86/105
86 願い叶う2
その男はとても信心深かかった。
常々、妻に言う。
「オレより先に死んではならんぞ。オマエが死んでしまったら、オレは生きていけんからな」
ある日。
愛する妻が病に倒れてしまった。
男の懸命な介抱もむなしく、妻の容体はひどくなるばかりである。
「神様、お願いです。オレより先に妻を逝かせないでください」
男は神に祈った。
すると……。
男の前に神が現れる。
「その願い、かならずや叶い届けてやろう」
「ありがたいことで」
「オマエは信心深く、しかも妻思いの慈悲深い男であるゆえ、見捨ててはおけぬのよ」
神はこう言って消えた。
と、すぐに。
男の胸にいいしれぬ強い痛みが走った。
男はそのまま帰らぬ人となった。
虫の息の妻を残して……。




