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第四十七話 船の旅には不安もあります!

ラテル一行はいよいよ大海原へと漕ぎ出します。

新たな世界への冒険には不安も付きもので……?


どうぞお楽しみください。

 翌日。

 ラテル一行は王様からもらった船で海に出ました。


「わー! 気持ちいいねー!」

「あぁ、潮風が心地良いな」

「おいリュンヌ! 操縦代わりたくなったら、俺様にいつでも言えよ!?」

「不要」


 天気も良く、くじ引きで当たりを引いたリュンヌが操る船は、順調に海を進みます。


「む。左から敵」

「そうか。では手筈通り、エトワルが魔法で先制。ラテルが剣と魔法で援護。私が槍で撃ち漏らしに対処。リュンヌは状況に応じて船を移動」

「核を取りこぼさないように、ある程度船に近付かせねーといけねーってのが面倒だな。遠距離でぶっ放せれば楽なんだけどよ」

「いくら核が水に浮くって言っても、離れたところのは取れないもんね。船で近づいたら波で流されちゃうし」

「核は必要」

「では行くぞ。海に落ちるなよ!」


 ソレイユの声に応えるかのように、海が盛り上がり、大きなイカの魔物が姿を現しました。


「ちぇっ、これが魔物じゃなければ、しばらくはイカ食べ放題だったのに、よっ!」


 エトワルが愚痴りながら放った魔法が、イカの魔物の触腕を吹き飛ばします。


「……『火球』! えーい!」


 事前に唱えていた魔法を放つと、振りかぶったラテルの剣がイカの魔物の頭に見える胴体部分に直撃しました。


「とどめだ」


 ソレイユの槍に眉間を正確に貫かれ、核を残して消えるイカの魔物。


「回収」


 リュンヌが網でその核を拾いました。


「うん! うまくいったね!」


 ラテルの言葉に、全員が頷きます。


「初めての海上での戦闘だったが、問題なさそうだ」

「制約はあるけど、連携すれば楽勝だぜ!」

「索敵も問題なかった」

「よーし、進もう!」


 再び船は快調に進み出しました。


「そういえばそろそろ昼だなー。ラテル、飯何作るんだ?」

「えっと……、か、簡単なものを……」

「おーし、楽しみにしてるわ」

「……じゃあ厨房使うね……」


 エトワルに言われて、ラテルは船内に入ります。

 そこで大きく溜息をつきました。


「あぁー……。複雑……」


 ラテルは食事を作る事自体は好きです。

 しかしそれがきっかけで女と気付かれてしまう不安も同時に抱えていました。

 その上、


「……美味しくないって言われたらどうしよう……」


 そんな不安もついて回ります。

 そしてもう一つ。


「さっきの戦い、僕必要だったかな……」


 魔王退治を目指す旅の仲間として、魔物との戦いで役に立てない事は致命的です。

 戦力として不十分だから食事を任されたのでは、そんな思いがラテルの不安を増幅しました。


「……駄目駄目! 今できなくてもこの先できるようになるために、少しずつでも頑張るんだ! まずはご飯!」


 そう気持ちを切り替えると、母親直伝のたれに漬けた肉を焼きながら、付け合わせの野菜を仕込むのでした。




「お待たせ! できたよ……、ってあれ?」


 料理を皿に盛り付け、甲板に上がったラテルが見たのは、船を止めてのんびり過ごす三人の姿でした。


「お! 飯できたか!」

「思ったより早かったな」

「待ってた」

「どうしたの皆……?」


 ラテルは首を傾げます。

 てっきり自分に食事を任せて、三人でどんどん進んでいるものだと思っていました。


「どうしたの、って何だよ。ラテルが戻らないと進めねーんだから当たり前だろ?」

「え?」

「さっきの連携。ラテルなしでは成り立たない」

「……僕を、待って……?

「海の魔物は、波に逆らう船の動きに反応して襲ってくるそうだからな。停止していればまず襲われないから、少し休憩していたのだ」

「……そう、なんだ……」


 三人の言葉を受けて、ラテルの中から一つの不安が溶けて消えます。


「さ、ラテルの飯! 早速食おうぜ!」

「期待」

「ではラテル、いただきます」

「……! 召し上がれ!」


 ラテルはその日の青空のように、澄み切った笑顔を浮かべるのでした。

読了ありがとうございます。


実際に海に人や船を襲う魔物がいる世界なら、遠隔攻撃一択ですよね。

それだとエトワル以外に出番がないので、理屈をこねってみました。


さて次回はお料理実食。

果たして結果は……?


次話もよろしくお願いいたします。

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