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69 河童の夫婦
その昔。
木こりの男が山道を下っていると、そこへ二匹の河童が連れ添ってやってきました。
――悪さでもされたら……。
男は警戒しました。
河童は水辺に住むとしたもので、このような山中で出合うのは珍しいことでした。
男は河童に向かって、とっさにおじぎをしました。
河童がおじぎを返すと、皿の水がこぼれて妖力を失うことを知っていたのです。
二匹の河童はおじぎを返してきました。
――うん?
傾いた皿から水がこぼれません。
男がよく見ると、頭の皿には初めから水は入ってなかったようです。
男は不思議に思って問いました。
「おまえたち、皿の水がなくて大丈夫なのか?」
「ご心配なく。今はこうして、夫婦水いらずで暮らしておりますので」




