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56 女幽霊
ある深夜のこと。
そのタクシー運転手は、墓地の近くで一人の若い女性を乗せました。
このとき運転手は、
――まさか幽霊では?
背筋に冷たいものを感じました。
今日は雨が降っていません。
なのに女の髪、そして着ている服がびしょ濡れだったのです。
運転手の驚いている表情に気がついたのか、
「もしかして、幽霊ってわかりました?」
女が後部座席から聞いてきました。
「はい、まあ。幽霊を乗せると、シートが濡れると聞いたことがありますので」
「すみません、この服は乾くことがないので……」
女はそれから身の上話を続けました。
自分は元恋人の殺人の罪をきせられ、それがつらくて川に飛び込んで自殺したのだと……。
「濡れ衣だったんです」




