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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
19章 レベルアップと北の聖域

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1182/1188

第1182話 神学①神力を高める方法

 1年生へのフォローも先生たちが考えるとのことなので、わたしたちは教室に戻った。みんなにも説明して、なんだか重たい気持ちが残った。

 次の日、解雇にならなかったと聞いて、わたしは少しだけホッとしてしまった。

 ルン髭に続き、あの先生まで解雇されたら、なんか関わりがあっただけに、ちょっと嫌だなと思ってしまったのだ。

 1年生のことが気がかりだったので休み時間に行ってみたら、先生が謝って、普段通りになったってことだ。副担任もついたそうだ。ちょっと特別っぽくて1年生は喜んでいる。副担は先生の見張りっぽいけど、1年生たちが明るかったので、わたしたちはホッとした。


 わたしたちはそのまま講堂へと移動する。 

 講堂はいつも少しだけひんやりしている。

 そこまでの寒さではないのに、思わず手を擦り合わせてしまう。

 神学はいつも教室で授業を受けてきた。今日は少し違ったことをするらしい。

 これまでの神学では神学の成り立ち、それから神の声が聞こえた人の話、つまり本来の神官の役割などを習った。

 チャイムが鳴り、講堂に入ってきたのはルシオだった。

 卒業していった生徒会メンバーを覚えている子もいるし、いつもの先生とは違うからみんなルシオを目で追う。


 ルシオはわたしたちの前にくると「こんにちは」といった。


「本日、神学を担当する神の使徒、カミロと申します。よろしくお願いします」


 今日の先生はルシオみたいだ。わたしたちは少し遅れて「よろしくお願いします」と口にした。

 ルシオはにっこりと笑う。


「今まで神学とは何かということを習ってきたと思います。これからより深く神との対話について学ぶ前に、皆さんには〝神〟とはいったい何なのか理解を深めていただきたく、本日の授業をいたします」


 神とはいったいなんなのか。気になりながらも、どう表すんだろうと興味をそそられる。

 ルシオはみんなに円になるように言った。


「今から皆さんに神の力を感じていただこうと思います」


 神の力を感じる?


「やっていただくのは私たち神官の修行にも組み込まれているものです。

 神官として神の声が聞こえるように日々〝神力〟を高めています。それを皆さまにもやってもらおうと思います」


 ジョセフィンが手を挙げた。


「どうぞ」


「神官以外にも神力ってあるんですか?」


「神力について……いえ、神力だけでなく、魔を使う魔力、聖なる力を司る聖力、現時点でこういうものという定義はしていますが、実はわかっていないことの方が多いのが現状です」


 少しざわざわする。


「神力があるからといって神官になるわけでもありません。神官になる条件は神からの無条件の愛を信じ、身を任せる覚悟があるかどうかを問うだけです」


 え、そうなの?


「神官になった時点では神力があるかどうかは、他の誰かは知りません。神属性のスキルやギフトを持っていたら、多少の神力があるとわかっていると思いますが」


 ルシオはジョセフィンに笑いかける。


「そんなふうに誰が神力を持っているかわからないものですし、神官以外にも神力を持っている方はいるでしょう。

 ではなぜそんな神力を高めることをやってみるのか。

 それは神力がない人も神力を感じられることだからと言われてもいるし。

 私は実際、神力を高めているのではないけれど、何かを高めていることだと思っています。多くの人が何かが高まるのを感じることなので、よくわからないことではありますけれど、皆さんにも感じて欲しいと思います」


 神力や聖力の数値はステータスボードには現れない。それがわたしだけなのかどうかはわからないけど。

 わたしには神力はほぼほぼないんじゃないかと思っている。


「こればかりはやってみるのが一番わかりやすいと思います。神は楽しいことが好きです。だから歌や踊りが好きなんです」


 なんか嫌な予感。


「円になってもらいました。はい、みんな左を向いて。そう、そのまま一歩進んでください。はい、そうです。そのまま歩いてみましょう」


 わたしは隣だったジョセフィンの背中を見ながら歩く。


「ではステップ1。ツーステップで歩いてみましょう」


 え。

 ルシオは1、2。1、2と音頭を取る。


「はい、そのまま進んで。皆さん、上手ですよ。ではそれに手の動作をつけてみましょう。ツーステップに合わせて手は右右、左、左左、右と動かします」


 ルシオは胸の前に両手のひらを外に向け、小刻みな動きを加えた。

 えー。


「1、2、1、2」


 ルシオはリズムをとりながら見回して、わたしを見て視線が動かなくなる。


「難しかったかな? ごめんね、今の手の動き忘れて欲しい。ツーステップのままで1、2の2の時に前に出している足と同じ側の手を挙げる、はどうかな? できるかな?」


 あ、よかった、これはできた。

 ルシオもほっとしてる。


「ではステップ2。2歩歩いてジャンプ。1歩歩いて1歩下がる」


 ルシオは手拍子をする。

 1、2、ジャンプして一歩前、一歩下がる。


「はい、いいよ。また普通に歩いて」


 ステップいくつまであるんだろう……。

 ステップ3の動作をやってみたところで、休憩が入った。

 ゼーゼーしてるわたしに気づいたんだと思う。

 ルシオが座りこんだわたしの前にやってくる。


「だ、大丈夫? 保健室に行く?」


「少し休めば平気。ごめん、難易度下げてくれたんでしょう、ルシオ先生?」


「いいや、生徒に合わせるのが臨時でも教員のあるべき姿、だからね」


 その後、またステップを覚えて、合計5つのステップを覚えた。

 ルシオはその後に古代語で「祝詞」と呼ぶものを朗々と読み上げた。

 通る声は耳に心地いい。

 古代語だからか同時意訳が頭に入ってくる。

 この世界を作ってくれた神さまに感謝しています。を繰り返し大袈裟に言っている感じ。それでこの祝詞を口にしながらさっきのステップを踏んでいくとか。

 祝詞自体は短いけど、古代語って発音がちょっと難しい。動きながらやったら舌を噛みそうなんだけど。


 本来のこの神力をあげる練習では、指揮官が言ったステップをいきなりやりながら祝詞はずっと口にしているっていうものらしい。

 それは難しいだろうから、ステップを1から順に流して行きますと言った。主にわたしのためって気がする。

 しんどくはあったけど、ステップを踏みながら無心に古代語を唱えていると、なんだか神経が研ぎ澄まされていくのを感じた。

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― 新着の感想 ―
生徒に被害とか先生の矜持を信じていたとか不穏だったので心配してたけど丸く収まって良かった。野外実習での先生たちの話だったらどうしようだけど(笑) ということは覚悟さえあれば神力が極小でも神官にはなれ…
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