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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
11章 学園祭

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第455話 シンシアダンジョン②力試し

 腕前を披露するよう言われ、ロレッタは鞘から短剣を取り出して構えたが、ラエリンはフラットにしている。さっき長いきれいな髪をひとつに紐で結んだけど、それだけ。でもそれが様になっている。


「ちょうどマモメットが来たね」


 兄さまが言って後ろに下がる。ロレッタが走った。


 う、解体実習で見たゴールドチャリーみたいな見かけ。茶色の短い硬い毛に覆われている、もぐら? いや、爪がなくてセイウチみたいなヒレの形の手。

 ロレッタは猪サイズのそいつに走り寄って、眉間の間にショートソードを突き立てた。


 マモメットが倒れそしてキラキラした光となって消える。

 腕を組んで見守っていた大人たちは、頷いている。

 ロレッタ、強かった。


「リディア、この短剣すごい、スッと入っちゃったよ!」


 と嬉しそうに言った。

 ロレッタは血が苦手だという。だから獣を狩るのは苦手だが、ダンジョンではその後の解体とか考えなくていいので、気がずいぶん楽と言った。


 次もマモメットが来てくれればよかったのだが、次に出会ったのは足の太い鹿のような生き物だった。


「行きます」


 ラエリンが手を挙げた。


 軽く走って行って、飛びかかってきた鹿を避け、後ろにまわり、首にいつの間にか抜いたショートソードを動かす。

 白目になった鹿っぽいのは倒れた。


「マモメット2匹分を倒したな」


 ジオがよくやったとラエリンの肩に手を置いた。


「ふたりとも、魔物倒したことあるんだね、強い!」


 思い返してみれば、ふたりは魔法戦もためらっている様子なかったもんね。


「狩りには行くから。でもリディアはもっと強いんでしょ?」


「そうだな、お互いの力量を知るために、この階で1匹ずつ倒しておこう」


 父さまに言われてわたしは頷く。


「わたしは体力があまりないから、魔法を使うの。工夫すると少ない魔力でも魔物を倒せる」


 魔力が少ない設定なので、最初に防御線を張っておく。


 前からマモメットっぽいのが来た。

 ちょうどいいので手をあげる。

 みんなが頷いたので、わたしは軽く手を前に出して、風をぶつけた。

 きゅーっと倒れ、そして光となった。魔石と何かが落ちた。

 わーいと拾いに行く。


「嘘、だってそんな威力があるようには……」


 ロレッタが困惑したように言った。魔力いっぱい使ってるみたいに見えるとマズイから最小限にしか使ってない、エコ推奨だ。


「魔物の直前で威力を大きくした?」


 ラエリンにわたしは頷いた。


「ほら、わたし魔力少ないから」


「すごい細やかに、魔力を操作できるのね」


 ラエリンは驚いた表情をし、ロレッタは何か考えこむような仕草をした。

 他のみんなも倒したが、魔物より強すぎるので何が起こったかわからないうちに終わっていた。

 物凄く強い人たちなんだってことはわかったかな、と思う。


 

 

 ラエリンとロレッタがある程度の腕だったので、サクサクと進む。

 父さまもいるし、守り役であるジンやガーシもいるので、もふさまに発散してきていいよと告げる。もふさまのはち切れそうに振れてる尾がずっと気になっていた。

 もふさまは父さまと兄さまを見てから『行ってくる』とわたしに言って、走っていき、あっという間にいなくなった。


「お遣いさま、どこ行っちゃったの?」


「うん? ええと、運動」


「運動?」


「危険はないと判断して、運動しに行ったの」


 ラエリンたちは目を合わせて、ふうんと頷いた。納得はできていないようだけど。ロレッタにはガーシ、ラエリンにはジン、わたしには兄さま、父さまが統括してみることにして、魔物を仕留めていった。


 突進してきた猪もどきがいたので、風のカーテンで防御を張ったら、そこらへんにいた魔物が全部引っかかったみたい。総力を上げて攻撃してきたので、こちらも総力をあげて向かい撃った。わたしの魔法に触れてしまったので、どんどこドロップする。ラエリンたちはそれに目を輝かせた。

 ドロップすると楽しいよね。


 ダンジョン初めての子を連れて2時間ぐらいで5階まで行けた。

 セーフティースペースがあったのでお昼にすることに。爆弾おにぎりを配ると喜ばれた。あとはポテサラだ。


「もふさまー」


 少し大きい声で呼ぶと、砂埃を立てて、もふさまが戻ってきた。


『どうした?』


「お昼ごはん」


 もふさまは、そうかと尻尾を振った。

 いつのまにか他の班を抜かして、階をあがってきていたようだ。

 後から他の班も到着した。誰も怪我してないね。

 おにぎりとポテサラを配っていく。

 わたしの収納ポケットには常に半年分近くは暮らしていけるだろう食料が入っている。もふもふ軍団の分もいつも作って、収納しているので、かなりな量がある。

 父さまがフォンタナ家の監督役のリーダーに子供たちの様子を聞いた。みんな申し分のない動きをしているみたいだ。


 ラエリンたちの実力はわかったので、男の子たちの力がどれくらいなのか、見ておきたいなと思った。魔法戦は男女混合みたいなのでね。


 このダンジョンは脱出口があるタイプのものらしい。だから帰りの余力は考慮しなくてもいいので、このまま5階で魔物を倒すか、6階に挑戦するかをリーダー同士で相談している。


 子供たちで集まって、手応えを聞いた。

 戸惑いももちろんあったみたいだけど、みんなここにくるまでに自信を持ったように見える。

 そのみんながみんな、一方向を見た。

 セーフティースペース内にいるにかかわらず。

 力ある人たちは、みんな武器に手が伸びている。

 もふさまも大きくなった。


『なんだ、あれは?』


 もふさまが低い唸り声をあげた。

 そんな不審そうな声は初めて聞いた。


「もふさま?」


『来るぞ、備えろ!』


「来る! 備えて!」


 土埃が舞って、ドドドッと地響き?

 大きな魔物、小さい魔物が走ってくる。

 でもここはセーフティー……突破した!

〝怒りで我を忘れてる〟そんな言葉が浮かぶ。

 ルビーより赤い目に見える。マモメットもいた。1階で倒したマモメットは目は黒かった。

 風の防御膜を展開する。リーダーたちが走り出した。


「子供たちは下がれ、非常事態だ!」


 兄さま、アラ兄、ロビ兄、ビクトンが即座に動いた。


「リディーは、お遣いさま、エンター、イシュメルと。アランはケラ、オスカーと。ロビンはリキ、スコットと。ビクトンはレズリー、ニコラスと。私はラエリンとロレッタ。戦おうとはするな。お互いに身を守り合う。いいな?」


「はい」


 ジャンプしてきたうさぎのような魔物を、もふさまは尻尾で叩き落とした。

 前線では大きな魔物にみんなが剣を打ち立てている。


「これが、溢れか?」


 オスカーが茫然としたように言った。

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