?」

「うーむ……。ほぼ世界各地をしらみ潰しに当たったからな……」

「海賊の所にも何度も行って、『地図にない島』ってのまで調べたんだ。どっかの技術者にこれまで集めた『天球儀』の部品を見せて、作らせた方が早くないか?」

「でも今までの町でわかる技術者は皆無」

「どうしよっか……」


 四人の顔には疲労と落胆が浮かびます。

 国のおさになりすました魔物を退治した際に見つけたり、打ち捨てられた村で発見したりと、『天球儀』そのものはいくつか手に入れる事ができました。

 しかしどれもどこかしらが壊れていて、『蒼の鉱石』を入れても反応しませんでした。

 そして壊れていなさそうな部品を組み合わせるも、どうしても一つ壊れていない部品が見つからない箇所があるのでした。

 その時、


「あ!」


 ラテルが声を上げました。


「どうしたラテル」

「何か思いついたのか?」

「聞かせて」


 ラテルが上げた声に三人が集まります。

 しかしラテルは、


「あー、えっと、その……」


 もごもごと口ごもりました。


(アフェリさんが新しく作ってる町にはまだ行ってないなって思ったけど、みんなアフェリさんの事となると何だか不機嫌になるからなぁ……)


 しかし手がかりがそれしかない以上、黙っているわけにもいきません。


「……その、前にさ、フイットの王様がさ、アフェリさんに町作りを任せたじゃない? その町にはまだ行ってないなぁ、なんて……」

「……確かに、な……」

「……あのでか乳女か……」

「……」


 一様に怒りを押し殺したような態度になる三人。

 ラテルは気が気ではありません。

 しかし、


「……それしか手がないなら、致し方ないな」

「……しゃーねぇ。ただ、無けりゃすぐにおさらばだ。いいなラテル?」

「苦渋」

「う、うん、ありがとう!」


 やむなしといった様子で頷く三人に、ラテルはひとまず胸を撫で下ろします。


「じゃあ行こう!」


 こうしてラテル一行は、行商人アフェリが開拓している町へと向かう事になったのでした。




「わ……」

「これは凄いな……」

「おいおいおい、半年経ってないでこれかよ……」

「驚異的」


 フイットの町に戻り、開拓地の場所を聞いたラテル一行は、その町の発展に驚きを隠せません。

 商店や宿屋だけでなく、大きな劇場まで作られていたのですから。

 そんなラテル一行を更なる驚きが襲います。


「あ! 勇者様! ようこそお越しくださいました!」

「えぇ!? あ、アフェリさん!?」

「何故牢馬車に……!?」

「お、お前何か悪い事でもしたのかよ!」

「いつかやるとは思ってた」


 そんなラテル一行に、鉄格子付きの馬車からアフェリははたはたと手を振りました。


「あー、違うんです。これは何というか自衛のためで……」

「自衛?」

「はい……。この町を作る際に労働力が必要で、その、女の武器を活用して逞しい男の人達をあちこちから集めたんです……」

「それが自ら牢馬車に乗るのと何の関係があるのだ?」

「まぁ、その内の何人かが本気であたしに惚れちゃって、一人で出歩くと抱きつかれそうになったり、口付けを迫られたりして……」

「……あー、まー男なんて馬鹿だからなー。それで牢馬車かよ」

「はい。一日に一回は町を見回らないといけないので……」

「自業自得」

「あ、あはは……。それで今日は何のご用ですか?」


 頭を掻くアフェリにラテルが一息呑んで問いかけます。


「あ、あの、『天球儀』っていう道具、あの、こういうやつなんだけど、どこかで見かけた事ない、かな……?」


 最後の希望にすがるような気持ちのラテルに、


「あ、それならいくつか買い集めてありますから、屋敷にどうぞ」

「えぇっ!?」


 アフェリは事もなげにそう言うのだった。




 場所は移ってアフェリの屋敷。


「わ……、ほ、本当にいっぱいある……!」

「よ、よし、部品を探そう……」

「……お! あったぞ! 壊れてて使えなかった部品!」

「早く組み立てて」


 出来上がった『天球儀』に『蒼の鉱石』をはめ込むと、天球儀がぼんやりと光り始めました。


「こ、これで完成したの、かな?」

「……試してみるか」

「使うなら俺様だな。万が一予定しないとこに飛ばされても、帰還魔法で戻って来れるからな」

「任せた」


 エトワルが『天球儀』でフイットの町の位置を押すと、強い光がエトワルを包み、そして消えます。

 そしてすぐまた空間が光り、変わらない姿のエトワルが戻って来ました。


「おい! これ本物だ! 本当に一瞬でフイットとここを行き来できた! これなら魔王の城にもひとっ飛びだぜ!」

「やったぁ!」

「では明日朝、準備を整えて魔王の城へと向かうとしよう」

「最終決戦」

「!」


 リュンヌの言葉に、はしゃいでいたラテルが我に返ります。


(そうだ、これで魔王と戦ったら、勝っても負けても旅は終わるんだ……。もし負けたら……!)


 そう思ったラテルは、深呼吸を一つして、


「……みんな、大事な話があるんだ。魔王の城に行く準備ができたら、集まってもらえないかな?」


 真剣な顔でそう告げるのでした。


(もしかしたら明日、魔王との戦いで負けたら、そこで全部終わりになっちゃう……! 秘密を言うなら今夜しかない!)


 固い決意を胸に秘めて……。

読了ありがとうございます。


大変お待たせいたしました。

半年近く旅をしていた時間経過を表すための演出です。

嘘です。

連載二個いけると思った正月の私はアホでした……。


残り数話で完結です!

よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] とうとう秘密を打ち明ける気になったラテルくん。 みんななら秘密を知っても大丈夫だと思うので安心ですね。 牢馬車で移動してるアフェリさん、非常に見た目がシュールなことになっていますね(笑)…
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