第三十五話 皆がいつもと違います!
行商人アフェリに対して、明らかな敵意を向けるソレイユ、エトワル、リュンヌ。
ラテルは何とかそれを止めようとしますが……?
どうぞお楽しみください。
アフェリに対して殺気立つ三人。
我に返ったラテルが止めに入りました。
「皆落ち着いて! どうしたの!? もっと優しく話そうよ!」
「……そうだな」
「けっ、ラテルが言うなら仕方ねー」
「命拾いした」
その言葉に三人は、アフェリから離れます。
大きく息を吐いたアフェリは、涙目でラテルに感謝を告げました。
「あ、ありがとう……! 殺されるかと思った……!」
「だ、大丈夫。皆本当は優しいから……」
「ラテルに感謝するんだな」
「別に俺様達はお前を拷問したって良かったんだからよ」
「早く話して」
「わ、わかりましたっ!」
ラテルを引き離すように再度詰め寄る三人に、アフェリは大慌てで話し始めます。
「この国の王様も、腕の立つ冒険者や護衛を雇った行商人には、船の購入許可を出すんです! その証明として、様々な物品が挙げられているんですけど……!」
そう言いながら、アフェリは荷物の中から黒い粒を取り出しました。
「ペパの種か」
ソレイユの言葉に、アフェリは勢いよく頷きます。
「は、はい! これは遥か東の山脈を超えた先でしか手に入らない貴重な香辛料で、これを取ってくれば船の購入許可は得られるかと……!」
「んで? いくらかかるんだ?」
圧が強めのエトワルの言葉に、アフェリは身代わりのようにペパの種を差し出しました。
「そ、それもペパの種で解決です! この国ではとても貴重な香辛料なので、袋にいっぱい持ち帰れば、数人乗りの船を買ってもお釣りがきます!」
「理解」
リュンヌの言葉に、少しだけ場の空気が緩みます。
その様子に僅かにアフェリが表情を緩めました。
「ですので……、その、あたしも、道案内として……、一緒に、連れてって、もらえたらなぁ、と……」
恐る恐る言うアフェリに、
「何?」
「あ?」
「処す」
三人の殺気が膨れ上がります。
「ひいぃ! ごめんなさい!」
怯えるアフェリをラテルがかばいました。
「皆! そんなに怒らなくてもいいじゃん! アフェリさんも商売したいだけだろうし!」
「な、ラテル……! その女を庇うのか……!」
「お、俺様はお前が騙されないようにと思っているのに……!」
「おのれ胸め」
「違うよ! そうじゃなくて!」
ラテルは三人に必死に訴えかけます。
「こんな風に人を脅すような事、皆にしてもらいたくないんだ! ソレイユも、エトワルも、リュンヌも、強くて格好いい僕の仲間なんだから!」
「!」
「っ」
「……」
その言葉に、三人の空気ががらりと変わりました。
「……ラテルがそう言うなら……」
「そ、そーだな。ちょっと俺様大人気なかったな」
「信頼に感謝」
照れたように頭を掻いたり、落ち着きなく身体を動かす様子にラテルは安堵します。
しかし同時に一つの疑問が浮かび上がりました。
(何でいつもは落ち着いてる皆が、あんなに怒ってたんだろう……? 変なの……?)
読了ありがとうございます。
前回紹介し損ねましたアフェリの名前の由来は、フランス語で商売を意味するaffairesから。
ちょい役だしそのままアフェールにしようと思って、「いや、四文字にしないと」とアフェルにしたら、「発音がラテルと被るなー」とこんな感じになりました。
相変わらず名前にこだわってるのかこだわっていないのか……。
次話もよろしくお願いいたします。




