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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
19章 レベルアップと北の聖域

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第1174話 ミネルバ滞在⑦火の手

「どいてください」


 兄さまが言って、扉に向かって走る。

 手にしているのは剣?

 あ、それが家宝の剣? シルバーに光る細身の剣。

 わたしは見るのが初めてだ。

 青紫の宝石のようなものが鍔のところについていて、目を引かれる。

 気合いの声と共に、兄さまが扉に切り込んだ。


 すごい!

 扉が破壊された。

 もふさまでも壊せなかった扉を……。

 アダムが瓦礫を魔法でどかす。

 アダムとダニエル、兄さま、そしてお城にいたおじいちゃんたちが走り、扉の近くにいた人たちを中に入って引きずり出した。

 わたしは外にいるように言われ、ケホケホと咳をする人たちに飲み水を配った。


 水が貴重なここでは、大量の砂を落として火を消すそうだ。

 といっても人自体が少ないことから、今は焼却場は使っていなかったそう。

 人質を入れるためにその砂をどこかにやられてしまったようで、火が消せないと悩んでいる。

 焼却場を囲う岩より外に火は出ないということだけど……。

 板やら何かを使って人質となっていた人たちが、焼却場の中の火を躍起になり消し終えた。


 ほっとした。一気に脱力する。

 それぞれに心の整理をつけ、体を起こす。

 ダニエルとアダムの情報交換。

 アネリストを装った兄さまを捕まえてきた人たちは、みんな気絶させしばってきたということだ。

 ダニエルはおじいちゃんたちと焼却場に来た。パチパチと爆ぜるような音がして煙も上がっている。中からは壁をドンドン叩いている。扉を開けてと叫んでいる。ダニエルはおじいちゃんたちと扉を開けようとしたり、魔法を使って扉を破壊させようとしたけれど、びくともしなかった。


 ん?

 火は消えたはず。

 なのになんでパチパチ聞こえるんだ?と思ったら、城の向こう側で火が上がっている!

 家が燃えてるってこと!?

 わたしたちは走った。

 人はいなさそうだけど……、自分の家が燃えているのを見た人は、もう座り込んでどうしていいかわからなくなっている。


 暗闇の中、炎が家のあちこちからあがって猛威をふるう。その火の粉は飛び散り、近隣の家にも侵食しようとしていた。


「水魔法で間に合うか」


 とアダムが手を出した時、わたしは思い出した。


「待って、先にわたしがやる」


「水魔法?」


「うーうん、第五大陸のアレ」


 そう。精霊ちゃんからの祝福、溺れそうになった水よ。一室がいっぱいになるぐらいの水の量だったから、それで消せるかわからないけど。それを使い終えてから水魔法でいいよね。何が起こるかわからない、魔力はなるべく取っておいた方がいい。

 わたしは収納ポケットから、精霊の水をぶちまけようと……。


 バケツをひっくり返したような雨ってフレーズを聞いたことがある。

 けれど、それ以上だ。しかもそのバケツはきっと一軒の家より大きい。

 なんの冗談かと思うぐらいの大量の水が、燃えていた家の上からバシャッと落ちてきて、一瞬で鎮火した。

 しかも、収納ポケットのリストにまだ精霊の水、あるんですけど。


 みんなで呆然とし、火の手の上がった他の家にも……今度はもしかしてと思って、一雫呼び出してかけてみたら、同じように上からのバケツの水を落としたように水が落ちてきて鎮火した。これ、何倍にもなる不思議水。さすが精霊の水だ。


 街の中央にあるオアシス、きた時は水が張っていたのに、今は水たまりのようになっている。あの人たちの仕業だね。多分、水を抜いたんだ。助かった人たちが火を消せないように。なんて悪どい。


 それにここは砂漠。水は貴重。その水に悪さをするなんて。

 みんな煤を被っているし、水が必要なはず。

 と思って精霊の水を一雫落としたら、あっという間に湖のように満ち足りた。

 住人の驚いた声が上がる。

 何年も干からびていた井戸からも、水が湧いて出ている、と。

 おーーー、精霊の水、すごい。


 と、ファンタジックなことが起こった。地面が光り出したのだ。

 中に小人の入ったシャボン玉のような玉が、いくつもいくつも湧いて出てきた。

 シャボンの中の小人は水の精霊と似てる。こっちは帽子を被った男の子バージョンだけど。

 と、アダムと話していた立派な装束の人が、いくつものシャボン玉に向かって地に膝をつき、両手つきで何度もお辞儀をした。


「地の精霊さまー」


 と言っている。それを聞いた人々がみんな地に膝と額をつけるようにして、シャボン玉にひれ伏した。

 ついていけないのは、使節団のわたしたちだけ。


 地の精霊が発現したってこと? こんなにいっぱい?

 そのうちのひとつがふよふよとわたしの目の前へと漂ってきた。


『あなたから姉の気配がする』


 心の中に声が届く。

 もふさまや高位の魔物たちとはまた違う、心に届く声。


「わたしから?」


 わたしが聞き返すと、みんながわたしを見た。


『水の精の姉の気配が』


 あ。


「第五大陸に、水の精霊さまが発現されました」


 このシャボン玉のお姉さんかどうかはわからないけど。


『私たち精霊はみんなでひとりなのです。だから水の精霊は全て姉です』


 心の中で思うこともわかるみたい。

 ということはあなたも精霊ですね? 一応確かめる。


『はい、私たちは地の精霊です』


 おーーー、地の精霊きたーー。


『第五大陸……人族のいう五番目の大陸ですね。そうですか』


 そしてポチャンとオアシスの水に浸かり、またふよふよと飛んできた。


『捕らえられていた姉を、あなたが助けてくれた』


 え?


『我らは地深くで眠っていました。時が経っていたのですね』


 地の精霊はお姉さんの気配で目が覚めたという。

 わたしはなんであなたの言ってることがわかるのかと疑問に思ったら、わたしが水の祝福を受けたからだろうと言われた。


 けど、わたし水の精霊ちゃんの言葉は人族の格好ではわからなかったし、水の祝福を受けたというなら兄さまたちみんなもだけど、話せているのはわたしだけ。

 わたしは不思議に思うけど、地の精霊からすると不思議なことではないらしい。


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えっ家宝の剣借りパク?!バイエルンに返してないの? 持ったままランディラカ行って良いんだ… やっぱ向こうは堕神パワーを乱発出来るのにこっちはウワバミスキルと剣一本でしか対処できない現状イカンね。対処…
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