79/105
79 火の玉
雨のそぼ降る夜でした。
長屋の差配の長兵衛さんと、そこに住む与太郎が墓場のそばを通りかかったときでした。
与太郎が墓場を見て指さしました。
「長兵衛さん、あれを見てください!」
「おう、火の玉じゃねえか」
そこには火の玉が二つ、ふわふわと寄り添うように浮遊していたのでした。
火の玉が人の姿に変わっていきます。
それは若い男と女でした。
「おりんさんだ!」
「もう一人はお侍だな」
「二人は恋仲だったと聞いておりましたが」
「それが叶わぬ恋でな。つい三日ほど前、二人は心中しちまったんだよ」
「じゃあ、死んでこうして。ところで長兵衛さん、あの二人、ずいぶんアツアツですね」
「そりゃそうだ、元は火の玉だからな」




