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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第637話 王子殿下の婚約騒動⑦鑑定

 アダムが息を吸い込む。


「私にはリディア嬢だとわかるが、わからない者もいる。では、どうしたら信じるのだ?」


「え、えっと。鑑定! 鑑定士を呼び……」


 真面目そうな青年が慌てて言った。すると


「私が鑑定しましょう」


 宰相さまが名乗り出た。


「……おひとりの鑑定ですと、後で何やら言いだす者もいるかもしれません。複数ではいかがでしょう? 王宮の鑑定士を何人か呼ぶのは?」


 メラノ公が提案する。


「そうですね」


 宰相は使いの者を動かした。





「冗談とは、それだけを指していたのでいいかい?」


 待っている間に、アダムが最初に発言した真面目な青年に確かめる。

 微かに陛下を気にしてから、その人は口を開いた。


「鑑定でシュタインのお嬢さまということがわかりましても、では、どうしてこの慶事の発表の場で、その姿なのでしょう?」


 暗に発表の場で、猫の姿でいるのは舐め腐っているのか?と言っている。


「それから?」


 アダムは促す。


「この婚約話は、本日初めて知りました。議会に通されておりません。ですから議会が婚約者であるお嬢さまのことを調べておりません。大変失礼ではありますが、シュタイン家のご令嬢といえば、少し前に世間を悪評で騒がせていました」


 アダムが睨んだのかもしれない、彼は文字通り震えあがった。


「で、ですから! 調べていないから、確かではありません。民が知ったら混乱が予想されます」


「では、混乱させないためには、どうしたらいいと思う?」


「そ、それは。議会がお嬢さまを調べて、ひととなりがわかれば、民衆にも伝えることが可能です」


「では、よろしくね。そのための議会だよね?」


 アダム、強い。

 大人の議会の人に、強気の発言ができるんだ。

 と話しているうちに、何人もの鑑定士が到着した。




 室に入ってくると、みんな陛下を始めとした王族に礼をした。

 6人の宮廷鑑定士に告げる。殿下の腕にいる猫を鑑定し、それを発表するように。そして6人と宰相さまを一旦外へ出して、一人ずつ中に呼んだ。

 最初に入ってきた人は、茶色い髪の男爵家の次男だそうだ。家門と所属を告げ、覚えられなかったけど、名前を言った。

 王族に断ってからソックスを鑑定する。


「鑑定結果を申し上げます。ソックス、猫、状態良し、リディア・シュタイン、人族、魔力低下と出ています」


 ざわざわする。そのざわめきに、男爵家次男はたじろいだ。


「君、ありがとう」


 メラノ公がお礼を口にしたので、舞い上がっている。

 違うドアから出て行かせ、入り口からは新しい人が入ってきた。

 女性だった。


「申し上げます。猫、リディア・シュタイン」


 バラツキはあるものの、概ね思った通り、猫とわたしの情報が鑑定されるだけみたいだ。一番最初の人がレベルが高かったようで、それ以上の情報は出てこない。レベルの高い鑑定士は、失礼だけどいないようだ。

 そして最後は宰相さまだ。


「鑑定。猫、リディア・シュタイン、と出ております。 ん? 呪い、変化?」


 と首を傾げてから、陛下に向かって礼をした。

 そうか、ここで呪いのワードを出しておくんだね。

 敵の呼び水となるように。

 それに鑑定で呪いが関係しているとわかれば、呪術が変に作用したと思いやすくなる。誘導だ。さすが宰相さま。

 ざわざわしている。


「鑑定結果が出たね。リディア・シュタイン嬢と納得いただけたかな?」


「7人の鑑定士が口を揃えて、シュタイン嬢と結果を出しました。にわかに信じ難くはあるものの、そちらはシュタインのお嬢さまなのでしょう」


 メラノ公がお偉方の意見をまとめている。


「そちらの者が言ったように、では、何故、この慶事にその姿なのですか? シュタイン伯よ。令嬢は獣憑きだったのか?」


「それについては、義父上(ちちうえ)からではなく、私から話そう」


 父上だって……。


「私は、いや、私とブレドは幼少時より、リディア嬢と親しくしていた」


 みんな一様に驚いている。そりゃそうだ。一介の伯爵令嬢と王族が婚約者でもないのに親しくしていたら……。


「小さい頃から知っている。変化の能力はなかったよ。

 親しくしていたのは、陛下がシュタイン家の令嬢と、私かブレド、どちらかの婚約を考えていたからだ。知っての通り、その後、王位継承者の婚儀は議会にも通すことになり、君たちに潰されてきたし、私たちも従ってきた」


 ああ、そうか。ロサからわたしが婚約者候補だと告げられた後、陛下からの強制的な何かが入らなかったのは、議会からの猛烈な反対があったんだ。

 父さまが陛下と約束を取りつけるまで、ロサがごねただけでそれがまかり通っていたのは、ありがたいけど謎だった。いろいろな方面からの作用があり、それで免れていられたのかもしれない。


「ああ、誤解している者がいるようだから、これも言っておこう。

 私は前婚約者の不正で落ち込んでいた。そのあと、リディア嬢と婚約者が騒動に巻き込まれ、彼女も婚約を破棄された。ま、それで昔馴染みの彼女に、お見舞いの手紙を出した。同じ境遇だからね。それがきっかけで会うようになり、心のつかえをお互いに言い合った。同じ傷を労るようにして、私たちは惹かれあっていった。それが心地よかった」


 あ、アダム……。真顔でよくそんな酔狂な話を、しかも即興で作るなんて!

 わたしの読み聞かせどころじゃない。なんでもできる人っているんだなー。


「それで結婚を申し込んだ。お互い婚約が白紙になっていた。だから問題はないだろう?」


 アダム、すっ飛ばしてる。結婚じゃないよ、婚約だよ。


「受けてくれたのに、それから少しして、断りの連絡がきた。私はすぐに馬を走らせた。義父上は、リディア嬢は療養中でここにはいないと言ったけど、お遣いさまの気配があったから、絶対にいると思った。私との結婚が嫌になったのかと思ったけれど、それならそれで、本人の口から聞きたかった。それで乗り込んで、……違う姿になった彼女を見つけた」


 シーンとする。

 そこで第2王女が猫ちゃん撫でると騒ぎ出したので、第5夫人と第2王女が退出した。


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― 新着の感想 ―
[一言] リディアが最後に表示されてた鑑定レベルは9だったけど、宮廷鑑定士なのにリディアより鑑定レベルが低い人多い? 即興アダムは本音も混じってそう
[一言] 鑑定士は最初の鑑定でちょっとヒヤッとしましたがなんとか乗り切れたようで。 アダムの惚気は完全に本音入っているでしょう。 幼児あるあるな王女さまの突然の行動はあの年頃なら仕方ないですね。
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