第三十六話 船の確保に向かいます!
新たな冒険のために船を手に入れようとしているラテル一行。
行商人アフェリの提案で、ペパの種という香辛料を探しに行くのですが……?
どうぞお楽しみください。
一夜明けて朝。
ラテル一行は朝食後、アフェリと食堂で合流しました。
「おはようアフェリさん!」
「おはようございます……。元気ですね、ラテルさん……」
「うん! 昨日はよく寝れたから! アフェリさんは寝れなかった?」
「……まぁ、ちょっと……」
アフェリはラテルの後ろで不穏な空気を出すソレイユ、エトワル、リュンヌの様子を窺うと、ぎこちない笑みを浮かべます。
「では行こうか」
「うん、じゃあ宿をお金払わないとね」
「いや、まだ必要ねーぜ。今日中には戻って来れるからな」
「え?」
エトワルの言葉に、ラテルは目をぱちくりとさせました。
トローワの町からこのフイットの町まで、半日かかっていました。
そこから更に東に進み、険しい山脈を越える旅が、今日中に終わるとは思えません。
「そうか、エトワルはペパの種の名産地であるナフに行った事があるのだな」
「おうよ。だから俺様の帰還魔法でひとっ飛びだ」
「そうなんだ! エトワルすごい!」
「ま、まぁな! 俺様は人生経験豊かだからな!」
「偶然」
「な……! リュンヌてめぇ……!」
和む空気。
ラテルの笑顔も更に深まります。
(やっぱり皆が仲良しなのがいいな……!)
そんなラテルの視線に気付いたエトワルが咳払いを一つ。
「……んじゃ出発だ! つってもここは天井があるからな! 表に出てくれ!」
エトワルの号令でラテル一行は外に出ます。
展開した帰還魔法で、五人は光に包まれて空へと舞い上がるのでした。
光が消えた時、ラテルは見知らぬ町の前に立っていました。
「ここが、ナフ……?」
「そうだぜ。いやー、久しぶりだなー」
「……歩いたらどんなに急いでも十日はかかるはずなのに……! すごいですねエトワルさん!」
「は? うっせ。早く店に案内しな」
「……はい……」
アフェリの褒め言葉を一蹴するエトワル。
相変わらずアフェリにだけ厳しい態度に、ラテルが眉をひそめます。
「エトワル! 折角アフェリさんが褒めてくれたのに、そんな言い方ひどいよ!」
「い、いや待てラテル。こいつは油断ならない奴で……」
「それでもエトワルが意地悪してるみたいでやなんだよ! 優しいエトワルに戻ってよ!」
「う……、し、しかしだな……」
問い詰められるエトワル。
そこにソレイユが近寄り、エトワルに何かを耳打ちしました。
「……そうだな! 俺様は広い心で優しくいねーとな!」
「うん! そうだよエトワル!」
「悪かったな行商人! ペパの種の確保、よろしく頼むぜ!」
「は、はい! ありがとうございます!」
顔を明るくしたアフェリが、ラテルの両手を握ります。
「ありがとうラテル君! 君はすごい勇者だね!」
「え、そ、そうかな……。あはは……」
理由もわからず褒められて、ラテルは曖昧に笑いました。
「おい、やっぱり今すぐ……」
「いや、今刺激するとむしろ……」
「我慢の時」
後ろで顔の見えない三人が、何かを話しているのを知らないまま……。
読了ありがとうございます。
さてここでペパの種が手に入れば、この殺伐パートも終わりなのですが……。
早く無邪気ラテルに癒される旅に戻りたい……!
つまりアフェリの解放はまだ先です(無慈悲)。
次話もよろしくお願いいたします。




