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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり

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第97話 ファーストコンタクト⑧逆探索

 王子たちは今日の昼過ぎに出立するとのことだ。

 婚約の〝こ〟の字も出なかった! いろいろ気になって確かめに来たものの、あまりにわたしがそぐわないので候補から外したのかもしれない!

 まったく、助言とかしてくるから疑っちゃったじゃないか。ごめんあそばせ。

 そうそう、上に立つ人は目を養わないとね。わたしを排除したその見通し、いい目を持ってるよ。

 でも、最後まで気を抜かないようにしよう。




 ぽつりぽつりと降っていた雨が本格化してきた。それでも出立されると。

 いいねー、実にいい。

 今日からハウスさんは家族に解禁なはずだし、みんながハウスさんを使えたら家での守りが強くなる。


 わたしたちは柵の外の木の下でお見送りだ。枯れ木なのに雨がほとんど落ちてこない。木を見上げた後にアルノルトさんと目があった。彼が何かしてくれていて、雨に濡れずにすんでいるみたいだ。わたしは親指を突き出した。アルノルトさんは表情を変えずに黙礼する。


 王子は父さまに感謝すると言った。同年代と話すことができて楽しかったと。また食事もとてもおいしく、心地よく過ごすことができた、と。

 兄さまには、学園で会おうといい、双子には剣の手合わせをしたかったといった。そしてわたしには、立派な淑女になって再会できることを楽しみにしているといった。

 微妙に匂わせ? まだ候補からは外れてはいないのか? それともただの社交辞令か。

 わたしはカーテシーだけで答えた。


 父さまは宰相さんやトロットマン伯とも話し、それぞれが馬に乗り込む。みんなが着込んでいるローブは魔法でもかかっているのか雨を弾いていた。

 王子さまは馬で走ったり、馬車に乗り込んだりとしているようだ。雨だから馬車にと言われたが、馬に乗るといって、背よりも高い馬にひらりと乗り込んだ。

 それをじっと見る、兄さまと双子。

 わたしたちに手をあげて、そして走りだした。

 姿が小さくなるまで見送り、父さまは息を長く吐き出した。




『リディア、ミニーと町の子らだ』


「ミニー?」


 もふさまに言われて目を凝らす。

 この雨の中? それに他の子はともかく、ミニーはわたしと同じ5歳。川原にくる回数が少ないのは距離がけっこうあるからだ。それなのに、さらに遠いウチまで?


「父さま、ミニーと町の子、来る」


 家に入ろうとした父さまを止める。

 父さまはアルノルトさんに目で指示を出し、母さまを家の中へと導く。

 

 わたしは町からの道に目を向けた。坂下からひょこっと姿が見えた。

 ビリーとカール、それにミニーだ。びしょ濡れで、転びそうになりながらも走っている。ビリーとカールは転ばないようにミニーを補助していた。

 わたしは駆け出す。


「リディア、待ちなさい」


 父さまが追いかけてくる。


「ミニー」


「リディア」


 ミニーの顔が雨で濡れているのではなく、泣いているのだと気づいた。


「どーした?」


「兄ちゃん、帰ってこない」


「サロが?」


「みんな家の中に入りなさい。中で話を聞く」


 父さまがわたしとミニーを抱きあげた。

 促して、家の中に入る。アルノルトさんとピドリナさんはタオルとそして温かいミルクを出してくれた。

 ミニーのしゃくり上げは止まらない。


「君たちは事情を知っているのかな? 説明してくれるか?」


 ビリーが頷いた。


「ミニーの母ちゃんが風邪ひいて、ほら、前にリディアが喉にいいって〝かりん漬け〟くれただろ? かりんが森にあるって聞いたから、サロが探しに行ったんだ。すぐに帰ってくるって言ったのに、昼になっても帰ってこないし、雨はひどくなるし。大人が森に探しに行ったんだ。ミニーが探しに行くって言い出したのを止めてサロが行ったみたいで」


 ビリーは言葉を区切り、ミニーを見る。


「〝かりん〟はもふさまがみつけたって言ってただろ。だから、もふさまならかりんの場所がわかって、サロの場所もわかるんじゃないかって。それで、ミニーはリディアともふさまに頼みに行くってきかなくてさ」 


 それでビリーとカールがついてきたのか。


「森に大人いっぱい?」


「ああ、みんなで探してる」


 まずいな。人がいない方が探しやすいんだけど。


「リディア、もふさま、お願い! 兄ちゃん、探して」


 サロは濡れているはずだ。濡れて冷えればよけいに体力を奪われる。子供が体力を奪われたら……危険だ。町の子は森や山のことをよくわかっている。そのサロがすぐに帰ると言ったのに、まだ帰ってきてないということは、何かあったのかもしれない。心配をかけるとわかっているだろうから〝帰らない〟ではなく〝帰れない〟事態なのでは?


「わかった。任せて」


「リディア」


「父さま。みつけられる」


 言ってから〝しまった〟と思って言葉を紡ぐ。


「もふさまいれば、わかる」


「でも、お前は病み上がりだ」


 え?っと3人がわたしを見る。


「もう、全快した。だいじょぶ」


「……父さまと一緒に行こう」


 アルノルトさんに指示を出し、3人にここにいるように言って、兄さまたちに目を離さないよう告げた。ミニーがくしゃみをしたので、ピドリナさんは問答無用でお風呂に入らせることを決めたようだ。


 わたしは上からこちらのレインコートの代わりのレイッシュをかぶる。父さまも大人用のを被り家をでた。

 もふさまは濡れることはなんでもないようだ。わたしたちの前をタッタカ歩いて行く。

 ぬかるんでいて、滑りやすく見える。


「父さま、ありがと」


「まったくお前は。寒くないか?」


「寒くない」


 わたしはマップを呼び出した。

 やっぱり、黄色い点や青い点が多すぎる。


「かりんはどこにあったんだ?」


「川、近く」


「まずはそこに行ってみよう」


 父さまをいつも行く川原に案内する。

 そして森に続く道に入っていく。


「領主さま!」


 町の大人だ。


「サロのことを聞いた」


「探してくださってるのですか? ありがとうございます。こちらは探しましたが、いませんでした。私は左側に行きます」


「わかった」


『リディア、逆探索はしてみないのか? 野菜などかけていただろう?』


「あ。タボさん」


『YES、マスター』


「サロの居場所、三角、して」


『〝人〟の識別は、まだできません』


『マスター、失礼します』


「ハウスさん?」


『すべての人を識別するのはレベルが上がらないと無理ですが、人物の映像があれば、なんとかなるかもしれません』


 映像? そんなものは。


『サロのデータを共有する許可を』


 タボさんに言われる。


「許可します」


『データ共有』


 ピーーーーーーーーー、ガーーーーーーーーーーー

 頭に音が響く。


『サロのデータを共有しました。固有データを新種の植物として一時的に読み込ませます』


 ピーーーーーーーーー、ガーーーーーーーーーーー


『マスター、逆探索の指示を』


「サロの場所を示して」


 オレンジ色の三角が点滅した。


「父さま、ここ、向かって」


「わかった」


 川のすぐ先だった。枯れ木が倒れていたから、こちら側に目がいかなかったのだと思う。自然にできた窪地にサロは落ちてしまい、雨に打たれうずくまっていた。寒くて震えている。わたしを見ると小さな声でわたしの名を呼んだ。意識はあるが、ギリギリな状態だ。

 父さまがわたしをおろして、窪地に飛び降りた。自分のレイッシュをサロに着せ、まずサロを押しあげた。それから登ってくる。


「リディア、歩けるか?」


 わたしはもちろん頷いた。

 途中でヤスのお父さんたちに会えたので、サロをウチまで運んでもらい、探している人たちへのみつかった知らせも頼んだ。わたしは再び父さまに抱えられた。

 そうして家に帰ると、いい馬がいっぱいいる。馬車もある。王子たちご一行?


 

 アルノルトさんが出迎えてくれた。

 サロを子供部屋に運んで寝かせた。サロは眠ったので、タオルで濡れた体を拭き双子の服を着せ、あたたかくしてベッドにinだ。そばにはミニーとビリーとカール。そして兄さまたちがついた。

 わたしと父さまともふさまはお風呂だ。濡れちゃったからね。


「リディア、殿下が戻ってこられた。この後、挨拶する。なぜ戻ってこられたのかわからないが、この騒動のことを尋ねられるかもしれない」


 そうだね、尋ねられるだろう。


「ミニーとリディアは友達だ。友達が、主人さまなら匂いで兄をみつけてくれるかもと頼みに来たのはいいだろう。外は雨だ。おまけにリディアは病み上がり。子供を探しに行くなら、主人さまと父さまでいいのに、リディアを連れて行った。これには理由が必要だ。サロを探すのに、リディアと主人さまが一緒に行かなくてはいけなかった理由づけが」


 もふさまも黙って聞いている。


「テイマーと思われると危険がある。魔力量が多いとわかったら、魔力を封印されると言われているが、それだけですむかもわからない。だから、テイマーだと思われないようにする必要もある。リディアは支援系のギフトをもらったことにするはずだった。ギフトは王族といえども言わなくても済むことだ。だから、リディアのギフトで主人さまを支援して、サロを探そうとしたことにしたいと思う。ただお前は魔力量が15だから、対象者のそばにいないとその力は届かないんだ」


「父さま、あったまいい!」


 本気で言ったのに、おでこを指で弾かれた。


「主人さま、そうしてもいいでしょうか?」


『リディアにとっていいことなら、我はなんでも構わない』


 言葉をそのまま伝える。


「主人さま、感謝します」

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