表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/388

第76話 読み

(うーん。「バント」で「待球」って、あの高速スライダーや高速縦スライダーの球筋を覚えろってことだよね。今日はカノンが絶対に塁へ出るとも限らないし、僕も球筋を見たいけど……。バントの構えをすれば高速スライダーや高速縦スライダーが来るとは思えないなぁ)


初球からバントの構えをする本城に対して、友理は怪しみながらも通常の投げ方で大きな変化のスライダーを投げる。本城がバットを引いたことで、判定はボールとなった。


「そうか。カノンはストレートの方が厄介やと言うとるのか」

「あのフォームでは、ストレートを投げないという制限の方がおかしいですからね。おそらく、ストレートは肘の負担が大きいのだと思います」


ランナーコーチに奏音が入ったため、伊藤が先程の奏音の言葉を御影監督に伝える。すると春谷が、特定のフォームで高速スライダーしか投げていなかったことの方がおかしいと言った。


「……私はまだまだ野球の知識が足りて無いから聞きたいのだけど、2種類の投球フォームで投げ分けているのは異常なの?」

「異常ですよ。あれが標準になる時代なんて、来てほしくないですね」


伊藤の疑問に、矢城コーチが答える。2種類の投球フォームを、意図的に投げ分ける投手は普通ではない。片方のフォームしか投げられない変化球があった場合、狙い球を絞りやすいからだ。今回のように強弱が分かれる場合、弱い方のフォームは格好の的になる。


しかしそれでも湘東学園の打線を抑えていることは、友理の規格外さを表している。4種類のスライダーにチェンジアップ、ノビが増したストレートなど選択肢が多いため、対応が難しい。


3球、伊東の球筋をよく見た本城はカウント1-2からの4球目、変化量の小さな変化球を打ちに行ってファールにする。スイングが鋭く、元々危険なバッターだと判断している統光学園のバッテリーは、ここで高速スライダーを投げて打ち取ることにした。


(「打て」と「盗塁」って……振り逃げのサインを出すってどういうことなの!?)


5球目、御影監督からのサインを受け取った本城は、空振りをした後にすぐ1塁へ向けてダッシュを始めた。幸いなことに統光学園のキャッチャーは高速スライダーを弾いており、1塁にはギリギリ間に合う。ノーアウトのランナーが出て、打席には5番の江渕を迎えた。


「ふ、振り逃げがサインで決まった……」

「野球妖怪……」

「じゃかましいわ。カノンとの勝負でも、1球目のアレは捕れとらん。今日の伊東は高速スライダーに随分とキレがあるようじゃし、配球読んでサインを出したに過ぎん」


鳥本姉妹は本城への決め球が高速スライダーだということ、その高速スライダーのキレがいつもより鋭いことを見抜いたこと、キャッチャーが読み通り捕れず、振り逃げが成功したことで、ちょっとした畏怖を御影監督に抱く。


5番の江渕はアウトコース低めの打率が非常に良い。しかし、まだそのことは知れ渡っていなかった。変化球に弱い、どちらかと言えばアウトコースの球が得意な長距離砲。その印象が、統光学園でも強かった。


初球、伊東は外角のボール球となるように変化の大きなスライダーを投げる。その球を見送った江渕は、これなら届きそうだと確信した。


(これなら打てる!)

(顔に出過ぎだよ、初心者凸凹コンビ。チーム一丸で、スライダー打ちの特訓でもしたのかな?)


2球目、サインに首を振った友理はそのままノーサインでチェンジアップを内角へ投げる。統光学園のバッテリーは投手の友理が1年生で捕手の古谷(ふるや)が2年生だが、力関係は友理の方が上だった。


だからこうして、ノーサインで投げる時も存在する。ノーサインの時はスライダーを使わないと決めているので、古谷はある程度投げられる球が分かる。そのため、後逸はしない。


チェンジアップを振らされた江渕は3球目、内角のストレートに詰まりサードへのゴロとなる。本城のスタートが良かったために、進塁打にはなった。




「申し訳ありません、スライダー狙いがばれました」

「ユーリは、勘の良い投手だからね。それにしても、本城さんが早めにスタートを切ってて助かったよ」


1塁ランナーコーチをしていると、滑り込んだ智賀ちゃんがアウトのコールを聞いて申し訳なさそうに謝ってきた。進塁打になったから智賀ちゃんはよく頑張ったよと言ったところで、久美ちゃんが左バッターボックスに立つ。スイッチヒッターは、こういう時に便利だ。


友理さんの球筋をより近くで見るために1塁ランナーコーチとして入っているけど、久美ちゃんに対しては高速スライダーを投げるかな?


右投手のスライダーは左打者にとって、当てやすい部類の変化球になる。内野の間を抜ければ、本城さんの足なら帰って来れる。そう思っていたら初球、友理さんはあの投げ方でストレートを投げて来た。


それに久美ちゃんは空振りする。随分と、ボールの下をバットが潜った。タイミング自体も遅れ気味だし、当たっていてもファールだったかな。


ワンナウトランナー2塁のピンチで、統光学園には過大評価されているだろう久美ちゃんの打席だ。この久美ちゃんの打席で、高速縦スライダーやストレートのタイミングを見極めてしまおう。私は精一杯の声援を久美ちゃんに送って、友理さんの投球をじっくりと観察した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓にランキングタグを設置しました。ポチっと押して下さると作者が喜びます。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ